アスピリン喘息とアナフィラキシーの鑑別方法とは?

皆さんは、アナフィラキシーという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

蜂に2回刺されると、アナフィラキシー症状が表れることがあるというのは有名な話ですよね。2回目に刺されると、1回目に刺されたときにできた抗体が過敏に反応してしまうため、アナフィラキシーと呼ばれる急激なアレルギー症状が表れてしまうのです。

そして、アナフィラキシーは蜂の毒だけではなく、その他色々な抗原に対して起こりうる反応であり、その中に解熱鎮痛剤などの薬も含まれています。

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そして、その解熱鎮痛剤の服用によって起こり、アナフィラキシーにとても似た症状として、アスピリン喘息と呼ばれる症状もあります。これは、気管支喘息の患者の一部に見られるものであり、解熱鎮痛剤の服用によって急激に喘息症状が悪化してしまう疾患です。

これら2つの症状は、そのメカニズムは異なるのですが、実は類似点もあります。では、いったいどのようにしてこれら2つの症状を鑑別したらよいのでしょうか?

そこで今回の記事では、「アスピリン喘息」と「アナフィラキシー」の鑑別方法についてご説明していきたいと思います(^^)

目次

 アナフィキラシーとは?

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蜂に2回刺されると、アナフィラキシーショックが引き起こされる場合があるという話を聞いたことはありませんか?アナフィラキシーとは、免疫が過剰に反応することで、急激なアレルギー症状が引き起こされる疾患です。

アナフィラキシーの語源は、1902年に行われたある実験が関係しています。この年にフランス人の生理学者のRichetは、イソギンチャクから毒素を取り出し、それを犬に注射することによって、免疫の変化を観察する実験を行いました。その後時間をおき、再び注射をしたところ、犬が急激なアレルギー症状をおこして死亡してしまったことから、この症状を、防御prophylaxisに対して無防御という意味をこめて、anaphylaxie(アナフィラキシー)と命名しました。

アナフィラキシーは様々なアレルゲン物質によって引き起こされるの可能性がありますが、時には非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)、つまり、ロキソニンやバファリンなどの解熱鎮痛剤によってアナフィラキシーが引き起こされる場合があります。では、そのアナフィラキシー症状はいったいどのようにして引き起こされてしまうのか、詳しく説明いたします。

まず、人の体内にアレルギーの原因物質が侵入した際、人によってはそのアレルゲンに対するigeと呼ばれる抗体が体内で作られてしまいます。そして、このige抗体はその後、肥満細胞や、血液中の好塩基球表面のige受容体などに結合します。

その後、これらの抗体を持った人の体内に再び抗原が侵入すると、ige抗体はその抗原と結合し、さらにその信号を肥満細胞や好塩基球に伝えます。すると、そこからヒスタミンロイコトリエンといった化学物質が分泌され、それをきっかけに体は何とかそういった抗原を体から排除しようとして、粘液を分泌しだしたり、気管支を収縮させたりするのです。これが、一般的なアレルギー反応のメカニズムになります。

そして、アナフィラキシーの場合はそういった一連の作用が急激におこり、僅かなアレルゲンに対しても過敏に反応が行われることで引き起こされ、アレルギーの症状が多臓器や全身に表れます。また、多量のロイコトリエンやヒスタミンが放出されることで、意識障害や、血圧低下を招き、ショック状態に陥ってしまう場合があるのです。

アスピリン喘息とは?

一方、アスピリン喘息とは、成人した喘息患者のうち、約10%程度が症状を患っていると言われている疾患です。

この疾患を患う方は、解熱鎮痛剤を服用すると、鼻水、鼻づまりなどの鼻炎の症状や、気管支が収縮することによる発作などを引き起こしてしまいます。これらの症状は、薬の服用から早くて30分以内に表れると言われており、症状自体は、長い場合は1日近く続くとも言われています。

このアスピリン喘息の症状はとても重症化しやすいといわれているため、症状が出た場合は適切な対応をとらなければなりません。放置すると呼吸困難や意識障害などに陥る可能性もあり、最悪の場合は命を落としてしまう可能性もあります。

ちなみに、この病気の名前に含まれている「アスピリン」とは、アセチルサリチル酸という成分を主成分とする解熱鎮痛剤のことを言います。数ある解熱鎮痛剤の中でも非常に歴史が古いものなのですが、実際は、アスピリン以外のほとんどの解熱鎮痛剤がそのアスピリン喘息の症状を誘発する原因になってしまいます。そのため、このアスピリン喘息の患者は、ほとんどの解熱鎮痛剤の使用が禁忌とされているんです。

しかし、中にはそのアスピリン喘息の患者でも比較的安全に使える可能性がある薬もあり、カロナール、エモルファゾンといったお薬は、この疾患の患者でも使用が可能であると言われています。しかし、カロナールの方は、多量に摂取するとやはり症状が出てしまう可能性があるので、一回の服用は300mgまでが望ましいと言われています。

ちなみに、そのアスピリン喘息の患者でも使える可能性があるお薬に関する情報は以下の記事でまとめていますので、よろしかったらご覧になってみてください。

アスピリン喘息の患者でも使える可能性のある鎮痛剤とは?

では、どうしてそのように使えるものと使えないものがあるのかというと、実は、使えないものは全て同じメカニズムで解熱鎮痛作用を示すからなんです。解熱鎮痛剤には色々な種類のものがありますが、それらは有効成分こそ違えど、それが効果を発揮するメカニズムはみんなほとんど同じなんです。

では、そのメカニズムとはいったい何なのか。以下で詳しく説明したいと思います。

まず、解熱鎮痛剤を服用する際、私たちは頭痛などの痛みが体のどこかで生じていますよね。これは、プロスタグランジンと呼ばれる成分が血管を拡張させ、周りを圧迫し、痛みの原因となる炎症が生じているからなんです。

そこで、解熱鎮痛剤の多くは、このプロスタグランジンの合成を阻害することで、炎症、及び痛みを鎮める働きをしてくれます。

もう少し具的的に説明いたしますと、先ほど述べたプロスタグランジンは、私たちの体内で、アラキドン酸と呼ばれる成分から合成されるのですが、この際、シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素が、この合成を促す働きをします。

そして、解熱鎮痛剤に含まれる成分の多くは、このシクロオキシゲナーゼの働きを阻害することによって、結果アラキドン酸からプロスタグランジンの合成を抑え、鎮痛作用を示すのです。

しかし、普通であれば解熱鎮痛剤の作用はここで終わるはずなのですが、今回お話しているアスピリン喘息の患者においては、そのアラキドン酸→プロスタグランジンへの経路を阻害してしまうと、今度は余ったアラキドン酸からロイコトリエンを大量に合成してしまうものと考えられています。

ここで、このロイコトリエンという言葉に見覚えはありませんでしょうか?このロイコトリエンはアレルギー反応の際も体内に放出される化学物質であり、気管支の収縮などを招いてしまうのです。つまり、このアスピリン喘息という疾患は、アレルギー反応とは異なるメカニズムによって、結果急激なアレルギー様の症状が引き起こされてしまうという疾患なのです。

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アスピリン喘息とアナフィラキシーの鑑別方法とは?

「アスピリン喘息」と「アナフィラキシー」は症状自体は非常に似ている部分もありますが、前者は免疫反応ではないため、アナフィラキシーとは根本的にその原因が異なります。

また、アスピリン喘息では、シクロオキシゲナーゼ阻害を示すNSAIDsは殆どのもので症状が表れる可能性がありますが、アナフィラキシーの場合は特定のNSAIDsで起こっている場合があるので、この2つの症状を鑑別することは非常に重要です。

しかし、アスピリン喘息とアナフィラキシーでは、どちらもロイコトリエンなどの化学物質によって呼吸器に影響が出るという点では症状が類似しており、この点から鑑別するのは難しいです。では、どのようにこの2つを鑑別したら良いのかご説明致します。

まず、アスピリン喘息のように、シクロオキシゲナーゼの阻害によって起こる疾患には、喘息型の他に、蕁麻疹型があります。しかし、この2つが合併して起こることは稀であるといわれているんです。

一方、アナフィラキシーの場合は、蕁麻疹などの皮膚への症状、血圧の低下、嘔吐などの消化器への影響が出やすく、呼吸器にも影響が表れます。

つまり、喘息、もしくは蕁麻疹が別に表れた場合はシクロオキシゲナーゼ阻害の影響が強く、皮膚や呼吸器など全身への激しいアレルギー症状がでた場合はアナフィラキシーの疑いが強いと思われます。

また、シクロオキシゲナーゼ阻害による症状、つまりアスピリン喘息の症状は子供では稀であると言われているため、こういったことも2つを鑑別する上で重要と思われます。

まとめ

今回の記事では。アスピリン喘息とアナフィラキシー症状の鑑別方法等についてご説明いたしました。

2つとも似たような症状が表れますが、そのメカニズムは異なり、詳しい原因も異なる場合があるため、この2つの症状について鑑別することはとても重要です。

最終的に判断するのは医師ですが、こういったことを患者側が知っていると、どうして症状が表れたのか、また、どういった疑いがあるか医師に相談できることで、医師も素早い対応が取れます。是非、この機会にそういう症状があるということを覚えておいてください。

今回の記事が皆さんがこういった症状を知るきっかけになればと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)

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