風邪をひいてしまったとき、その症状改善のために葛根湯を飲まれるという方は少なくないと思います。葛根湯は漢方を代表する非常に有名な薬であり、風邪の初期症状には葛根湯が良く効くということも耳にしますね。特に、風邪などの感染症が流行する乾燥する時期に薬局に行くと、この葛根湯が入ってすぐの場所においてあったりします。
このように、現在も非常に多くの方が服用する葛根湯ですが、実はこの葛根湯は時に気管支喘息を悪化させる原因になる可能性があります。これはいったいどうしてでしょうか?
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この気管支喘息とは、気管支に慢性的に炎症が生じてしまう病気であり、様々な原因によって、発作などの症状が引き起こされてしまう疾患です。これと似たような名前で、咳喘息という名前も聞いたことがあるかもしれませんが、咳喘息とは気管支喘息の中で症状が軽いものを指し、この時点では発作などの症状が起きることはありませんが、その名の通り、長引く空咳の症状が1つの特徴であるといわれています。
それでは、なぜ薬局等に販売されている葛根湯は、時に喘息の原因となってしまう可能性があるのでしょうか。葛根湯に関する情報も含めて、詳しくまとめていきたいと思います。
目次
葛根湯とは?

まず、この葛根湯とはどのようなものであるのか説明していきたいと思います。
葛根湯とは東洋医学に基づく漢方薬の一種で、葛根(かっこん)、麻黄(まおう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)という7つの生薬を組み合わせて作られたお薬です。そのうちの1つである葛根の名前をとって葛根湯と呼ばれています。ちなみにこの写真の綺麗な花は、葛根湯の成分の1つである芍薬の花です。
また、葛根湯に含まれている7つの成分のうち、甘草も有名ですね。この甘草はよく市販薬の咳止め薬にも含まれていたりします。カンゾウエキスという言葉をCM等で耳にしたりすることがあるのではないかと思いますが、それがこの甘草です。甘草は痰を排出しやすくする効果があるといわれています。
この、葛根湯に含まれている7つの成分に代表される生薬とは、自然由来の材料のことであり、葛根湯だけではなく、現在漢方の薬に使われている生薬は、ほとんどが草の根や葉、樹皮など植物由来のものです。しかし、以前は動物や鉱物由来のものも多く使われていたそうで、現在使われている鉱物由来の生薬としては、石膏(せっこう)などが挙げられます。
具体的に、この葛根湯はどのような症状に効くとされているのかと言いますと、葛根湯は風邪のひき始めなどの症状に加えて、頭痛、肩こり、筋肉痛などの緩和に効くといわれています。発汗作用を促し、熱や痛みを取り除く効果があるそうです。
そして、具体的に葛根湯に含まれている生薬にはそれぞれどのような効果が期待されるのかと言いますと、これらの生薬はそれぞれ、解熱作用(葛根)、気管支の拡張(麻黄)、発汗や発散(桂皮)、痛みや痙攣の緩和(芍薬)、抗炎症、鎮痛、解毒(甘草)、体温上昇、利尿作用(大棗)、発汗、新陳代謝機能の上昇(生姜)などが代表的な効能として挙げられるそうです。
葛根湯のように、たくさんの効能を示す生薬を組み合わせて作られた漢方薬は、病気を治すという視点よりも、病気によって崩れた体のバランスを整えるという視点で用いられるお薬であるといわれています。そのため漢方の薬は、専門の医師に相談すると、同じ病気であっても人によって処方されるものが異なる場合があるそうです。
生薬の組み合わせによって、漢方の薬には葛根湯以外にもさまざまなものが存在しています。しかし、その中でも特に咳の症状にお勧めの漢方に関する情報を、こちらの記事でまとめていますので、よろしかったらご参考にしてみてください。
さて、それでは本題に入っていきたいのですが、実は今回説明している葛根湯は、時に喘息を悪化させてしまう可能性があります。しかし、実は葛根湯に含まれている生薬自体には喘息を悪化させる作用はありません。
これはどういうことかと言いますと、実は葛根湯として販売されているものの中には、解熱鎮痛剤の成分が含まれていることがあります。解熱鎮痛剤とは、痛みや熱の症状を抑えるのに効く成分のことであり、有名なものですと、頭痛や生理痛を抑えるのによく用いられるロキソニンやバファリンなどもこの解熱鎮痛剤の一種です。そのため、このロキソニンやバファリンも、時に喘息の症状を悪化させることがあり、このような症状はアスピリン喘息と呼ばれています。
では、このアスピリン喘息とはいったい何なのか、詳しく説明していきたいと思います。
アスピリン喘息とは?
皆さんはアスピリン喘息という病気をご存知でしょうか?もし知らないという方は、是非今回覚えてください。
このアスピリン喘息とは、大人の喘息患者の約10%ほどに見られるといわれる症状であり、この病気の患者は、先ほども申しましたように、ロキソニンやバファリンなどの痛みどめを服用すると、ほどなくして鼻水、鼻づまりの症状に加えて、重度の発作が引き起こされてしまうことがあるといわれています。
この病気は子供の喘息患者で診られることはほとんどないため、何らかの原因によって後天的に発症する病気であると考えられています。このように、なぜ解熱鎮痛剤の成分に対して過敏な体質になってしまうのか、詳しいことは未だにわかっていない部分もあります。
この病気は特に大人になってから気管支喘息を発症した方に多い病気であるといわれています。実は近年、大人になってから気管支喘息を発症してしまう方は増加傾向にあるといわれており、現在気管支喘息ではないという方も、決して無関係な病気ではありません。
気管支喘息は、主に感染症を患ったり、出産などを機に発症してしまうケースがあるといわれています。特に、感染症の場合は、熱が引いたのに、いつまでたっても息苦しさや空咳の症状が治まらないので、医師に相談したところ、気管支喘息と診断されるケースが多いといわれています。もしこのようにして大人になってから喘息を発症した場合は、これと同時に解熱鎮痛剤に対して過敏な体質になっていることも考えられますから、もしもの時のために覚えておくことは非常に大切です。
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アスピリン喘息のメカニズムとは?
それでは、なぜアスピリン喘息の患者は、解熱鎮痛剤の成分を摂取すると発作の症状が引き起こされてしまうのでしょうか?実はこの病気は、解熱鎮痛剤の成分が熱を抑えたり、痛みを抑える際のメカニズムが関係して引き起こされます。これについて詳しく説明していきたいと思います。
まず、私たちが、熱を出したり、体のどこかに痛みが生じていて、解熱鎮痛剤を使用したいという時、その体の内部では、プロスタグランジンと呼ばれる成分が生成されています。
このプロスタグランジンは、体温調節枢に作用して体の体温をあげたり、痛みの原因となる炎症を生じさせる作用のある化学物質です。ロキソニンやバファリンなどに含まれている解熱鎮痛剤の成分は、このプロスタグランジンの生成を抑えることによってその効果を発揮します。
更に具体的に説明しますと、この、熱や痛みの原因となるプロスタグランジンは、アラキドン酸と呼ばれる成分を材料にして合成されるのですが、このアラキドン酸からプロスタグランジンへの合成の際、この合成を、シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素が助けます。解熱鎮痛剤の成分は、この、酵素シクロオキシゲナーゼの働きを阻害することによって、アラキドン酸からプロスタグランジンへの合成の流れを止めることが出来るのです。これが、ロキソニンなどのお薬に期待される通常の作用になります。
しかし、気管支喘息の一部の患者では、解熱鎮痛剤を使用して、このようにアラキドン酸からプロスタグランジンへの流れが抑制されてしまうと、なぜかアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる成分が大量に合成されてしまうといわれています。このロイコトリエンは、気管支を収縮させる作用のある成分として知られています。
つまりまとめますと、アスピリン喘息の患者は、解熱鎮痛剤を服用すると、気管支を収縮させるロイコトリエンを大量に生成してしまうため、この成分の働きによって気管支が収縮して呼吸が困難になり、発作の症状が表れてしまうのです。
ロイコトリエンはプロスタグランジンと同じくアラキドン酸を材料として生成されるということは知られているのですが、なぜこの疾患の患者でだけこのような急激な反応が起きてしまうのか、詳しいことは未だによくわかっていません。
また、このアスピリン喘息の原因となる解熱鎮痛剤は、ロキソニンなどの痛みどめだけではなく、葛根湯や、市販の風邪薬にも一緒に入っていることがあるといわれています。そのため、もし大人になってから喘息を発症してしまったという方は。是非これらの薬を選ぶときは気を付けてください。
また、このアスピリン喘息、及び気管支喘息に関するさらに詳しい情報や注意点は、以下の記事でもまとめていますので、是非気になりましたらご覧になってみてください。
解熱鎮痛剤だけじゃない?…アスピリン喘息の患者が気を付けるべきこととは?
まとめ
今回の記事では、葛根湯の概要や、アスピリン喘息の概要、そして、喘息患者が葛根湯などの風邪薬を選ぶ際の注意点に関する情報についてまとめました。
ほとんどの葛根湯ではこのようなことはありませんが、念のため葛根湯を購入する際は、その葛根湯に解熱鎮痛剤の成分が含まれていないか確認をするようにしましょう。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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