クラリス錠というお薬をご存知でしょうか?このクラリス錠とは大正製薬から販売されている、細菌による感染症などに効果を発揮する抗生物質の一種です。
この抗生物質クラリス錠は、しばしば副鼻腔炎という病気の治療に用いられます。副鼻腔炎とは、主に細菌の感染によって鼻の粘膜が腫れあがり、嗅覚障害などが表れてしまう病気です。また、この副鼻腔炎は蓄膿症とも呼ばれます。
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一般的な副鼻腔炎はこのクラリス錠などの抗生物質の長期投与(マクロライド療法)によって症状が改善されていくのですが、副鼻腔炎の中には好酸球性の副鼻腔炎と呼ばれる難治性の症状もあります。そして、この好酸球性の副鼻腔炎は、アスピリン喘息と呼ばれる、気管支喘息の一部の方にみられるある症状と非常に関連が深いと考えられています。
それでは、このアスピリン喘息、及び好酸球性の副鼻腔炎とはいったいどのような症状なのか?また、一般的な副鼻腔炎に関する情報や、その治療によく使われる抗生物質クラリス錠に関する情報などについてまとめていきたいと思います。
目次
抗生物質クラリス錠とは?

クラリス錠とは副鼻腔炎などの感染症の治療に用いられるマクロライド系の抗生物質の一種です。抗生物質とは、感染した細菌の繁殖や働きを阻害する薬品のことを言います。
クラリス錠の場合は、その成分であるクラリスロマイシンが細菌内のリボソームと呼ばれるタンパク質の合成に関わる場所に作用し、50Sサブユニットと呼ばれる部分に結合することによって、タンパク質の合成を阻害しその繁殖を防ぐことが出来ます。この抗生物質クラリス錠はマイコプラズマ属、クラミジア属、レジオネラ属など、その他にも多くの菌に対して抗菌作用を示します。クラリス錠を用いる場合、菌の種類によって1日に摂取すべき用量は変わる場合があります。
また、この抗生物質クラリス錠は炎症の原因となるT細胞や好中球などの免疫細胞の働きを抑え、組織の障害や粘液が過剰に分泌されるのを防ぐ働きがあるそうです。そのため、クラリス錠などのマクロライド系の抗生物質は、時に細菌を退治することだけを目的とするのではなく、そういった炎症による産物の量を減少させる目的も含めて少量長期投与を行うことがあり、これをマクロライド療法と呼びます。今回ご紹介する好中球性の副鼻腔炎などが特にクラリス錠などの抗生物質によるマクロライド療法の対象です。
この抗生物質クラリス錠の成分であるクラリスロマイシンは酸に強く、胃酸にも耐えられるため、特にクラリス錠を酸から保護するようにしなくても経口投与が可能であるといわれています。また、クラリスロマイシンは投与から2時間ほどで血中の濃度が最大になるそうです。
多くの菌に対して効果を示す優れた抗生物質であるクラリス錠ですが、稀にアナフィラキシーショックや、血小板減少、心室細動などの重大な副作用が生じる場合もあるそうなので、クラリス錠を使用する際は十分に注意し、用法用量をしっかりと守って使うことが大切です。
また、クラリス錠は、ピモジド、エルゴタミン含有剤、タダラフィル、アスナプレビル、バニプレビル、スボレキサントなどの薬を投与中の患者には投与してはいけないといわれていますので、もクラリス錠を使用する必要が生じた場合に、もし自分が持病の薬などを飲んでいる場合はそれがクラリス錠と飲み合わせても大丈夫なものなのかよく確認するようにしましょう。
副鼻腔炎ってどんな病気?粘膜で増加がみられる白血球の種類によって特徴が異なります。

副鼻腔炎とは、一般的には副鼻腔と呼ばれる場所に細菌などが感染して炎症が生じ、粘膜が膨張して、鼻水、鼻づまりや嗅覚障害などが起こる病気です。これが慢性化してしまったものは慢性副鼻腔炎と呼ばれます。また、副鼻腔炎はそのままにすると副鼻腔に膿がたまり、鼻茸と呼ばれるポリープが生じることがあります。このような特徴から、この症状は蓄膿症とも呼ばれます。蓄膿症という名前は聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?
細菌感染によって起こる副鼻腔炎では、インフルエンザ菌や肺炎球菌などがその原因であるといわれています。
しかし、このように細菌感染が原因となって起こる一般的な副鼻腔炎では、炎症部位において好中球と呼ばれる白血球の一種の増加が見られるのが主な特徴なのですが、時に炎症部位において同じく白血球の一種である好酸球の増加が見られる、好酸球性の副鼻腔炎を発症してしまう方もおり、近年その注目を高めています。つまり、慢性化してしまう副鼻腔炎は主に好中球性の副鼻腔炎と、好酸球性の副鼻腔炎の2つにわけられるのです。(この他、好酸球性と好中球性のどちらにも属さない副鼻腔炎もありますが、症状が軽度で済むことが多く、再発の可能性も少ないのが特徴です。)この2つにはそれぞれどのような特長があるのかまとめたいと思います。
まず、細菌感染をきっかけに起こる好中球性の副鼻腔炎は、主に手術もしくは抗生物質の少量長期投与によって治療することが出来ます。(この方法では細菌を滅菌することを目的としているのではなく、好中球の働きを抑えることを目的としています:マクロライド療法)この治療の抗生物質として、よくクラリス錠が用いられます。
しかし、クラリス錠などによる長期の治療でも改善が見られない場合や、鼻茸が出来てしまっている場合には手術による治療が行われます。手術療法では、鼻茸の切除などによって副鼻腔の閉塞を改善し、自浄作用を回復させることで、症状の改善を図ります。
好中球性の副鼻腔炎は比較的治りやすく、約2年再発がなければ完治したとみなされます。
しかし、これに対して好酸球性の副鼻腔炎は難治性であり、抗生物質の長期投与によるマクロライド療法もほとんど効果を示しません。また、手術をして鼻茸などを取り除いても、そのままにするとまた鼻茸が出来てしまう可能性が高いそうです。
そのため、この好酸球性の副鼻腔炎では、鼻茸を切除した後は、好酸球の働きを抑えて炎症を鎮める効果のあるステロイド薬のスプレーなどを治療に用いて、再発をしないように管理します。
このようなステロイド薬というものは、特に気管支喘息の治療に第一選択で用いられることでよく知られているのですが、まさしくこの好酸球性の副鼻腔炎という病気は、気管支喘息の患者に多くみられることで知られています。
さらに、気管支喘息の患者でこの好酸球性の副鼻腔炎を患っている場合は、ロキソニンやバファリン、ボルタレン、アスピリンなどの解熱鎮痛剤に対して過敏性を示し、これらの薬によって発作が誘発されるアスピリン喘息という病気を患っていることが多いという特徴もあります。
それではこのアスピリン喘息とはいったいどのようなメカニズムによっておこる病気なのか、詳しく説明していきたいと思います。
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アスピリン喘息とは?気管支喘息の方で鼻づまりの症状がある方は要注意です…!

アスピリン喘息とは、解熱鎮痛剤の成分によって鼻水、鼻づまりの症状や、重度の発作が誘発されてしまう疾患です。現在大人の気管支喘息患者の約10%ほどがこの症状を患っているといわれています。また、この疾患は小児にはほとんどみられないことから、大人になってから後天的に発症する疾患であると考えられています。
この症状は一般的にアスピリン喘息と呼ばれていますが、アスピリン以外のほとんどの解熱鎮痛剤の成分によって症状が誘発されてしまいます。(アスピリンは解熱鎮痛剤の中でも最も歴史のある薬です。)そのため、この疾患の患者は薬局においてある解熱鎮痛剤のほとんどは使用が禁忌であるといわれています。
またこの病気の患者は嗅覚障害の症状を訴えることが多く、その場合は先ほども書きましたように好酸球性の副鼻腔炎及び、鼻茸の症状を併発している場合が多いのが特徴です。この原因は現在もはっきりとは分かっていませんが、好酸球性の副鼻腔炎と、アスピリン喘息の2つの症状には間違いなく何かしらの関連はあると考えられています。
また、そもそも、気管支喘息という病気は、気管支において好酸球の増加が見られ、気管支が常に炎症を起こすようになってしまう病気です。気管支喘息は発作が起こる病気というイメージが先行してしまっている方もいるかもしれませんが、この好酸球の増加によって気管支に炎症が生じ、この炎症を起こした気管支が様々な刺激に対して過敏に反応してしまうことによって発作の症状が誘発されるのです。そのため、好酸球性の副鼻腔炎も、気管支喘息も、好酸球の働きを抑制するステロイド薬が第一選択の治療薬として用いられます。(普通、炎症とはウイルスなどが感染した時にそれに対抗するために白血球が働く免疫反応ですが、気管支喘息の患者では細菌の感染が起きていなくても白血球の一種である好酸球が働き、常に気管支が炎症を起こした状態になってしまいます。つまり、気管支喘息とは免疫の誤作動によっておこる病気なのです。)
気管支喘息と好酸球性副鼻腔炎の2つが、好酸球の働きによっておこるということは共通点として挙げられますが、なぜこの2つが同時に起きると、解熱鎮痛剤に対して過敏に反応してしまうようになってしまうのかということは未だによくわかっていないのです。しかし、このアスピリン喘息の患者が、解熱鎮痛剤を服用するとどのようにして発作が引き起こされてしまうのか、ということは、近年分かってきています。
それでは、どうしてこの疾患の患者は解熱鎮痛剤を服用すると発作などの症状が誘発されてしまうのか、その発症メカニズムについて説明したいと思います。
まず、私たちがロキソニンなどの解熱鎮痛剤を服用したいとき、つまり熱が出たり頭痛や生理痛などの症状があるとき、体内ではその原因となるプロスタグランジンと呼ばれる成分が合成されています。
このプロスタグランジンは体温調節枢に作用して体温を上昇させたり、痛みの原因となる炎症を生じさせたりする働きがあります。そして、解熱鎮痛剤の成分はこのプロスタグランジンの生成を抑制することによって、プロスタグランジンによって引き起こされる諸症状を改善させることが出来るのです。
もう少し具体的に説明しますと、まず、この痛みや熱の原因となるプロスタグランジンは私たちの体内においてアラキドン酸と呼ばれる成分から合成されるのですが、この際、シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素が、このアラキドン酸→プロスタグランジンへの合成を促すことが分かっています。
ロキソニンなどの解熱鎮痛剤の成分は、この酵素シクロオキシゲナーゼの働きを阻害することによってアラキドン酸→プロスタグランジンへの流れを抑制することが出来、熱や痛みの症状を鎮めることが出来るのです。まずここまでが解熱鎮痛剤に期待される本来の作用になります。
しかし、アスピリン喘息の患者では、解熱鎮痛剤の成分によって酵素シクロオキシゲナーゼの働きが阻害され、このアラキドン酸→プロスタグランジンへの流れが抑制されてしまうと、今度はこのアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる化学物質が大量に作り出されてしまうと考えられています。
このロイコトリエンとはアレルギー反応が起きた際に肥満細胞から放出される化学物質としても知られており、炎症を悪化させたり、気管支の収縮などを促す作用があります。つまりアスピリン喘息の患者は、解熱鎮痛剤を服用するとこのロイコトリエンの働きによって気管支の収縮が起き、発作などの症状が起きてしまうのです。これがアスピリン喘息のメカニズムになります。
ちなみに、アスピリン喘息の原因になる解熱鎮痛剤は、プロスタグランジンの生成を抑えることによって炎症を抑える抗炎症剤ですが、気管支喘息の治療に使われるステロイド薬も、好酸球の働きを抑えることで炎症を鎮める抗炎症剤です。このように、抗炎症剤にはそのメカニズムの違いによって異なる種類のものがあり、そのためロキソニンなどの抗炎症剤は、しばしば非ステロイド性抗炎症剤と呼ばれます。また、この非ステロイド性抗炎症剤は英語表記(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)にしてその頭文字をとり、NSAIDsと呼ばれるのことも多く、そのためこのアスピリン喘息という病気も、NSAIDs過敏性喘息とも呼ばれます。
このアスピリン喘息によって起きた発作は非常には重症化しやすいといわれており、呼吸困難に陥ると命にもかかわるため、もし解熱鎮痛剤の服用後に息苦しさの症状などが表れた場合は放置せずに早めに医師に診てもらうことをお勧めいたします。
また、医師に診てもらい治療を受ける場合は、解熱鎮痛剤の服用後に発作が現れたということをしっかりと伝えることが大切です。実は、通常の気管支喘息の発作の改善には有効でも、アスピリン喘息の患者に投与されるとさらに重症化を招いてしまう恐れがある薬もあるのです。
その薬に関する情報はこちらの記事でまとめています…
まとめ
今回の記事では、抗生物質クラリス錠に関する情報や、抗生物質クラリス錠の少量長期投与(マクロライド療法)が有効な好中球性の副鼻腔炎の情報、そして、マクロライド療法の効かない好酸球性の副鼻腔炎に関する情報や、それと関連の深いアスピリン喘息に関する情報などについてまとめました。
クラリス錠のような抗生物質は、その使用にあたって注意しなければならないことが数多くあります。もし感染症などにかかってクラリス錠が必要になった場合は、現在飲んでいる薬がある場合はそれが併用可能かどうか、または持病などについてしっかりと医師に相談するようにしましょう。
また、もし気管支喘息の患者で、常に鼻づまりの症状などがある方は解熱鎮痛剤の使用はできるだけ避け、自分が好酸球性の副鼻腔炎かどうか病院で検査を受けてみた方が良いでしょう。アスピリン喘息は後天的に発症する病気であると考えられているため、それまでは大丈夫だった解熱鎮痛剤の使用も、ある日急に発作の原因になってしまうことも考えられます。
このブログでは、他にも気管支喘息やアスピリン喘息などに関する様々な情報を発信しています。もし気になるものがありましたら是非ご覧になってみてください。
アスピリン喘息のさらに詳しい情報はこちらの記事でまとめています…
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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