普段から頭痛や生理痛を抑えるためにロキソニンなどの鎮痛剤を持ち歩いている方は多いと思いますが、この鎮痛剤を服用すると副作用として発作が起きてしまうことがあるということをご存知でしょうか?
薬局に行けば普通に購入することが出来る鎮痛剤によって発作が起きてしまうことがあるなんて怖いですよね。鎮痛剤は正しく使えば優れた鎮痛作用を発揮してくれる薬ですが、時に思いもしない副作用まで引き起こしてしまうことがあるのです。
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鎮痛剤の服用で発作が起きてしまう例として、今回は鎮痛剤と抗生物質クラビットを併用してしまった場合と、アスピリン喘息というの2つの例についてご紹介していきたいと思います。
どちらも私たちにとって決して無関係な話ではないので、特に鎮痛剤をよく使うという方は知っておくことが大切です。それでは、アスピリン喘息に関する情報や、そもそも抗生物質クラビットとはいったい何なのかということについてまとめていきたいと思います。
目次
抗生物質クラビットとは?

ではまずはじめにクラビットに関する情報からまとめていきたいと思います。
このクラビットとは、第一三共から販売されている抗生物質の一種です。ニューキノロン系という分類の抗生物質に属します。
そして、このニューキノロンとは、2本鎖DNAの両方を切断してねじれを緩和させるDNAトポイソメラーゼⅡ型とよばれるものの一種である、DNAジャイレースの働きを阻害することによって細菌のDNAの複製を防ぎ、増殖を抑え、死滅させる合成抗菌薬の総称です。これだけだと何を言っているのか意味が分からないと思いますので、説明を補足したいと思います。
まずDNAとは私達人間も持っている遺伝子のことですが、このDNAは以下の図のように2本の鎖がねじれた構造になっています。誰もが一度は見たことがあるのではないでしょうか?(^^)

そして、このDNAという遺伝子は各細胞の中に1つだけあるのですが、細菌と呼ばれるものはそもそもただ1つの細胞からできている単細胞生物なので、つまり細菌はこの2本鎖DNAを1つだけ持っている存在ということになります。
沢山の細胞からできている多細胞生物である人間やその他の動物は雄と雌の区別があり、子孫を増やす際は生殖によって雄と雌の遺伝子の情報を半分ずつ子供が受け継ぎますが、単細胞生物である細菌は性の区別がなく、単純に1体が分裂を行うことによって自分と全く同じ存在を作り出します。
そして分裂をするとき、細菌はこのDNAの2本の鎖の各1本ずつに対して、また1本の鎖を複製し、計4本の鎖を作って2匹に分裂します。何となくイメージができたでしょうか?
しかし、このDNAの鎖の複製を行う時というのは、このように2本の鎖がねじれた状態だと上手くいかないため、細菌はいったんこのDNAの鎖を切って、ねじれを解消させる必要があります。
このDNAを切るために働くのが今お話ししたDNAジャイレースと呼ばれるものなのですが、クラビットに代表されるニューキノロン系の抗生物質は、このDNAジャイレースの働きを阻害することによって2本鎖がほどけるのを防ぎ、結果細菌は遺伝子の複製が出来なくなって増殖が出来なくなり、いずれ全滅してしまうのです。クラビットという抗生物質がどのような働きを示すのかわかっていただけましたでしょうか?
しかし、じゃあクラビットなどの抗生物質を服用すると、人間の細胞分裂にまで影響が出てしまうんじゃないか?と思われる方もいるかもしれませんが、人間などの真核生物(細胞の中に核と呼ばれる部屋を持っている生物のこと。真核生物は、細胞の中にある核の中に遺伝子を持っているが、細菌は細胞の中に直接遺伝子がある)がもつ持つDNAトポイソメラーゼⅡ型はこのニューキノロン系抗生物質の作用を受けないため、体に負担を掛けず、細菌の増殖のみを抑えることが出来ます。
この抗生物質クラビットは、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、アクネ菌、コレラ菌など、その他にも非常に多くの菌に対して効果を発揮します。
クラビットが登場する以前の抗生物質に比べて、このクラビットは非常に高い効果を発揮することからしばしば治療に用いられます。そのため、今後細菌による感染によって感染症を発症してしまった場合はこの抗生物質クラビットを使う機会がある方も多いでしょう。
特に、現在肺炎は多くの方が罹患する可能性のある病気ですが、この肺炎は先ほど挙げた肺炎球菌以外にもマイコプラズマや、クラミジアニューモニエなどの感染によって引き起こされる可能性があり、このどれに対しても抗生物質クラビットが治療に効果的に働くそうです。クラビットがいかに優れた抗生物質であるのかということが良くわかりますね。
また、抗生物質はその種類によって適当な服用の仕方があるといわれており、中には1日数回に分けて飲んだ方が良いとされるものもあれば、1日1回比較的多くの量を摂取した方が高い効果が得られる抗生物質もあります。
クラビットは後者であり、基本的にこの抗生物質の服用は1日1回500mgと決められていて(患者に合わせて変わる場合もあります。)、これはクラビット100mgを1日3回服用するよりも菌の増殖を抑えるうえで高い効果を得ることが出来るそうです。
とは言え、症状の程度などによって医師から指示される用法用量は変わることもあるので、これは予備知識として覚えておいてください。
抗生物質クラビットの副作用とは?知らないと怖い鎮痛剤との併用の危険性とは?

この抗生物質クラビットは数ある抗生物質の中でも比較的副作用が少ないといわれているのですが、それでも人によっては抗生物質クラビットの服用によって重大な副作用を起こしてしまう可能性があるため、使用をする際は慎重な投与を行わなければならない方もいます。また、この抗生物質クラビットの使用にあたっては、副作用を防ぐためにクラビットと別の薬との飲み合わせについても注意が必要です。
抗生物質クラビットによる重大な副作用としては、アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症、痙攣、QT延長、心室頻拍、急性腎不全、間質性腎炎、劇症肝炎、腎機能障害、黄疸、汎血球減少症、無顆粒球症、溶血性貧血、血小板減少、間質性肺炎、好酸球性肺炎、偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎、横紋筋融解症、低血糖、アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害、錯乱、せん妄、抑うつ等の精神症状、過敏性血管炎、重症筋無力症の悪化などがあります。
これらはあくまで稀に見られる副作用であり、必要以上に神経質にならなくても大丈夫ですが、これらの中に持病と関連が深い項目がある方は、副作用によってさらに持病が悪化してしまう可能性もあるため気を付けてください。
特に、高度の腎機能障害のある患者、てんかん等の痙攣性疾患の症状がある方、キノロン系抗菌薬に対して過敏な方、重篤な心疾患のある方、重症筋無力症の患者、そして高齢者は抗生物質クラビットの慎重投与の対象となっております。細菌による感染症を患い、医師に診てもらう場合は、抗生物質を処方される前に必ず持病なについて医師に相談を行うようにしましょう。
そして、抗生物質クラビットを服用する必要が生じてしまった方において特に注意していただきたいのが、クラビット以外の薬との併用です。実は、中には抗生物質クラビットと一緒に飲んでしまうとショック症状が起こり、息が出来なくなる発作が引き起こされてしまう薬もあります。それが冒頭でも説明しましたロキソニンなどの鎮痛剤です。
鎮痛剤ならどれも副作用であるショック症状の原因になるわけではなく、クラビットの添付文書によるとフェニル酢酸系又はプロピオン酸系の鎮痛剤がその副作用を引き起こす可能性のある対象となっています。これらに分類されるものとしては、代表的なものですとフェニル酢酸系にはボルタレン、プロピオン酸系にはロキソニンなどがあります。
もしよく鎮痛剤を使用するという方で、抗生物質クラビットをしなければならなくなってしまったという方は、副作用を避けるために、併用をする前に必ず自分の鎮痛剤が何系に分類されるのか確認するようにしましょう。しかし、できれば抗生物質クラビットと鎮痛剤の併用は避けることが1番ですので、抗生物質クラビットを服用している間は出来る限り鎮痛剤の服用を我慢しましょう。しかし、どうしても鎮痛剤が必要であるという方は、抗生物質クラビットと一緒に飲んでも大丈夫な鎮痛剤を処方してもらえるか医師に相談してみるとよいでしょう。
また、鎮痛剤以外にも、抗生物質クラビットとの併用が危ないとされているものには、アルミニウムまたはマグネシウム含有の制酸薬、鉄剤、クマリン系抗凝固薬、デラマニド等のQT延長を起こすことが知られている薬剤などが挙げられています。
もしもともと持病の治療のために普段から薬を飲んでいるという方で、抗生物質クラビットの使用が必要になってしまった場合は、持病の治療のために服用している薬が抗生物質クラビットと併用しても大丈夫なものなのか医師に相談してみましょう。
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アスピリン喘息とは?大人の気管支喘息の患者は鎮痛剤の服用には要注意!

それでは次に、鎮痛剤によって発作が引き起こされてしまう2つ目の例である、アスピリン喘息に関する情報について説明していきたいと思います。
アスピリン喘息とは、鎮痛剤の服用後に鼻水、鼻づまりの症状や、重度の発作が誘発されてしまう疾患です。これは大人の喘息患者の約10%ほどに見られるといわれており、小児の患者はほとんどいないことから、後天的に発症する病気であると考えられています。(アスピリンとは、現在販売されている鎮痛剤の中でも最も歴史のある鎮痛剤のことです。そしてこのアスピリン喘息という病気は、アスピリンだけではなく、ロキソニン、バファリンなど様々な鎮痛剤が副作用である発作の原因となりえます。)
近年大人になってから気管支喘息を発症する患者は増加傾向にあるといわれており、このように大人になってから気管支喘息を発症してしまった方が特にこのアスピリン喘息を発症しやすいそうです。またアスピリン喘息は3:2の割合で女性に多いといわれています。
この病気の患者は嗅覚障害の症状を訴える割合が多いというのもその特徴の1つであり、その原因となる副鼻腔炎及び鼻茸を患っている方が多いといわれています。副鼻腔炎とは、一般的には細菌の感染によって鼻の粘膜に炎症が起こり、粘膜が腫れて嗅覚障害などが起こる病気です。また、ここに膿がたまり、ポリープになってしまったものを鼻茸と呼びます。
しかし、アスピリン喘息の患者にみられる副鼻腔炎は好酸球性の副鼻腔炎と呼ばれるものであり、細菌の感染によっておこる一般的な副鼻腔炎とは異なります。好酸球とは細菌が感染した時などに増加する免役細胞の一種なのですが、好酸球性の副鼻腔炎では、細菌が感染しているわけではなくても鼻の粘膜においてこの好酸球性の増加が起きて、粘膜が炎症を起こしている状態になってしまいます。(つまり免疫の誤作動)また、鼻茸も多数できやすいといわれています。
一般的な細菌感染によっておこる副鼻腔炎は、鼻茸が出来ていない場合は抗生物質の長期投与(しばしば今回ご紹介した抗生物質クラビットが用いられる)で治すことが可能なのですが好酸球性の副鼻腔炎の場合は抗生物質の投与は効果がなく難治性です。また、どちらの場合にせよ、鼻茸が出来てしまった場合は手術による切除が必要です。
このアスピリン喘息は、鎮痛剤を飲んでから発作が湯初されるまでのメカニズムは分かってきていますが、そもそもなぜこのように鎮痛剤に対する過敏性が獲得されてしまうのか、ということは未だによくわかっていません。
アスピリン喘息の患者が、鎮痛剤を服用してから発作が起きるまでのメカニズムはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、是非ご覧になってみてください。
また、アスピリン喘息の症状は鎮痛剤の成分以外によっても引き起こされることがあり、その代表的な例として、防腐剤であるパラベンや、着色料であるタートラジンなどが挙げられます。また、タートラジン以外の着色料によっても症状が誘発される可能性があるといわれているため、気管支喘息の患者は添加物が含まれている食品等を摂取する際には注意が必要です。
またサリチル酸化合物を多く含むもの、すなわち香辛料、歯磨き粉、ミント、特定の野菜や果物などもこの症状を誘発する原因となることがあります。特にラズベリーにはサリチル酸化合物が多く含まれているそうです。(サリチル酸化合物に関する詳細はこちらの記事を参照してください。)
また、気管支喘息は発作が起きてしまった場合、それを改善させるためにステロイドの注射を行う場合があるのですが、ここでも1つ注意点があります。実は、通常の気管支喘息の発作の改善には有効でも、アスピリン喘息の患者に投与してしまうとさらに重症化を招いてしまうものもあるのです。
そのステロイドとは、コハク酸エステル型ステロイドと呼ばれるものであり、気管支喘息の患者で発作が起きてしまった場合は、このコハク酸エステル型ステロイドを静脈注射によって投与し、症状の改善をはかることがあります。
しかし、今書きましたように、アスピリン喘息の患者はこのステロイドを投与されてしまうとさらに重症化してしまうことがあるため、アスピリン喘息の患者にはコハク酸エステル型ステロイドステロイドではなく、アドレナリンと呼ばれるものを投与することによって症状の改善をはかるそうです。
しかし、発作が起きて病院に来た患者自身が自分がアスピリン喘息であるということに気がついていないと、コハク酸エステル型ステロイドの方が投与されてしまい、さらに重症化が起きてしまうこともあるため気をつけなければなりません。(アスピリン喘息は後天的に発症する病気なので、そもそも大人になってから気管支喘息を発症してしまった方は、アスピリン喘息に関する情報について知らないということも可能性として十分にあり得ます。)
このようにアスピリン喘息の患者(気管支喘息の患者)は気を付けなければならないことがたくさんあります。アスピリン喘息自体はまだそれほど一般的な病気ではありませんが、気管支喘息を発症すること自体はそれほど珍しいことではありません。
特に気管支喘息は大人になってから感染症や妊娠などを機に発症しやすいといわれており、もし原因不明の息苦しさや空咳(乾いた咳)の症状が続いている場合は気管支喘息の初期症状である可能性もあるので注意してください。
気管支喘息の初期症状(咳喘息)に関する情報などはこちらの記事でまとめています。
まとめ
今回の記事では、鎮痛剤を服用すると発作が起きてしまう可能性のあるものとして、鎮痛剤と抗生物質クラビットを併用してしまった場合と、アスピリン喘息という2つの例についてご紹介しました。
抗生物質クラビットの名前を初めて聞いた方も多いかもしれませんが、これは細菌感染によって起こる感染症の治療においてはしばしば用いられる抗生物質です。ここまでに「細菌」、とあえて書いているのは、抗生物質はウイルスには効果を示さないためです。
実は細菌とウイルスはどちらも感染症の原因となりますが、この2つはその大きさ、性質ともにまったく異なる存在であり、クラビットなどの抗生物質は細菌にのみ効果を発揮します。
ちなみに、誰もが一度は罹患したことがある感染症であるかぜは基本的にウイルスの感染によって起こるものなので、抗生物質が処方されることはありません。風邪を治す薬はない、という言葉を聞いたことがあるのではないかと思いますが、これは細菌に効く抗生物質、のようなウイルスに効く特効薬がないためです。
風邪の原因となるウイルスは、細かく分類すると200種類以上にもなると言われています。ウイルスの感染によって、上気道に炎症が起きる病気(最近は下気道に及ぶものも含む)の総称を、かぜ症候群と呼ぶのです。
今後抗生物質クラビットを使用する際や、鎮痛剤を使用する際には、その添付文書をよく読んで副作用に気を付けて使用するようにしましょう。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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