気管支喘息は、現在国内に約400万人以上の患者がいると言われており、決して珍しい病気ではありません。また、近年でも気管支喘息によって亡くなる方は年間約2000人ほどいるといわれており、私たちはこの病を決して軽視してはいけません。
気管支喘息の主な原因は、気管支に慢性的に生じている炎症です。この疾患の患者は、慢性的に生じている炎症によって気管支が常に過敏になっており、健康な方に比べて狭くなっています。
そして、たばこの煙や、ダニや花粉によるアレルギー反応などによって、この過敏になった気管支が刺激を受けてしまうと、気管支がさらに収縮して発作が現れてしまうのです。
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発作の症状が現れてしまった場合は、経口ステロイドなどを用いることによって症状を抑えることができます。経口ステロイドには強い抗炎症作用があるため、気道の炎症を抑えることによって発作を鎮めることができるのです。経口ステロイドは気管支喘息だけではなく、花粉症などの治療などにもよく用いられます。
ダニ、花粉、カビ、運動、お酒など、どのようなものが発作の引き金となってしまうかは人によって様々ですが、一部の気管支喘息の患者は解熱鎮痛剤の成分によって発作が引き起こされる場合があります。この症状はアスピリン喘息と呼ばれており、現在成人気管支喘息患者の約10%ほどに見られるといわれています。
アスピリン喘息の発作は通常の気管支喘息の発作に比べて重症化しやすいといわれているため、症状が現れてしまった場合はひどくなる前に対処しなければなりません。アスピリン喘息の対処にも、先ほど述べた経口ステロイドが有効なのですが、同じステロイドであっても逆に症状を悪化させてしまうものもあります。そのステロイドとは、経口摂取ではなく注射によって投与するタイプのものなのですが、なぜ同じステロイドなのにこのような違いが生じてしまうのでしょうか。
今回の記事では、アスピリン喘息の概要や、ステロイドに関する情報などについてまとめていきたいとおもいます。
目次
ステロイドとは?

ステロイドとは、体内の副腎と呼ばれる場所で生成されるホルモンを人工的に合成したものになります。吸入タイプのもの、経口摂取タイプのもの、注射によって投与するものなどさまざまなタイプのものがあります。
気管支喘息の治療の基本は、吸入ステロイドなどのお薬を継続して使い、気管支の炎症を抑え、発作を起こさないようにすることです。吸入ステロイドは気管支に直接的届くことから、一回の使用が少量で済むため、副作用についてそれほど心配する必要はありません。しかし、使用後は感染症などを防ぐために必ずうがいをして、口内に残った余分な薬を洗い流すようにしてください。
もし吸入ステロイドでは対応できないほどの発作が現れてしまった場合は、経口ステロイドを服用する必要があります。しかし、経口ステロイドには即効性はなく作用するまでに約2時間ほどかかるため、実際は即効性のある短時間作用性β2刺激薬と呼ばれるものを一緒に用いるのが効果的です。この短時間作用性β2刺激薬は気管支を広げる効果のあるお薬であり、これだけでは炎症までは完全に抑えられません。そのため、まずは即効性の短時間作用性β2刺激薬で気管支を拡張させ、経口ステロイドによって徐々に炎症を抑えるというのが発作時の対応の基本となります。
経口ステロイドにはプレドニゾロンやヒドロコルチゾンなどがあります。この経口ステロイドは、強い抗炎症作用がある優れたお薬ではありますが、長期にわたり継続して使用すると副作用が起こる場合があります。
まず、経口ステロイドの副作用として挙げられるのは、経口ステロイドを使用すると免疫力が低下してしまうため、細菌などが感染しやすくなるということです。そのため、経口ステロイドを使用する場合は、感染症の予防を徹底して行うようにしましょう。
また、経口ステロイドを継続して使用すると、副腎における自然なホルモンの製造がしづらくなります。そのため、急に内服をやめてしまうと、ホルモンバランスが乱れ、頭痛や吐き気などの症状が現れることがあるようです。自己判断での経口ステロイドの使用の中止はさけましょう。
他には経口ステロイドの副作用として白内障や骨粗しょう症などがあるようですが、これらは経口ステロイドを数年にわたって飲み続けると副作用として現れるそうなので、発作を抑えるために数日から数週間程度の服用する場合は、それほど副作用について心配する必要はないと思われます。それよりも、経口ステロイドの副作用を心配して服用をやめてしまい、治療を長引かせてしまうことの方が問題ですので、治療の際には医師にいわれたことをしっかりと守るようにしましょう。
しかし、発作が起きてしまったとき、人によっては経口ステロイドなどのお薬が手元にない方も当然いるかと思います。そうなってしまった場合はなるべく早く病院へ行き治療を受ける必要がありますが、ひどい症状の場合は静脈注射によってステロイドを投与される場合もあります。
静脈注射では素早く全身にステロイドを作用させることが出来るため、吸入薬などと比べるとより気道の炎症の改善が見込めますが、この静脈注射によるステロイドの投与は人によってはさらに発作を悪化させてしまう恐れがあります。それがどうしてなのか説明するために、アスピリン喘息と呼ばれる疾患について説明したいと思います。
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アスピリン喘息とは?
アスピリン喘息とは、解熱鎮痛剤の成分によって発作などの症状が誘発されてしまう疾患です。現在大人の気管支喘息患者の約10%ほどがこの症状を患っていると考えられており、3:2の割合で女性に多いといわれています。また、小児の患者はほとんどいないことから、後天的に発症する疾患であると考えられています。
この疾患はアスピリン喘息と呼ばれていますが、実際にはアスピリン以外のほとんどの解熱鎮痛剤の成分によっても症状が引き起こされます。そのため、この疾患の患者は薬局においてある解熱鎮痛剤はほとんどのものは使用が禁忌であるといわれています。
また、この疾患の患者は、鼻茸を伴う副鼻腔炎症状を併発している場合が多いといわれています。副鼻腔炎とは、鼻の粘膜に細菌が感染して、粘膜が腫れあがり、嗅覚障害など現れてしまう病気です。ここに膿がたまり、ポリープになったものを鼻茸と呼びます。気管支喘息の患者で、鼻づまりの症状や、嗅覚低下などの症状がある場合は、解熱鎮痛剤に過敏に反応してしまう恐れがあるため、病院で副鼻腔炎の検査を受けてみましょう。
また、アスピリン喘息の症状は、実は解熱鎮痛剤の成分以外のものによっても引き起こされる場合があります。その例として、着色料として用いられるタートラジン、防腐剤として用いられるパラベンや安息香酸ナトリウム、そして保存料、酸化防止剤として用いられるサルファイト(亜硫酸塩)などが挙げられます。この疾患の患者はこうした保存料を多く含む食品は避けた方が良いでしょう。
その他には、サリチル酸化合物を多く含むミント、香辛料、特定の野菜や果物もこの疾患を引き起こす原因となる場合があります。特に野菜では、ピクルスに加工されるガーキン、果物ではラズベリーがサリチル酸化合物を多く含んでいるそうなので、気管支喘息の患者で、これらを摂取した後に息苦しさを感じた場合はアスピリン喘息の疑いがあります。
また、この疾患の患者は、本来喘息の症状を改善させるはずのステロイドが症状を悪化させる原因になってしまう場合があります。これに該当するのは、病院で投与される場合がある静脈注射用のステロイドです。
実は静注用のステロイドは、その水溶性を高めるために、構造の一部がコハク酸エステルと呼ばれる構造になっているのですが、この疾患の患者は、このコハク酸エステル構造に過敏に反応してしまうと考えられています。このように、安全性や水溶性を高めるために構造が変化させられている医薬品はプロドラッグと呼ばれており、ステロイドのようにコハク酸エステル構造を持つ医薬品はほかにもありますので、この疾患の患者は医薬品を使用する場合その成分の構造にも注意する必要があります。
まとめ
今回の記事では、アスピリン喘息の概要や、経口ステロイドに関する情報などをまとめました。
普段から発作などが起こることがあるという方は、経口ステロイドなどの薬を常備しておくことが大切です。経口ステロイドは長期にわたると副作用が現れる場合がありますが、症状を安定させるために数週間使う程度であればそれほど心配はないようです。
現在アスピリン喘息ではないという方も、この症状は後天的に発症するため今後もしかしたら発症してしまうかもしれません。是非この記事きっかけにして、この疾患の特徴などについて覚えておいてくださいね。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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