アスピリン喘息とは、現在大人の喘息患者の約10%ほどが患っているといわれている疾患であり、3:2の割合で女性に多いといわれています。また、この症状は小児の患者に診られることはほとんどないため、ある程度成長してから発症する後天的な疾患であると考えられています。
この疾患の患者は、アスピリンのような解熱鎮痛剤の成分を摂取すると、鼻水、鼻づまりの症状や発作が誘発されているといわれてます。また、この症状はアスピリン喘息と呼ばれていますが、実際はアスピリン以外のほとんどの解熱鎮痛剤の成分に対して過敏に反応してしまうため、この疾患の患者は薬局においてある解熱鎮痛剤はほとんどのものが服用禁忌であるといわれています。
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しかし、この疾患は実は解熱鎮痛剤の成分以外にも誘発される恐れもあり、また後天的に発症するため、あるとき突然薬の服用によって症状が現れてしまう場合もあります。そのような場合、まずは吸入薬などによって症状の改善を図りますが、それでも改善が見られない場合は、ステロイドの注射などによって症状の改善を図ります。
この注射液の一つにクレイトン静注液というものがあります。今回の記事ではアスピリン喘息の特徴と、クレイトン静注液に関する情報をまとめていきたいと思います。
目次
クレイトン静注液とは?

クレイトン静注液は副腎皮質ホルモン剤、つまりステロイド剤の一種です。実はこのクレイトン静注液は2007年から2015年まではこのクレイトン静注液と呼ばれる名称で販売されていましたが、2015年に販売名を変更し、現在はクレイトン静注ではなくヒドロコルチゾンリン酸エステルNa静注液、またはAFPとよばれる名称で販売されています。ですが、この記事では、長年使われてきたクレイトン静注液という名前で書いていきたいと思いますのでご了承ください。
クレイトン静注液はショック状態に陥った患者に対して投与され、今回紹介するアスピリン喘息の症状が重症化してしまった場合などに用いられます。クレイトン静注液は、具体的には炎症や免疫を抑制する効果があります。
そもそも、気管支喘息の患者は慢性的に気管支に炎症が生じていると考えられており、この敏感になった気管支が何らかの刺激を受けると収縮します。アスピリン喘息の患者はこの収縮を促す原因が解熱鎮痛剤の成分なのですが、その根本的な原因はやはり軌道に生じている炎症なのです。クレイトン静注液はこの炎症を鎮めることによって、気管支の過敏性を抑え、症状の改善に働きます。
このクレイトン静注液は、大量投与によって感染症を悪化させる恐れがあるため、有効な抗菌剤が存在しない感染症の患者や、全身の真菌症の患者には投与が原則禁忌であるといわれています。また、急性心筋梗塞を起こした患者へのクレイトン静注液の投与も禁忌であるといわれています。
また、クレイトン静注液は、消化胃潰瘍、糖尿病、感染症、結核性疾患、単純疱疹性角膜炎、骨粗鬆症、精神病、後嚢白内障、緑内障、腎不全、高血圧、電解質異常、うっ血性心不全、甲状腺機能低下などの症状がある方は慎重投与の対象となっております。持病などをお持ちのかたは治療を受ける際医師にしっかりと伝えるようにしましょう。
アスピリン喘息とは?
アスピリン喘息とは、解熱鎮痛剤の成分によって発作などの症状が誘発されてしまう疾患です。
この症状は解熱鎮痛剤の服用から1時間以内に現れるといわれており、重症化しやすいといわれています。もし症状が現れ、息苦しさを感じた場合は、呼吸困難などに繋がる恐れがあるため早い段階で医師に診てもらうことをお勧め致します。
この症状を患っている方は、嗅覚障害の症状を訴える方が多いという特徴があり、その原因となる副鼻腔炎、及び鼻茸の症状を患っている場合が多いといわれています。副鼻腔炎とは、鼻に細菌が感染し、炎症が起きて粘膜が腫れあがる病気であり、ここに膿がたまってポリープになったものを鼻茸と呼びます。これらの症状とアスピリン喘息の関連は、まだ詳しいことは分かっていませんが、これらの症状が解熱鎮痛剤への過敏性と何らかの関係がある可能性は大きいと考えられています。
鼻茸は自然に治癒することはほとんどないため、手術によって切除するのが基本ですが、副鼻腔炎の症状自体は抗生剤による治療も近年では一般的になってきました。しかし、抗生剤の投与によっても症状が改善しない場合は手術を行う場合があります。
また、アスピリン喘息の症状は、解熱鎮痛剤の成分以外によっても引き起こされる場合があります。その代表としては、パラベンと呼ばれる防腐剤や、タートラジンと呼ばれる黄色の着色料などが挙げられます。特に黄色の着色料はタートラジン以外のものもこの疾患を誘発する原因となる疑いがあるそうです。
また、サリチル酸化合物を含む歯磨き粉、香辛料、特定の果物もこの症状を誘発する現認となることがあるそうです。特にラズベリーなどはこのサリチル酸化合物を多く含んでいるそうですので、食べる際は注意してください。
また、アスピリン喘息の発作が重症化してしまい、医師から治療を受ける場合も気を付けなければなりません。実は、通常の気管支喘息の発作症状の改善には有効であっても、アスピリン喘息の患者に投与するとさらに悪化を招いてしまう薬もあるのです。
その薬とは、コハク酸エステル型ステロイドと呼ばれるものです。これと同じく発作の改善に使われるものにリン酸エステル型ステロイドがあり、今回紹介しているクレイトン静注液はリン酸エステル型ステロイドになります。
クレイトン静注液の成分のように、薬の成分である化合物がエステルされているのはその化合物の水溶性を高めるためであり、アスピリン喘息の患者はその目的で作成されたコハク酸エステル構造に対して過敏に反応してしまうと考えられています。そのため、この疾患の患者へのコハク酸エステル型ステロイドの投与は禁忌とされているのですが、この疾患であると医師が気付かないと間違って投与されてしまう恐れがあるため、気管支喘息の患者は今後自分が解熱鎮痛剤に過敏になってしまうかもしれないということをしっかりと覚えておき、症状が現れてしまった場合は医師にしっかりとアスピリン喘息かもしれないということを伝える必要があります。
また、今回紹介したクレイトン静注液のようなリン酸エステル型ステロイドは、構造的にアスピリン喘息の悪化を招く恐れが少なく、この疾患の患者へ投与されることもあるのですが、その添加物としてパラベンなどを含んでいる場合はやはり投与は避けるべきであるといわれています。リン酸エステル型ステロイドのお薬には、クレイトンの他に、リンデロンやベタメタゾンなどがあります。
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アスピリン喘息のメカニズムとは?
それでは、なぜこの疾患の患者は解熱鎮痛剤の成分によって発作などの症状が現れてしまうのか、そのメカニズムについて説明したいと思います。
まず、私たちが熱や痛みなどを感じ、、解熱鎮痛剤を使用したいとき体内ではそれらの症状の原因となるプロスタグランジンと呼ばれる成分が合成されています。
このプロスタグランジンは、体温調節枢に作用して体温を挙げたり、痛みの原因となる炎症を引き起こすなどの働きがあります。解熱鎮痛剤の成分の多くは、このプロスタグランジンの生成を抑えることによって、熱を下げたり痛みを抑えたりすることが出来るのです。
具体的には、このプロスタグランジンと呼ばれる成分は、アラキドン酸と呼ばれる成分から合成されるのですが、その際シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素がこの合成を促します。解熱鎮痛剤の成分は、このシクロオキシゲナーゼの働きを不活性化することによって、アラキドン酸からプロスタグランジンへの流れを抑制することが出来るのです。これが、解熱鎮痛剤に期待される通常の作用になります。
しかし、アスピリン喘息の患者は、解熱鎮痛剤の作用によって、このアラキドン酸からプロスタグランジンへの流れを抑制してしまうと、今度はこのアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる成分を作り出してしまうと考えられています。
このロイコトリエンとは、ダニや花粉などによるアレルギー反応の際、肥満細胞から放出されるアレルギー症状を引き起こす原因物質であり、気管支の収縮なども招きます。そのため、この疾患の患者は、解熱鎮痛剤を服用すると、鼻水、鼻づまりの症状や、発作などの症状が誘発されてしまうのです。これがアスピリン喘息の発症メカニズムになります。
この症状は急激に悪化しやすいといわれているため、もし症状が現れてしまった場合は医師に診てもらうことをお勧めいたします。
まとめ
今回の記事では、アスピリン喘息の症状や、その治療に用いられるクレイトン静注液に関する情報などについてまとめていきました。
クレイトン静注液は現在はヒドロコルチゾンリン酸エステルNaという成分名で販売されているそうです。この名前を聞くとすぐにリン酸エステル構造を持っているということが分かりますが、アスピリン喘息の方はコハク酸エステル構造は禁忌であること、そしてパラベンなどが含まれている場合はリン酸エステル型のものも危険であるということを是非覚えておいてください。
今回の記事は以上になます。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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