【アスピリン喘息とは?】抗生物質クロラムフェニコールの副作用として発作が引き起こされてしまう可能性について解説します…

クロラムフェニコールとは、細菌による感染症の改善に効く抗生物質の一種です。クロラムフェニコールの作用は数ある抗生物質の中でも比較的強いのですが、その分副作用も表れやすいのといわれているため、細菌による感染症を発症した時はまずはクロラムフェニコールよりも安全性の高い抗生物質が処方され、その抗生物質が効かない場合などに二次選択的にクロラムフェニコールが処方されるということが多いそうです。

この抗生物質クロラムフェニコールの副作用としては、主に再生不良性貧血などの血液における副作用が挙げられます。しかし、実は添付文書には記載がされていませんが、この抗生物質クロラムフェニコールはその副作用としてときに喘息の発作を誘発する可能性があります。そのため、気管支喘息の患者がこの抗生物質を使用する際には注意が必要です。

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抗生物質クロラムフェニコールが喘息の発作を誘発してしまう場合、その患者の方はアスピリン喘息と呼ばれる病気を患っていると考えられます。このアスピリン喘息とは、大人の気管支喘息患者の約10%ほどに見られるといわれている病気であり、基本的にはロキソニンやバファリンなどの解熱鎮痛剤を服用すると重度の発作が誘発されてしまうのが主な症状です。抗生物質であるクロラムフェニコールは鎮痛剤とは全く異なる作用を示す薬ですが、実は注射薬として用いられるタイプのクロラムフェニコールが持っているある特徴がこのアスピリン喘息を誘発してしまう可能性があるのです。

それでは今回の記事では、抗生物質クロラムフェニコールの詳細やアスピリン喘息の詳細、そしてこの抗生物質クロラムフェニコールとアスピリン喘息との関連などに関する情報についてまとめていきたいと思います。

目次

抗生物質クロラムフェニコールとは?

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クロラムフェニコールとはバクテリア由来の抗生物質です。そしてこの抗生物質とは微生物が産生する物質のことであり、他の微生物の繁殖やその働きを阻害する作用のある物質です。

つまり、微生物は自分たちだけが生き残れるようにほかの種類の微生物の繁殖を抑制するための物質を作り出しており、これを抗生物質と呼びます。そして、この特性を利用して現在では様々な抗生物質が感染症の治療に用いられるようになったのです。

そして、数ある抗生物質の中でも、1928年にアオカビから発見されたペニシリンが世界で初めての抗生物質であるといわれています。ペニシリンという名前を聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか?これももともとは生物が作り出した物質なんですね。

そして、今回その詳細について説明する抗生物質クロラムフェニコールは、以前は菌によって発酵生産されていましたが、この方法だと生産されたクロラムフェニコールによって生産菌自体も死んでしまうことがあるという問題もあったため、現在は化学合成によって作られているそうです。薬学の分野では、このように菌によってある物質を作り出させるということがしばしばあります。

クロラムフェニコールは多くの細菌に対して効果を持つ非常に優れた抗生物質ですが、その副作用も強いため、他の抗生物質が効かない場合や、腸チフスなどの重い感染症の治療にのみ用いられます。

そして、このクロラムフェニコールの副作用には再生不良性貧血を含む骨髄の損傷、血小板や顆粒球の減少などが挙げられます。そのため、造血機能が低下している方や、新生児には投与してはいけないといわれています。

しかし、クロラムフェニコールに代わる安価な抗生物質というものは現在も存在しないため、発展途上国では、コレラの治療の際小児の患者にもこのクロラムフェニコールが用いられるそうです。なかなか難しい問題ですが、早く安全性と有用性の高い抗生物質が開発されるといいですね。

また、このクロラムフェニコールはテトラサイクリン耐性ビブリオにも効果があるそうです。このテトラサイクリンとは、放線菌から発見された抗生物質の一種になります。つまり、抗生物質クロラムフェニコールはテトラサイクリン系に属する抗生物質が効かない菌に対してもその効果を発揮するのです。

このように、時には副作用を示してしまうクロラムフェニコールですが、やはり抗生物質としては非常に優れた効能のある薬と言えます。この抗生物質クロラムフェニコールは、日本では第一三共から注射薬や内服薬のクロラムフェニコールが販売されています。クロラムフェニコールは成分名の一部であり、商品名はクロロマイセチンになります。

それでは、何故このクロロマイセチンの有効成分クロラムフェニコールは時に副作用として喘息を悪化させる原因になる可能性があるのでしょうか?これについて説明するために、次にアスピリン喘息の概要について説明したいと思います。

アスピリン喘息とは?

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アスピリン喘息とは、ロキソニンやバファリンなどの解熱鎮痛剤を服用すると、約1時間以内に鼻水、鼻づまりの症状や重度の発作が誘発されてしまう疾患です。

この症状は大人の気管支喘息の患者の約10%ほどにみられるもので、こどもの患者はほとんどいないことから後天的に発症する病気であると考えられています。そのため、気管支喘息の患者はある日突然解熱鎮痛剤に対して過敏に反応するようになってしまう可能性があります。

普段から頭痛や生理痛などの症状を抑えるためにロキソニンやバファリンなどの鎮痛剤を持ち歩いている方も多いと思いますが、喘息を患っている場合はそれらを服用する際には十分な注意が必要です。そして特にこの病気は大人になってから気管支喘息を患った患者に多いといわれていますので、大人になってから喘息を発症してしまった方は解熱鎮痛剤の服用には細心の注意を払いましょう。(近年、風邪や妊娠、出産などを機に喘息を発症してしまう大人は増加傾向にあります。

また、ここまでにお伝えしていますように、この病気はロキソニン、バファリンなど、薬局においてある鎮痛剤はほとんどのものが発作を誘発する原因となってしまいます。これは、解熱鎮痛剤はほとんどのものがみな同じメカニズムによってその効果を発揮するためです。ちなみに、このアスピリン喘息の名前にも含まれている【アスピリン】は、数ある解熱鎮痛剤の中で最も歴史のある薬です。

では、どうしてこの疾患の患者は解熱鎮痛剤の成分によって発作などが誘発されてしまうのしょうか。その発症メカニズムについて説明するために、本来解熱鎮痛剤は私たちの体の中でどのような作用を及ぼすのかを説明したいと思います。

まず、私たちが解熱鎮痛剤を使用したいとき、つまり熱が出たり体に痛みが生じているとき、体の中ではその原因となる、プロスタグランジンと呼ばれる成分が合成されています。

具体的には、このプロスタグランジンは、体温調節枢に作用して体温を挙げたり、痛みの原因となる炎症を生じさせる作用があり、解熱鎮痛剤の成分の多くはこのプロスタグランジンの合成を抑えることによって、熱や痛みを抑えることが出来ます。

更に詳しく説明しますと、この熱や痛みの原因となるプロスタグランジンは、体内でアラキドン酸と呼ばれる成分から合成されるのですが、その際シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素がこの合成を促すことが分かっています。

そして解熱鎮痛剤の成分は、このアラキドン酸→プロスタグランジンへの反応に不可欠なシクロオキシゲナーゼの働きを阻害することによって、結果プロスタグランジンの合成を抑制し、このプロスタグランジンによる熱や痛みの作用を緩和させることが出来るのです。ここまでが、解熱鎮痛剤に期待される通常の作用になります。

しかし、アスピリン喘息の患者は、体内でシクロオキシゲナーゼの働きが阻害され、アラキドン酸→プロスタグランジンへの流れが抑制されてしまうと、今度はアラキドン酸から新たにロイコトリエンと呼ばれる成分を大量に作り出してしまうと考えられています。

このロイコトリエンとは、カビやダニなどによってアレルギー反応が起きた際肥満細胞から体内に放出されるアレルギー症状を引き起こす原因物質としても知られています。具体的には炎症を起こしたり、気管支の収縮作用のある成分としても知られています。

つまり、アスピリン喘息の患者は解熱鎮痛剤を服用するとこの大量に作られたロイコトリエンによって鼻水などが出たり、気管支平滑筋が収縮させられることによって発作などが起きてしまうのです。これがアスピリン喘息の発症メカニズムになります。

この病気は非常に重症化しやすいといわれているため、症状が表れた場合はひどくなる前に医師による適切な治療が必要になります。しかし、医師に診てもらう際には、解熱鎮痛剤の服用後に症状が出たということを必ず伝えてください。

実は、通常の気管支喘息の発作の治療には有効でも、アスピリン喘息の患者に投与するとさらに症状を悪化させてしまう薬もあるのです。その薬はコハク酸エステル型ステロイドと呼ばれており、抗炎症作用のあるステロイドを注射によって投与できる薬となっています。(気管支喘息という病気の根本的な原因は気管支に生じる炎症であり、発作が起きると気管支の炎症が悪化するため、発作が起きた際は抗炎症作用のあるステロイドなどを投与することによって症状の改善をはかります。ちなみに、アスピリン喘息の原因となる解熱鎮痛剤も抗炎症作用のある薬の一種ですが、ステロイドとは抗炎症作用のメカニズムが異なります。そのため、ロキソニンやバファリンなどの薬はしばしば非ステロイド性抗炎症薬【NSAIDs】とよばれ、このアスピリン喘息という病気も、NSAIDs過敏性喘息と呼ばれます。)

医師が、発作が起きた原因が解熱鎮痛剤であるということを知らない場合、発作の治療としてこのコハク酸エステル型ステロイドが投与されてしまう可能性があります。このようなミスを防ぐためにも、どのような経緯で症状が表れたのかしっかりと伝えることが大切です。

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抗生物質クロラムフェニコールがアスピリン喘息を誘発してしまう可能性があるのはなぜか?

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それでは、なぜ抗生物質であるクロラムフェニコールがこのアスピリン喘息の症状を悪化させてしまう可能性があるのでしょうか。実はクロラムフェニコールという物質自体にはこの疾患を悪化させる原因はありません。ですが、クロラムフェニコールを薬として用いようとすると、ある問題が生じてくる可能性があります。

実は、薬品として販売されているクロラムフェニコールはの中には、水溶性を高めるためにその構造が少し変化させられているものもあり、注射薬として投与されるクロラムフェニコールは、クロラムフェニコールコハク酸エステルナトリウムという形で投与されます。このように水溶性や安全性などを考慮して構造を変えてある医薬品はプロドラッグと呼ばれています。

このクロラムフェニコールコハク酸エステルナトリウムという名前を見ると、アスピリン喘息との関係に気付くのではないでしょうか?これは、この疾患を重症化させるコハク酸エステル型ステロイドと名前が似ていますね。

実は、コハク酸エステル型ステロイドも、水溶性を高めるためにコハク酸を側鎖に持つエステル型構造になっているのです。そして、アスピリン喘息の患者は、このコハク酸エステル構造に過敏に反応してしまうと考えられているため、この構造を持つ医薬品の投与は危険であると考えられています。もともとのクロラムフェニコールと、注射薬として用いられるクロラムフェニコールコハク酸エステルナトリウムの構造は以下に示したものになります。四角で囲った部分が注射薬として用いるために構造変化させられた部分です。

そのため、気管支喘息の患者が何か注射によって薬を投与されることがある場合は、その成分がこのようにコハク酸エステル構造を持っていないか念のため確認しておくようにしましょう。このように、薬の中にも副作用として発作の原因となってしまう可能性があるものがあると考えると怖いですよね。

まとめ

今回の記事では抗生物質クロラムフェニコールの詳細やアスピリン喘息の詳細、そしてアスピリン喘息とクロラムフェニコールとの関連などについて説明していきました。

コハク酸エステル型ステロイドも、クロラムフェニコールコハク酸エステルナトリウムも、より人体に使用しやすいものにしようとした結果、副作用としてアスピリン喘息を誘発する可能性のあるものが出来てしまったというわけですね。

クロラムフェニコールは比較的作用が強い抗生物質ですので今後使う機会のある方はあまりいないかもしれませんが、その可能性はないとは言えませんので、今回ご紹介したことについて是非覚えておいてください。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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