最近の調査によりますと、近年喘息と診断される患者は増えてきています。なんと、現在気管支喘息の患者は日本だけでも400万人以上もいるといわれているのです。
喘息は、特に小児の場合はダニ、カビ、ペットの毛などがアレルゲン物質が原因となって発症するアトピー型であることがほとんどなのですが、大人の喘息患者のうち約10%程度が、非アトピー型に分類されるアスピリン喘息と呼ばれる症状を患っているといわれています。
このアスピリン喘息とは、ロキソニンやバファリンなど、私たちがよく知る解熱鎮痛剤を服用することによって喘息症状が悪化してしまうというもので、その服用から間もなくして、鼻水、鼻づまりの症状や、発作などが誘発されてしまうとされています。
スポンサードリンク
また、この症状は小児の患者にはほとんどみられず、大人の喘息患者の一部でしかほとんどみられないことから、何らかの原因によって後天的に発症する疾患であると考えられています。では、このアスピリン喘息の症状とはいったいどのようにして引き起こされてしまうものなのでしょうか。
また、痛みを鎮めてくれる鎮痛剤というのは、その種類によっていくつかのグループに分類されるのですが、その中の1つに、オピオイド鎮痛薬と呼ばれるものがあります。
そこで今回の記事では、アスピリン喘息とはいったいどのようなものなのかということについて詳しくまとめていきますとともに、そのアスピリン喘息とオピオイド鎮痛薬との関連について書いていきたいと思います。
目次
アスピリン喘息とは?

アスピリン喘息とは、解熱鎮痛剤を服用すると、ほどなくして鼻炎や発作等の症状が誘発されてしまうという疾患です。大人の喘息患者のうち約10%ほどがこの症状を患っていると考えられています。
また、この症状は後天的に発症すると考えられているため、それまでは普通に使えていた薬でも、ある時から突然解熱鎮痛剤によってこうした症状を発症してしまう可能性もあります。特に、大人になってから気管支喘息を発症してしまうと、それをきっかけに解熱鎮痛剤に大して過敏な体質になってしまう方がいるようです。
そもそも、喘息という病気は大人になってから急に発症してしまう場合があり、このような場合は重度の病気や、出産などによって体調が変化してしまうことがその原因として考えられます。
ではアスピリン喘息とはいったいどのようなものなのか、どうして解熱鎮痛剤によって喘息症状の悪化が起きてしまうのか、そのメカニズムについて説明したいと思います。
まず、私たちの体内で痛みが生じているとき、その周りでは痛みの原因になる炎症が生じています。この炎症は、私たちの体内で生成されるプロスタグランジンと呼ばれる成分によって引き起こされています。そして、ロキソニンやバファリンなどの解熱鎮痛剤は、このプロスタグランジンの生成を抑えることで炎症を鎮め、結果痛みを抑えることが出来るのです。
また、このプロスタグランジンという成分は、私たちの体内でアラキドン酸と呼ばれる成分から合成されることが分かっているのですが、この際、シクロオキシゲナーゼという酵素がその反応を助けることもわかっています。そして、解熱鎮痛剤の多くは、この酵素シクロオキシゲナーゼの働きを阻害することによって、結果アラキドン酸からプロスタグランジンへの生成を抑え、抗炎症効果を発揮し、痛みを抑えることが出来るのです。ここまでが解熱鎮痛剤に期待される通常の作用になります。
しかし、アスピリン喘息の患者では、解熱鎮痛剤によってこのアラキドン酸からプロスタグランジンの合成を止めてしまうと、なんかかの原因によって、今度はアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる成分を大量に作り出してしまうと考えられています。
このロイコトリエンとは、アレルギー反応の際肥満細胞から分泌されるアレルギー反応の原因物質としてしられているもので、気管支平滑筋を収縮させ、発作を引き起こす原因となります。
つまり、アスピリン喘息の患者は、解熱鎮痛剤を服用すると、余ったアラキドン酸から大量のロイコトリエンを作り出してしまい、それによって鼻炎や発作などの症状が表れてしまうものと考えられています。しかし、どうしてこのような反応が始まってしまうのか、その詳しい原因は未だにわかっていません。
この、アスピリン喘息では、結果的にアレルギー反応を引き起こすロイコトリエンを作り出していますが、そのメカニズムはアレルギー反応ではないため、非アレルギー型の症状に分類されます。
アレルギー型の症状ではまずダニ、花粉などが体内に侵入すると、特定の人では、以前それらに対して作られた抗体を持っているため、これがそれらのアレルゲン物質に結合します。するとその信号が肥満細胞に伝わり、肥満細胞からロイコトリエンなどのアレルギーの原因物質が分泌されることによって引き起こされるのです。
また、このアスピリン喘息の症状を引き起こす解熱鎮痛剤は、NSAIDsと呼ばれるグループに分類されます。では、同じ鎮痛薬として知られるオピオイド鎮痛薬とはいったいどのようなものなのか、次に詳しく説明していきたいと思います。
スポンサードリンク
オピオイド鎮痛薬とは?

オピオイド鎮痛薬とは非常に強い作用を示す鎮痛薬であり、麻薬性鎮痛薬と呼ばれることもあります。オピオイド鎮痛薬は、手術などによる重度の痛みや、癌や重篤な病気によっておこる痛みの緩和に用いられます。
では、オピオイド鎮痛薬がどのようにして鎮痛作用を示すのかそのメカニズムについて説明したいと思います。
まず、私たちの体で痛みが生じている部分では、痛みを引き起こす発痛物質が放出されています。この発痛物質はその後多くの神経繊維からなる末梢神経を刺激し、痛みを伝えるための信号を発生させます。その後、この信号は神経経路を伝っていくのですが、神経細胞と神経細胞の間では神経伝達物質という化学物質によって伝わります。また、この痛みに関する神経伝達物質を受け取る場所をオピオイド受容体と呼びます。
つまり、イメージとしては、片方の神経細胞が、痛みの情報が含まれたボールを投げ、それをもう片方の神経細胞がオピオイド受容体というグローブで受け取るといった感じです。
そして、外側のオピオイド受容体で痛みの情報を受け取った神経細胞は、その後神経細胞内に電気信号をおくり、この信号によってその神経細胞は新たに神経伝達物質を放出して、次の神経細胞へと情報を伝えるのです。野球の中継プレーのような感じですね。
この信号はその後脊髄を通って脳に達し、脳が信号を受け取って初めて私たちは痛いと感じるのです。
では、オピオイド鎮痛薬はどのようにして痛みを抑えるのかと言いますと、オピオイド鎮痛薬は、神経伝達物質に代わってこのオピオイド受容体と結合することにより、痛みの信号を受け取れなくすることによって鎮痛作用を示します。
このオピオイド鎮痛薬は先ほど述べたとおり、癌による痛みの緩和などに用いられるのですが、WHO(世界保健機関)は、癌疼痛の治療における鎮痛剤の投与にあたり、その度合いによってどのような鎮痛剤を投与すべきか規定しています。
まず、軽度の痛みの場合、非オピオイド鎮痛薬を投与します。非オピオイド鎮痛薬にはNSAIDsやアセトアミノフェン、そして鎮痛補助薬などが含まれます。鎮痛補助薬には、抗うつ薬、抗不整脈薬、ステロイドなどがあります。
そして、軽度から中等度の痛みの場合、弱いオピオイド鎮痛薬を投与します。弱いオピオイド鎮痛薬にはコデイン、トラマドール、少量のオキシコドンが挙げられます。
そして中等度から強度の痛みの場合強いオピオイド鎮痛薬が用いられます。強いオピオイド鎮痛薬にはモルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、メサドンなどが挙げられます。
麻薬性鎮痛薬と呼ばれることもあるオピオイド鎮痛薬は、その呼ばれ方から使用を敬遠されてしまう方もいるかと思いますが、先ほど説明したとおり、その作用機構は非常に理にかなっており、正しく使えば非常に優れた薬であるといえます。
ところで、今回の記事を作成するにあたり、アスピリン喘息とオピオイド鎮痛薬の関係について調べたのですが、アスピリン喘息はシクロオキシゲナーゼ阻害によって引き起こされる症状ですので、この症状とオピオイド鎮痛薬の直接的な関連はないようです。
アスピリン喘息患者はNSAIDsを服用することは禁忌といわれていますが、先ほど非オピオイド鎮痛薬としてNSAIDsとともに挙げたアセトアミノフェンはこの疾患の患者でも比較的安全に服用が出来るといわれています。もしこの症状がある方は、鎮痛剤が必要な場合、医師との相談のうえでアセトアミノフェンの服用を試してみるといいかと思います(^^)
また、アスピリン喘息の患者でも使える可能性がある鎮痛剤に関する情報は、以下の記事で詳しくまとめています。
まとめ

今回の記事では、アスピリン喘息の概要についてまとめますとともに、オピオイド鎮痛薬の詳細や、そのオピオイド鎮痛薬とアスピリン喘息との関連について詳しくまとめました。
結果的に、アスピリン喘息の原因はシクロオキシゲナーゼ阻害によるものであるため、オピオイド鎮痛薬との直接的な関連はないようです。
今回の調査から、鎮痛薬には本当に多くのものがあるんだなと改めて感じました。研究を重ね、より良い鎮痛剤を作成する研究者の方は本当に偉大だと思います。
ただ、今回オピオイド鎮痛薬とアスピリン喘息との関連はないということが分かりましたが、そのアスピリン喘息の症状は、解熱鎮痛剤以外のものによっても引き起こされる可能性があるということが分かってきています。これについては以下の記事で詳しくまとめていますので、皆さん是非一度目を通してみてください。
→解熱鎮痛剤以外でアスピリン喘息の症状を誘発する可能性があるものとは…
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
スポンサードリンク
コメントを残す