アスピリン喘息とは、ロキソニンやバファリンなどの解熱鎮痛剤によって苦しい発作の症状が誘発されてしまう疾患です。この症状は成人の気管支喘息患者の約10%ほどに見られるのですが、どのような診断基準によって診断されるのでしょうか?
アスピリン喘息の症状は現在、小児の患者はほとんどいないことから後天的に発症する疾患であると考えられています。特に、成人を迎えてから気管支喘息を発症したり、子供のころ患っていた症状を再発してしまった方などは解熱鎮痛剤に過敏に反応しやすいということもいわれています。いつ気管支喘息を発症してしまったのか、これもこの疾患の診断において重要な診断基準の1つです。
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そのほかに、この疾患の方は好酸球性の副鼻腔炎の症状を患っていることが多いという特徴もあります。中には好酸球性の副鼻腔炎に加えて鼻茸と呼ばれるポリープが出来ている場合もあります。これらの症状がある場合、総じて鼻水、鼻づまりの症状が現れるのがその特徴であり、鼻の粘膜において好酸球と呼ばれる白血球の一種の増加が見られます。気管支喘息の患者で好酸球性の副鼻腔炎を患っている場合は、高確率で解熱鎮痛剤の成分に過敏に反応しやすいと考えられています。この、好酸球性の副鼻腔炎の症状も、アスピリン喘息と診断するうえで重要な診断基準の1つと言えますね。
その他にもこの疾患には、アスピリン喘息と診断するうえで、その診断基準となりえる様々な特徴があります。解熱鎮痛剤に反応してしまうということだけが診断基準となるわけではありません。
今回の記事では、この疾患にはどのような特徴があるのか、その診断基準について説明し、またこの疾患の発症メカニズムについても説明したいと思います。
目次
アスピリン喘息の診断基準となりえる特徴とは?

アスピリン喘息とは、基本的には、解熱鎮痛剤の成分によって発作の症状などが誘発されてしまう疾患です。この、解熱鎮痛剤によって発作が誘発されるかどうかが、アスピリン喘息と診断するうえで最も重要な診断基準といえます。解熱鎮痛剤の多くがこの疾患の原因となりえますので、気管支喘息の患者、特に成人を迎えてから気管支喘息を発症してしまった方は、解熱鎮痛剤の使用の際には注意が必要です。
解熱鎮痛剤による発作は重症化しやすいといわれているため、もし気管支喘息の患者で、解熱鎮痛剤の使用後に息苦しさを感じたりする方は、使用をやめてください。また、使用後に息苦しさがどんどんひどくなるようであれば、酷くなる前に病院へ行き治療を受けるようにしましょう。
この疾患の診断基準となる重要な特徴として、最初に述べました通り、この疾患の患者は好酸球性の副鼻腔炎と呼ばれる症状を患っている割合が多いといわれています。副鼻腔炎の症状では、鼻づまりが起こり、嗅覚が低下してしまうのがその特徴の1つですので、気管支喘息の患者でこのような症状がある方はアスピリン喘息の疑いがあります。ポリープなどの症状がある場合、放置するとひどくなってしまう恐れがあるため、心当たりがある方は早めに耳鼻科等で診てもらうようにしましょう。
また、この疾患の患者は解熱鎮痛剤以外のものによっても発作が誘発されてしまう場合があります。解熱鎮痛剤以外で、発作を誘発してしまうものとしては、着色料として用いられるタートラジンや、防腐剤として用いられるパラベンなどが挙げられます。そのため、この疾患の患者はなるべく添加物が含まれた食品などの摂取は避けた方がいいですし、何かを食べた後に息苦しさを感じ、これらの添加物が含まれた場合はアスピリン喘息の疑いがありますので、食品添加物もこの疾患の診断基準になるということを覚えておきましょう。
また、この疾患の患者はコハク酸エステルと呼ばれる構造にも過敏に反応してしまうことも分かっています。このコハク酸エステル構造は一部の医薬品の成分に見られる構造で、水溶性を高める働きを担っています。つまり、医薬品の成分の一部をこのコハク酸エステル構造にすることによって即効性を高め、より効果的に人体に作用させることが出来るようにしているのです。
このコハク酸エステル構造を持つ医薬品の中には、気管支喘息の発作の治療に用いられる静脈注射用のステロイドもあります。発作時にこのステロイド薬を用いることによって、素早く気道の炎症を抑え、発作を抑えてくれすのです。しかしここで問題となるのは、アスピリン喘息の症状がある気管支喘息患者の発作時にこのコハク酸エステル型ステロイドを投与してしまうと、かえって症状を重症化させてしまう恐れがあるということです。
そのため、ここまで述べてきたようなアスピリン喘息の診断基準となりえる特徴に心あたりがある方は、もし注射による発作の治療を受ける場合、自分がアスピリン喘息の疑いがあるということ、そしてコハク酸エステル型ステロイド以外のものを使っていただくよう医師にきちんと伝えるようにしましょう。
このほかにもアスピリン喘息の患者はサリチル酸化合物を多く含む特定の食品も反応しやすいという特徴もあります。サリチル酸化合物は、果物ではラズベリー、野菜ではピクルスに加工されるガーキンなどに多く含まれているそうで、香辛料などにも多く含まれているそうです。
まとめますと、このようにアスピリン喘息の症状では、解熱鎮痛剤の成分によって発作が引き起こされるということ以外にも、この疾患であると診断するうえで重要な診断基準が数多くあります。そしてこの疾患であるという確定診断を得るためには、まず、患者がこれらの症状に心当たりがあるかどうか問診したあと、最終的には負荷試験によって診断するという形になります。
負荷試験とは実際にこの疾患の誘発物質となる解熱鎮痛剤の成分を医師の付き添いのもと使用し、症状が現れるかどうか確認するという内容の試験です。この負荷試験は大学病院などの大きな病院で行われているそうで、負荷試験の際には安全のため入院が必要になるそうです。
しかし、負荷試験を受けこの疾患の確定診断を受けることが出来れば、その後何らかの治療をうける際に自分がアスピリン喘息の症状があるということを医師につたえやすくなり、治療の際もその点を考慮してもらえるという利点もありますので、この疾患かどうか気になるようであれば、少し大変ですが負荷試験を受けてみるのも良いと思います。(^^)
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アスピリン喘息の発症メカニズムとは?
それでは、なぜこの疾患の患者は解熱鎮痛剤を服用すると発作が誘発されてしまうのでしょうか?そのメカニズムについて説明したいと思います。
まず、私たちが解熱鎮痛剤を使用したいとき、つまり熱や痛みなどの症状があるとき、私たちの体内ではプロスタグランジンと呼ばれる成分が合成されています。
このプロスタグランジンは、視床下部にある体温調節枢に作用して体温をあげたり、痛みの原因となる炎症を悪化させたりする作用があります。解熱鎮痛剤はこのプロスタグランジンの生成を抑えることによって、熱や痛みの症状を抑えることが出来るのです。
もう少し具体的に説明しますと、解熱鎮痛剤はプロスタグランジンを生成するうえで重要な働きをするシクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素の働きを阻害します。このシクロオキシゲナーゼは、プロスタグランジンがアラキドン酸と呼ばれる成分から合成される際、その合成を促すように働きます。つまり、解熱鎮痛剤の成分は、この酵素シクロオキシゲナーゼの働きを阻害することによって、アラキドン酸からプロスタグランジンへの流れを抑制することが出来るのです。ここまでが、解熱鎮痛剤に期待される通常の作用になります。
しかし、アスピリン喘息の症状がある患者では、解熱鎮痛剤の作用によってこのアラキドン酸からプロスタグランジンへの流れが抑制されてしまうと、今度はアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる成分の合成が始まってしまうと考えられています。このロイコトリエンには気管支を収縮させる作用があるため、この疾患の患者はこのロイコトリエンによって発作が誘発されてしまうのです。これがアスピリン喘息のメカニズムになります。
この疾患によって引き起こされる発作は、少なくとも解熱鎮痛剤が作用している間は続くと考えられますので、重症化が心配されます。もし解熱鎮痛剤を服用して息苦しさを感じた場合は、酷くなってしまう前に医師に相談するようにしましょう。
まとめ
今回の記事ではアスピリン喘息と診断するうえで重要な診断基準となる、この疾患の様々な特徴についてまとめました。
この疾患は、解熱鎮痛剤によって発作が引き起こされることだけが診断基準となるわけではありませんので、気管支喘息の患者はこの記事で紹介した様々な特徴についてよく覚えておいてください。
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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