アスピリン喘息とは、解熱鎮痛剤を服用すると、ほどなくして鼻水、鼻づまりの症状や、発作などの症状が誘発されてしまう疾患です。この「アスピリン」とは、数ある解熱鎮痛剤のお薬の中でも非常に歴史が古いものになります。
この症状は大人の喘息患者の約10%ほどにみられるといわれており、小児の患者にはほとんどみられないことから、後天的に発症する疾患であると考えられています。
また、この症状はアスピリン喘息と呼ばれていますが、アスピリンの有効成分以外にも、ロキソプロフェンや、イブプロフェンなど、解熱鎮痛剤に含まれているほとんどの成分によって引き起こされてしまうため、この疾患の患者は基本的にほとんどの解熱鎮痛剤の服用が禁忌といわれています。
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風邪などをひいて熱や喉の痛みなどの症状が出てしまったとき、解熱鎮痛剤などを服用する方はたくさんいると思いますが、人によっては漢方の薬を飲まれる方もいるかと思います。漢方の薬は今では風邪薬などとともに薬局で簡単に手に入りますよね。
では、そのアスピリン喘息の患者は、漢方の薬を服用することは大丈夫なのでしょうか。今回の記事で詳しく書いていきたいと思います(^^)
目次
漢方とは?

漢方とは、奈良時代に日本へと伝わった中国医学が、日本人の体質や風土などに合わせて、日本独自の発展を遂げたものを言います。また、鑑真という人物が日本に薬草の知識を伝えたといわれています。
漢方において使われる薬は、生薬といわれる自然由来の資源のみを組み合わせて作られています。現在生薬と言えば主に草の根や葉、樹皮などが使われることがほとんどですが、以前は動物や鉱物由来のものも使われていたそうです。
漢方はその長い歴史の中で、戦争が多かった明治時代などは消えかかってしまったこともありました。しかし、昭和に入り、戦争が終結してから再び広がり始め、昭和40年ごろから病院や薬局などでも広く用いられるようになったといわれています。
漢方では、病気のもととなる体のバランスの悪さを整えるというのが基本的な考えです。つまり、頭痛やめまいなどの症状が表れた場合、その原因となる、ホルモンバランスの乱れや、血液の流れの悪さなどを改善し、からだのバランスを整えることによって、それらの症状を改善しよう、というのが漢方医学の考え方です。そして、そのバランスを整えるために服用するのが漢方の薬です。このように、漢方の薬は様々な症状の改善に働きます。
また、漢方の考え方では、患者の症状の程度や、個人個人の体質などを診断の際に重要視します。そのため、同じ病気であっても異なる組み合わせの漢方の薬が処方される場合があります。病気そのものを治すのではなく、いかにしてその患者の体のバランスを整えるのかを第一として考えるのです。
漢方の薬には、その生薬の組み合わせなどによって、非常に多くの種類があるのですが、中でも葛根湯は有名ですね。風邪のひきはじめにのむ薬として薬局でもよく見かけますし、実際に飲んだことがあるという方も多いのではないでしょうか?
アスピリン喘息とは?

それでは、次にアスピリン喘息について説明していきたいと思います。
アスピリン喘息とは、解熱鎮痛剤を服用すると、鼻水、鼻づまりの症状や、発作などの症状が誘発されてしまう疾患です。この症状は重症化しやすいといわれているため、症状が現れた場合は悪化する前に対処する必要があります。もし重症化してしまうと、呼吸困難、意識障害などの症状に陥り、最悪の場合命を落としてしまう場合もあるといいます。
アスピリン喘息に限った話ではありませんが、現在も、喘息によって年間約2000人ほどの人が命を落としているといわれています。もし解熱鎮痛剤の服用によって発作が出てしまった場合、まずは発作治療用の吸入薬などがある場合はそれを用いて症状改善を図り、その後すぐに医師にみてもらうようにしましょう。
また、この症状は服用薬だけではなく、解熱鎮痛剤の成分が含まれた座薬や湿布薬などによっても引き起こされる場合があるといわれていますので、これらの薬を使用する際にも十分注意してください。
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アスピリン喘息のメカニズムとは?

それでは、どうしてアスピリン喘息の患者は、解熱鎮痛剤を服用すると発作などの症状が表れてしまうのでしょうか、そのメカニズムについて説明したいと思います。
まず、私たちが解熱鎮痛剤を使用するとき、つまり体のどこかに痛みが生じているとき、その患部では、プロスタグランジンと呼ばれる成分によって炎症が引き起こされています。
このプロスタグランジンは私たちの体内で産生されるのですが、解熱鎮痛剤の成分は、このプロスタグランジンの生成を抑えることによって、患部の炎症を鎮め、痛みを抑えてくれるのです。
具体的には、このプロスタグランジンは私たちの体内においてアラキドン酸と呼ばれる成分から合成されるのですが、この際シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素がこの合成を促します。
そして、私たちがよく知るロキソニンやバファリンなどの解熱鎮痛剤のほとんどは、この酵素シクロオキシゲナーゼの働きを阻害することによって、結果アラキドン酸からプロスタグランジンが合成されるのを防ぐことが出来るのです。ここまでが解熱鎮痛剤の成分に期待される通常の作用になります。
しかし、アスピリン喘息の患者では、このアラキドン酸からプロスタグランジンへの合成が抑制されてしまうと、今度は余ったアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる成分を大量に作りだしてしまうと考えられています。
このロイコトリエンとは、花粉症などのアレルギー反応が起きた際、ヒスタミンなどとともに肥満細胞から分泌される、アレルギー症状を引き起こす原因物質であり、気道の収縮などを誘発します。
そのため、このアスピリン喘息の患者は、解熱鎮痛剤を服用すると、結果アレルギー反応のような症状が表れ、発作などの症状が誘発されてしまうのです。以上がアスピリン喘息のメカニズムになります。
ちなみに、この症状では結果的にアレルギーと同じような症状が表れていますが、解熱鎮痛剤の成分に対してアレルギー反応が起きているわけではありません。
私たちがよく知るアレルギー反応は、その原因となる物質が体内に侵入した際、肥満細胞の表面に付着しているIgE抗体と呼ばれる抗体が、その物質に結合することによって引き起こされ、その抗原とIgE抗体が結合したという信号が肥満細胞に伝わることで、結果肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどが分泌されて、鼻水や咳の症状などが表れます。
残念ながら、アスピリン喘息の症状は体質的な問題であるため、いまのところ根本的な治療法はありません。しかし、ロイコトリエンが原因となって起こる症状ですので、ロイコトリエン受容体に結合して、ロイコトリエンによる信号が全身に伝わるのを防ぐロイコトリエン受容体拮抗薬は症状緩和に有効であるとも言われています。
しかし、これはやむなく解熱鎮痛剤を使用しなければならないときの話であると思われ、この疾患の患者にとって一番望ましいのは解熱鎮痛剤を使用しないことですので、なるべく使用は避けるようにしましょう。
アスピリン喘息の患者は漢方薬を服用しても大丈夫なのか?

それでは、このように解熱鎮痛剤の成分に対して過敏である体質の方は、漢方の薬を服用しても大丈夫なのでしょうか。
漢方の薬は、その組み合わせなどによって非常に様々な種類が存在するため、漢方の薬のメカニズムはこれ、というようなものはありません。
しかし、調べてみたところ、基本的にはアスピリン喘息の患者でも漢方の薬は服用しても大丈夫なようです。その作用においては、シクロオキシゲナーゼ阻害は関係ないようですね。
しかし、市販で売られている漢方の薬の中には解熱鎮痛剤の成分を含んだものもあるそうなので、もし漢方の薬を買う場合は、間違ってこういったものを選んでしまうことが無いように注意しましょう。
まとめ

今回の記事では、アスピリン喘息と漢方に関する情報などについて詳しくまとめました。
解熱鎮痛剤の成分を含まない純粋な漢方の薬であれば、アスピリン喘息の患者でも服用は可能のようです。
もし風邪などをひいてしまった場合は、解熱鎮痛剤は服用せず、漢方の薬によって症状改善を図るのが良いようですね。
しかし、一番はやはり常に健康に気を付けて生活を送ることです。生活の乱れによって体が疲れると風邪をひいていなくても喘息の症状は出やすくなりますので、毎日規則正しい生活が送れるように心がけましょう。
また、今回の記事ではお伝えしていない、気管支喘息、およびアスピリン喘息に関する情報は以下の記事で詳しくまとめておりますので、是非一度ご覧になってみてください。
それでは今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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