アスピリン喘息の患者は歯科治療で麻酔を受けても大丈夫なのか?

アスピリン喘息の患者は、歯科治療を受ける場合麻酔を打たれても問題ないのか心配になるのではないかと思います。

この疾患では、ロキソニンやボルタレンなど多くの解熱鎮痛剤が発作の原因となるため、同じく痛みを抑える麻酔薬もこの症状を誘発してしまうのではないか気になりますよね。

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結論から言いますと、歯科治療に用いられる麻酔薬の中には、この疾患の患者に投与してしまうと危険なものもあります。

しかし、歯科治療に用いられる麻酔薬の麻酔成分自体にはこの疾患を誘発する作用はありません。これはどういうことでしょうか?

今回の記事では、歯科治療に用いられる麻酔薬に関する情報や、アスピリン喘息に関する情報をまとめていきたいと思います。

目次

歯科治療に用いられる麻酔薬はアスピリン喘息を誘発するのか?

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まず、歯科治療において、どのような場合に麻酔を使用するのか明確な基準はありません。治療の際に症状がひどく、痛みを伴うと判断された場合は麻酔が用いられますし、患者側から麻酔の要望があれば麻酔が使用されます。

歯科治療における麻酔では、基本的にまずは歯茎表面に麻酔薬をぬり、次に行う注射による麻酔の痛みを軽減させる準備をします。そして表面麻酔が効いたのちに注射によって歯茎に麻酔薬を投与して、歯の周りの神経を麻痺させたのちに歯科治療が行われます。歯茎に塗る麻酔を表面麻酔と呼ぶのに対して、歯茎への注射による歯周辺の神経の麻酔は浸潤麻酔と呼ばれます。

しかし下あごの場合、特に下あごの奥歯では上記のような浸潤麻酔では麻酔がしっかりと効かないことがあるため、この場合は歯の奥の方にある歯全体に関わる大きな神経を麻酔薬によって麻痺させることで痛みを抑えるそうです。この麻酔は伝達麻酔と呼ばれます。

歯科治療において用いられる麻酔薬としては、キシロカインと呼ばれるお薬などが良く用いられるそうです。キシロカインは商品名であり、実際はキシロカインの主要成分であるリドカインと呼ばれる成分が麻酔成分として作用します。

キシロカインを例にとると、アスピリン喘息の患者にとって、この薬の主要成分であるリドカインという成分自体には基本的にアスピリン喘息を誘発する作用はありません。しかし、キシロカインというお薬全体でみると、この薬にはアスピリン喘息を誘発してしまう可能性があります。これは、キシロカインに含まれているパラベンと呼ばれる成分によるものです。

このパラベンとはパラオキシ安息香酸エステルと呼ばれるものの総称で、食品や化粧品、医薬品などに含まれており、細菌などによる侵食を防ぎ、品質を長持ちさせる防腐剤としての役割があります。エステル部分の置換基の種類によってその名称は異なります。

このパラベンによるトラブルは、アスピリン喘息だけでなくこの成分によるアレルギー反応も以前からよく報告されていたそうで、現在は局所麻酔薬でパラベンを含んでいるものはほとんどないそうです。しかし、中にはまだアスピリン喘息を含んでいるものもあるかもしれませんので、歯科治療をうける際には、医師にアスピリン喘息であるということをしっかりと伝え、麻酔薬にはパラベンを含んでいないものを使用してもらうようにしましょう。

先ほど書いたように、歯科治療においてこのパラベンによる問題は数多く報告されていたそうなので、現在歯科医師もパラベンにおけるそういったトラブルへの認識を持っている方も多いと思います。しかし、アスピリン喘息は歯科医師の専門ではないですし、その症状に対して詳しくないという方が居ても全くおかしくはありません。もし、アスピリン喘息の患者で歯科治療を受けたい場合は、アスピリン喘息に理解のある歯科病院を選ぶようにしましょう。

麻酔の話からはそれますが、親知らずなどの抜歯をした後は痛みどめとして解熱鎮痛剤を処方されるのですがアスピリン喘息の患者はもちろんこの解熱鎮痛剤は飲んではいけません。以前、アスピリン喘息に対して知識がなかった歯科医師がこの疾患の患者に解熱鎮痛剤を処方し、患者を死亡させてしまうという事故もあったそうなので、この疾患の患者は抜歯後のケアも気を付けるようにしましょう。

以上が歯科治療における麻酔薬がアスピリン喘息にもたらす危険性に関するお話ですが、このパラベンのように、アスピリン喘息は解熱鎮痛剤の成分のみがこの疾患の原因となってしまうわけではありません。それでは改めてアスピリン喘息がどういった疾患であるか、詳しく説明していきたいと思います。

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アスピリン喘息とは?

アスピリン喘息とは、基本的には解熱鎮痛剤の成分によって発作などの症状が誘発されてしまう疾患です。現在成人気管支喘息患者の薬10%ほどがこの症状を患っていると考えられており、逆に子供の患者はほとんどいないため、後天的に発症する疾患であると考えられています。特に成人を迎えてから気管支喘息を発症した方は解熱鎮痛剤に過敏に反応してしまう傾向があるそうです。

この疾患の患者の特徴として、解熱鎮痛剤に過敏に反応してしまうということ以外に、好酸球性の副鼻腔炎と呼ばれる症状を患っている場合が多いという特徴があります。この好酸球性の副鼻腔炎とは、鼻の粘膜が腫れて鼻づまりの症状が起こり、嗅覚低下などの症状が現れるのが主な症状で、鼻の粘膜で好酸球と呼ばれる白血球の一種の増加が見られます。また、鼻の粘膜が腫れ、ポリープになったものは鼻茸と呼ばれます。

もし気管支喘息の患者で、好酸球性の副鼻腔炎を患った場合、高い確率で解熱鎮痛剤の成分に過敏に反応してしまうと考えられるため、このような症状がある方は解熱鎮痛剤の使用の際は十分に注意し、もし使用して息苦しさが出るようなら使用は控えるようにしましょう。

また、この疾患の患者は、解熱鎮痛剤の成分以外にも過敏に反応してしまう恐れがあります。この疾患の患者が過敏に反応してしまうものとしては、最初に述べたパラベンや、着色料として用いられるタートラジン、またコハク酸エステル構造などがあります。

このコハク酸エステル構造は、一部の静脈注射用のお薬の成分などに見られる構造であり、アスピリン喘息の患者に投与してしまうと症状を誘発してしまうと考えられています。アスピリン喘息の患者が注意しなければならないのは、気管支喘息の発作を鎮めるステロイド薬の中にもコハク酸エステル構造を持っているのものがあり、これが誤ってアスピリン喘息の発作時に投与されてしまうとさらに症状を悪化させてしまう恐れがあるということです。そのため、もしアスピリン喘息の患者で、何らかの原因でひどい発作が現れてしまった場合は、自分がアスピリン喘息であるということ、またコハク酸エステル型ステロイド以外のものを使用してもらうように頼みましょう。

専門の医師であればアスピリン喘息と分かればコハク酸エステル型ステロイドを投与するということはないでしょうが、万が一の医療ミスを防ぐためにも、患者自身がこういった知識を持っておくことは非常に重要ですので、もし知らなかった場合は覚えておくようにしましょう。

また、この疾患の患者はサリチル酸化合物と呼ばれるものにも反応しやすいということがいわれています。サリチル酸化合物は特定の果物や野菜、香辛料などに含まれているそうなので、もしこの疾患の患者で何かを食べた後に息苦しさを感じ、それがサリチル酸化合物を多く含むものであった場合はアスピリン喘息の症状が誘発されたものと考えられます。

この疾患の名前に含まれているアスピリンも、アスピリンは商標名であり、実際有効成分はアセチルサリチル酸と呼ばれるサリチル酸の仲間なので、このように似た構造を持つサリチル酸化合物が体内で何らかの似た作用を示しているため症状が誘発されてしまうものと考えられます。

まとめ

今回の記事では、アスピリン喘息の患者は歯科治療において用いられる麻酔によって症状が誘発されてしまうのかどうか、またこの疾患の様々な特徴などについてまとめました。

歯科治療においては麻酔だけではなく、抜歯後のケアなど治療全体を通じてこの疾患への配慮がされる必要があります。この疾患の患者が歯科治療を受ける場合には、この疾患に対して理解のある歯科医師のもとで治療を受けることをお勧めいたします。

また、今回の記事でお伝えしたような、この疾患の患者が気を付けなければならないことは、今後是非覚えておいてください。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)

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