皆さんはアスピリン喘息という病気をご存知でしょうか?この病気は、大人になってから気管支喘息を発症してしまった方に特に多いといわれる症状で、ロキソニンやバファリン、ボルタレンなど薬局に販売されているほとんどの鎮痛剤によって重度の発作が誘発されてしまう病気です。
頭痛や生理痛の症状を抑えるために普段からロキソニンなどの鎮痛剤を持ち歩いている方も多いと思いますが、ある日突然ロキソニンなどの鎮痛剤によって呼吸困難になってしまったらと考えるととても怖いですよね。この病気は大人になってから後天的に発症してしまう病気ですので、誰しもが発症してしまう可能性があります。そしてこの病気は難治性であり、しっかりとした治療法がいまだに確立されていません。
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ロキソニンを飲むと発作が誘発されてしまうということも怖いですが、偏頭痛の症状がある方や、女性の方は、ロキソニンなどの鎮痛剤が使えなくなってしまうということもとても怖いことだと思います。
しかし、安心してください。実は、このアスピリン喘息の患者でも使える鎮痛剤はいくつかあり、そのうちの1つが、今回ご紹介するセレコックスと呼ばれる鎮痛剤です。
セレコックスにはセレコキシブという有効成分が含まれていて、これが鎮痛作用を示すのですが、実はロキソニンもセレコックスも痛みを抑える作用自体は非常によく似ていて、その違いはたった1つだけです。しかし、そのたった1つの違いがアスピリン喘息を誘発してしまうかどうかを左右しており、このたった1つの違いがいかにすごいかということを今回の記事を読んでいただければわかっていただけると思います。
知っているようで実は知らない鎮痛剤のこと、ロキソニンやセレコックスが痛みを抑えるメカニズムに関する情報や、このロキソニンとセレコックスの違いに関する情報、そしてアスピリン喘息の詳細などについて今回の記事でわかりやすくまとめていきたいと思います。
目次
アスピリン喘息とは?

アスピリン喘息とは、現在成人の気管支喘息患者の約10%ほどに見られるといわれる病気です。この病気では子供の患者はほとんどいないことから、後天的に発症する病気であると考えられています。そして特に、成人を迎えてから気管支喘息を発症してしまった方はアスピリン喘息になりやすいということもいわれています。
そもそも気管支喘息という病気が子供に多いというイメージを持っている方も中にはいるかもしれませんが、実は近年大人になってから気管支喘息を発症する方は増加傾向にあるといわれています。そして、この気管支喘息という病気は風邪などの感染症や妊娠、出産による体調の変化に伴って発症してしまう場合が多いそうです。
そして、この気管支喘息という病気は、発作が出てしまう病気というイメージが強いかもしれませんが、正しくは気管支が慢性的に炎症を起こすようになってしまう病気です。普通炎症反応というのは気管支にウイルスなどが感染した時に見られる免役反応ですが、気管支喘息の患者はウイルスなどの感染が起きていなくても、免役の誤作動によって気管支が常に炎症を起こすようになってしまうのです。
そして炎症が起きた気管支はむくみを起こし、それによって気管支は狭くなるため、気管支喘息の患者は呼吸に対する違和感を感じるよう人なります。さらに、この炎症を起こした気管支は非常に敏感な状態となっているため、ここに何らかの刺激が与えられると、気管支が過敏に反応して収縮を起こし、時に呼吸が出来なくなってしまうことがあります。これがいわゆる喘息における発作の症状です。
気管支喘息の根本的な原因は気管支における炎症ですが、発作を誘発する原因となるものは人それぞれで、発作の原因にはタバコの煙、香水の香り、アレルギー反応、運動、そして、今回説明するロキソニンなどの鎮痛剤が挙げられます。
ロキソニンを服用すると発作が出る、と聞くとこれはアレルギー反応のように思えますが、このアスピリン喘息のメカニズムは、アレルゲン物質に対して体が抗体を作り出し、その抗体とアレルゲン物質の結合によっておこるアレルギー反応とは全く異なります。それでは、アスピリン喘息の患者はなぜ鎮痛剤を服用すると発作が出てしまうのか、そのメカニズムについて詳しく説明していきたいと思います。
アスピリン喘息のメカニズムとは?ロキソニンが発作の原因になる理由はこれです…

それでは、なぜアスピリン喘息の患者はロキソニンを飲むと発作が出てしまうのか、そのメカニズムについて説明するために、そもそもなぜロキソニンは頭痛や生理痛の症状を抑えてくれるのか、そのメカニズムについて説明したいと思います。
まず、私たちが痛みを感じているとき、体内ではその原因となるプロスタグランジンと呼ばれる化学物質が合成されています。
このプロスタグランジンは痛みの原因となる炎症を生じさせたり、体温調節枢に作用して体の体温をあげる働きなどがあります。ロキソニンなどの鎮痛剤はこのプロスタグランジンの合成を抑制することによってこれらの作用まで抑えることが出来るのです。そのためロキソニンは良く解熱剤としても使われますよね。
さて、そしてこの痛みや熱の原因となるプロスタグランジンですが、これは私たちの体内でアラキドン酸と呼ばれる成分から合成されます。しかし、この合成においては、シクロオキシゲナーゼ、通称COXと呼ばれる酵素の働きが不可欠であり、このCOXはアラキドン酸→プロスタグランジンへの合成を促す働きをします。
そして、ロキソニンなどの解熱鎮痛剤は、このCOXと呼ばれる酵素の働きを阻害することによってその効果を発揮します。すなわち、ロキソニンによって酵素COXの働きが阻害されると、その結果アラキドン酸→プロスタグランジンへの合成も抑制され、プロスタグランジンによって引き起こされる熱や痛みの症状を抑えることが出来るのです。ここまでが、ロキソニンなどの鎮痛剤がその作用を発揮する通常のメカニズムになります。
しかし、アスピリン喘息の患者はここである問題が生じることが分かってきています。実は、アスピリン喘息の患者は、COXの働きを阻害し、アラキドン酸→プロスタグランジンへの合成が抑制されてしまうと、今度はアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる成分を大量に合成してしまうと考えられているのです。
このロイコトリエンは炎症の原因になる化学物質として知られているのもで、強い気管支の収縮作用があります。つまり、アスピリン喘息の患者は、ロキソニンなどの鎮痛剤を服用すると、このロイコトリエンによって気管支の収縮が促され、呼吸が出来なくなって発作が起きてしまうのです。これがアスピリン喘息のメカニズムになります。
そして、現在薬局等で手に入るロキソニン、バファリン、ボルタレン、アスピリン(アスピリンは鎮痛剤の中でももっとも歴史のある薬です)などの鎮痛剤は、そのほとんどがこのCOXの阻害によって鎮痛作用を発揮します。つまり、アスピリン喘息の患者はほとんどの鎮痛剤によって発作が引き起こされてしまうのです。
しかし、鎮痛剤の中にはこのアスピリン喘息の患者でも比較的安全に使えるものがあり、その1つが今回ご紹介する、セレコキシブと呼ばれる成分を主成分としたセレコックスと呼ばれる鎮痛剤になります。ではなぜアスピリン喘息の患者はセレコキシブを摂取しても大丈夫なのか、そのメカニズムについて説明したいと思います。
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セレコックスがアスピリン喘息を誘発しづらいのはなぜ?セレコキシブの持つ優れた作用とは?…

セレコキシブと呼ばれる成分を有効成分とするセレコックスは、アステラス製薬により製造販売されている鎮痛剤の1つです。実はこのセレコキシブと、ロキソニンに含まれる有効成分ロキソプロフェンは、その作用メカニズムについて違うのは主にたった1つだけです。しかし、その1つの違いによってアスピリン喘息の患者でも比較的安全にセレコキシブを摂取できるようになったのです。
実は、セレコキシブも、体内に取り入れるとCOXの働きを阻害し始めます。先ほどアスピリン喘息の患者はCOXの働きを阻害すると発作が誘発されると言いましたが、これではセレコキシブも発作の原因となってしまいますよね。
しかし、実はこのCOXはさらに細かく分類すると、COXには主にCOX1とCOX2という2つがあり、このうちアスピリン喘息の発作の原因となるのはCOX1の阻害であると考えられています。しかし、セレコキシブはこの2つのうち、COX2を選択的に阻害する作用があるため、アスピリン喘息を誘発しづらい成分であると考えられているのです。(COX1の阻害も0ではないが、COX2の阻害の方がはるかに大きい。)
ちなみに、COX2を選択的に阻害するセレコキシブに対して、その他のロキソニンなどの解熱鎮痛剤の成分はどうなのかと言いますと、ロキソニンやバファリンなど、アスピリン喘息を誘発する鎮痛剤はこのCOX1とCOX2の両方を阻害してしまうと考えられています。
また、COX1の阻害はアスピリン喘息を誘発するだけではなく、消化管への副作用を示すことも知られており、もともとセレコキシブはこの消化管への副作用を抑えるために研究開発された成分になります。つまり消化管への副作用を少なくするために生まれたセレコキシブが、結果的にアスピリン喘息の患者も救うという形になったようですね
COX2を選択的に阻害する成分としては、セレコキシブの他にエドトラク、メロキシカムなどの成分があります。
そして、セレコキシブを主成分とするお薬にはセレコックス、エドトラクを主成分とするお薬にはオステラック、ハイペンなどがあり、メロキシカムを主成分とするお薬にはモービックなどが現在販売されています。これらもアスピリン喘息の症状を誘発しづらい鎮痛剤です。もしアスピリン喘息の患者で解熱鎮痛剤が必要になった場合には、これらのお薬を使用するよう検討してみてはいかがでしょうか?
まとめ
今回の記事では、アスピリン喘息のメカニズムや、この病気の患者でも比較的安全に使うことが出来るセレコキシブを主成分とするセレコックスに関する情報などをまとめました。
セレコキシブはCOX2をより選択的に阻害するため、この病気の患者でも比較的安全に使用できるといわれてはいますが、もし使用してみて異変を感じた場合は使用を避けるようにしましょう。
セレコキシブを主成分とするセレコックスは、従来のアスピリンやロキソニンなどの鎮痛剤に対して、COX2を選択的に阻害できるようになったという点においては非常に革新的な鎮痛剤です。こうした医薬品の研究をしている化学者の方は本当にすごいですし、とてもありがたいですね。
それでは今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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