
皆さんはアレルギーの症状をお持ちでしょうか?私は小さいころから花粉症の症状がひどく、特に3月はお薬がないと鼻水が止まらなくなってしまいます。
花粉症に代表されるアレルギー反応は以前から喘息の症状を悪化させる原因になることが知られていますが、皆さんの中にもそういったアレルギー反応によって喘息がひどくなってしまったことがあるという方もいるかもしれませんね。アレルギー反応が起きると、体内に粘液の分泌や気道収縮を促す伝達物質が放出されることによって、これが喘息症状の悪化につながってしまうのです。
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一方そういったアレルギー反応に似た症状として、近年では、アスピリン喘息という症状が段々と知られるようになってきています。このアスピリン喘息とは、ロキソニンやバファリンなど、頭痛薬としても有名な解熱鎮痛剤を服用することによって喘息症状が悪化してしまうもののことを言い、特に大人の喘息患者に多い症状として知られています。
解熱鎮痛剤を服用した後に症状が表れると聞くと、これは一種のアレルギー反応のように聞こえますが、実はそのメカニズムはアレルギー反応とは異なります。そこで今回の記事では、アレルギー反応によって喘息が悪化してしまうメカニズムと、アスピリン喘息のメカニズムの違いについて詳しく説明していきたいと思います。
目次
アレルギー反応のメカニズムとは?

それではまずはじめに、アレルギー反応はどのようにして起きるのかということについて詳しく説明していきたいと思います。
まず、アレルギーの原因としては花粉やダニなどが有名ですが、人によってそれがアレルギーの原因になる人とそうでない人がいるのは、その人その人の体によってそれをどう判断するかが変わってくるためです。
具体的には、そういった物質が体内に侵入してきた際に、体がそれを異物と判断してしまうと、体はそういった物質に特異的に結合して排除するためのige抗体と呼ばれる抗体を生成し始めます。
このige抗体は、その後肥満細胞という細胞の表面に付着をして、次にそのアレルギーの原因物質が体内に侵入してくるのを待ち構えています。そして、実際にそういった物質が体内に侵入してくると、肥満細胞の表面に付着した抗体がその物質と結合し、その情報を肥満細胞へと伝えます。
すると、その肥満細胞の内部から、ヒスタミンやロイコトリエンといった化学物資が放出され、これがアレルギー反応の諸症状を引き起こす原因になるということが知られています。目のかゆみや喉のかゆみ、鼻がムズムズしたりするのも、そういった肥満細胞から放出される化学物質がその原因なのです。
なので、現在花粉症の症状があり、お薬をもらっているという方も、そのお薬の詳細を調べてみると、おそらく抗ヒスタミン作用などを示すものであると思います。
ちなみに、このアレルギー反応の一連の流れを表したものが以下の図になります。

花粉症などのアレルギー反応は、その人の体質による問題なので、これを根本から治療するというのはなかなか難しいのが現状です。ただ、現在では舌下免疫療法や手術療法によって、アレルギーの症状をある程度抑えることも可能になってきているようです。これについては以下の記事で詳しくまとめていますので、もしよろしければ一度ご覧になってみてください。
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アスピリン喘息とは?アレルギーとの違いがこちら…

それでは次に、アレルギー反応によく似た症状である、アスピリン喘息について解説していきたいと思います。
このアスピリン喘息とは、大人の喘息患者の約10%程度が患っていると考えられているものであり、解熱鎮痛剤を服用することによって、喘息症状が悪化してしまうようなもののことを言います。
具体的には、そういったロキソニンなどの解熱鎮痛剤を服用すると、その服用から約1時間以内に、発作の症状や、鼻水、鼻づまりの症状が表れてしまうというのがその大きな特徴として挙げられるそうです。また、それ以外では腹痛の症状などが起きることもあると言います。
また、そういった症状は薬の有効成分が体内から完全に排出されるまで続き、長い場合だと1日以上諸症状が続くとも言われています。
ちなみに、この症状の名称の由来にもなってる「アスピリン」とは、アセチルサリチル酸という成分を主成分とする解熱鎮痛剤のことであり、これは解熱鎮痛剤の中でも非常に歴史が古いものの1つです。ただ、このアスピリン喘息の症状自体はアスピリン以外のほとんどの解熱鎮痛剤もその原因となるため、この症状がある方はほとんどの解熱鎮痛剤の使用が禁忌とされています。
では、なぜこのアスピリン喘息の症状がある方はそういった解熱鎮痛剤を服用するとアレルギーの様な症状が表れてしまうのかというと、これにはその解熱鎮痛剤が痛みをしずめるための作用メカニズムが大きく関わっています。
まず、人の体内で痛みが生じているとき、その周りではその原因となる炎症が生じています。これは、プロスタグランジンと呼ばれる成分が血管の拡張を促し、それが原因で周囲が圧迫されるためです。
また、このプロスタグランジンと言う成分は、アラキドン酸と呼ばれる成分から合成されることがわかっています。つまり、このアラキドン酸→プロスタグランジンへの反応を阻害することができれば、炎症、及び痛みの症状は抑えることができ、私たちの知る解熱鎮痛剤の多くは、実際にこの経路を阻害することによってその効果を発揮します。
ただ、具体的には、解熱鎮痛剤に含まれる有効成分というのは、そのアラキドン酸→プロスタグランジンという反応を助ける役割を担っている、シクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害することによってその効果を発揮します。この酵素がうまく働けなくなると、プロスタグランジンも生成されなくなってしまうのです。
そして、通常であれば解熱鎮痛剤の作用はここまでのはずなのですが、アスピリン喘息の症状がある方だと、その、アラキドン酸→プロスタグランジンへの反応が阻害されてしまうと、今度はそのアラキドン酸から、ロイコトリエンという成分を大量に合成してしまうのではないかと考えられています。
ここで、このロイコトリエンという成分の名前に見覚えはありませんでしょうか?これは、先に説明したアレルギー反応において肥満細胞から放出される化学物質であり、アレルギーの諸症状を引き起こす原因物質なんです。
つまり、今お話したアスピリン喘息というのは、アレルギー反応とは別の反応によって、結果急激なアレルギーの様な症状を引き起こしてしまうという疾患なのです。
アスピリン喘息とアレルギー性喘息の違いとは?

ここまでの説明から、解熱鎮痛剤の服用によって引き起こされる反応と、アレルギー反応とでは、どちらもロイコトリエンが症状を引き起こしているということが分かりましたね。同じ原因物質によって症状が出ているという点では、この2つの疾患は非常に似ています。
しかし、この2つの症状では1つ決定的な違いがあります。それは、igeが関与しているかどうかです。
アレルギーによる場合は、もともと自分にアレルギー症状があるかどうかわかっている方は多いと思いますし、血液の採取によるige抗体検査や、皮膚テストなどを受けることで、自分が何のアレルゲンによってアレルギー症状が表れてしまうのか詳しくわかります。アレルギーの症状を患う人にとって、自分がどのような抗原によって症状が表れてしまうのか知っておくことは、その後の生活で対策を講じる上でも非常に重要です。
しかし、解熱鎮痛剤の服用によって引き起こされるアスピリン喘息は、同じロイコトリエンによって症状が出てしまうにもかかわらず、上に書いたようなテストでは診断することができません。そのため、実際に薬を飲んで症状が出てしまうかチェックする負荷試験などをしなければ気づくことができないのです。
そもそもまだアスピリン喘息はそれほど一般的に知られているような病気ではありませんし、また、この症状は後天的に発症するといわれているため、患者は、実際に症状がでてみて初めて自分の病気について知るという可能性が高いです。
最初に述べた通り、この疾患の症状は重症化しやすいといわれているため、重症化してから知るというのは非常に危険なことなんです。まさか薬で症状が出るなんて、この疾患について知っていなければ何が起きているのか全く分かりませんよね。
今回の記事をきっかけに、この病気について少しでも多くの方に知っていただき、薬を飲んで異変を感じたら、すぐに医師に診てもらうといった対応がとれるようにしていただけたらと思います。
まとめ

今回の記事では、アレルギー反応のメカニズムについてまとめますとともに、そのアレルギー反応によく似た症状が表れるアスピリン喘息について詳しくまとめました。
ただ、実は今回お話したアスピリン喘息の症状は、着色料や歯磨き粉に含まれる防腐剤など、解熱鎮痛剤以外の物質によってもその症状が誘発される可能性があるということがこれまでに分かってきています。
これにつきましては以下の記事で詳しくまとめますので、もしよろしければ一度ご覧になってみてください。また、その中にもし確かにこそれを摂取すると息苦しさを感じる、というようなものがある場合には、今後解熱鎮痛剤の服用には十分に気を付けてください。
→解熱鎮痛剤以外でアスピリン喘息の症状を誘発する可能性があるものとは…
今回の記事をきっかけにして、少しでも多くの方にアスピリン喘息について知っていただけたらと思います。最期まで読んでいただきありがとうございました。
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