アスピリン喘息とは、現在大人の喘息患者の約10%が患っているといわれているもので、この症状のある方はロキソニンなどの鎮痛剤を服用すると気道の収縮が起こり、発作が起きてしまうといわれています。
このアスピリン喘息は鎮痛剤を使用すると引き起こされるので、アレルギー反応のようですが、そのメカニズムはアレルギー反応とは異なります。アレルギー反応はigeと呼ばれるものが働くことによって引き起こされるのですが、アスピリン喘息は鎮痛剤のメカニズムによって引き起こされる症状なんです。
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皆さんは今述べたigeというものを御存じでしょうか?igeとはアレルゲン物質に対して働く免疫グロブリンの一種で、アレルギー反応を理解するうえで非常に重要な要素の一つです。現在、国民の4人に1人が患っているといわれる代表的なアレルギーである花粉症の症状も、このigeが大きく関係しています。他にも、何かに対してアレルギーがある方は、体内にそれに対する特異的なigeを持っていることになります。詳しくは以下の記事で説明していきます。
先ほど、アスピリン喘息とigeによるアレルギー反応は違うものですと説明しましたが、実はこの2つにはある共通点もあります。
それではいったいアスピリン喘息とigeによるアレルギー反応にはどのような共通点があるのでしょうか。今回の記事ではアスピリン喘息とigeの関係について詳しく説明していきたいと思います。
目次
igeとは?

そもそも、なぜ人はアレルギー症状を起こしてしまうのでしょうか?この鍵を握るのが、ige抗体と呼ばれるものになります。
人間は普段、体の外から体内に侵入してくる細菌、ほこり、ウイルスなどの異物に対して抗体を作り、それらを取り除いています。これを免役反応と呼びます。
ですが、時にこの免疫反応は、異物として認識しなくても良いものにまで反応してしまう場合があります。これがアレルギー症状です。
花粉症を例にとって説明します。体内に花粉が入ってくると、通常であれば花粉は異物ではないと認識され、特に免疫が働くことはありません。
しかし花粉症の症状のある方はこれを異物として排除しようとします。この際、この花粉を排除するための抗体が作られ、これを特異的ige抗体と呼びます。
ige抗体とはImmunoglobulin Eの略で、日本語で免疫グロブリンEといいます。これは、哺乳類の体内に存在する糖タンパク質で、免疫グロブリンの一種です。
このようにして特異的ige抗体ができると、この抗体は肥満細胞に付着して、アレルゲン物質、つまり花粉が来るのを待ちます。
そして、その後再び花粉が体の中に侵入し、この抗体と結合すると、その信号が伝わり、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエン等の化学物質が放出されます。
このうち、ヒスタミンはくしゃみ、鼻水、かゆみなどの原因となり、ロイトコリエンも鼻づまり等のアレルギー症状の原因となります。また、これらは気管支を収縮させる作用があるため、空咳などの症状が引き起こされることもあります。そして、喘息患者の場合はこれらによる気管支の収縮作用が発作につながる可能性もあります。
今回は花粉症を例にigeの説明をしていますが、同じくigeが関与するアレルギー反応の代表的なものとしてダニアレルギーも挙げられます。夜布団に入ると空咳がでたりしてなかなか眠ることが出来ないというような症状がある方はダニアレルギーの症状が引き起こされている可能性があります。実は、このダニアレルギーも現在4人に1人が患っているといわれており、決して珍しいものではないのです。
ダニアレルギーに関する詳しい情報はこちらの記事でまとめていますのでよろしかったらご覧になってみてください。
igeに代表される免疫グロブリンは、igeの他に、igg、iga、igm、igdがあります。これらの免疫グロブリンは大きさ、量、存在している場所等が異なり、igeはこの5つの中で最も量が少ないといわれています。
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igeとアスピリン喘息の関係とは?
先ほど説明したige抗体によるアレルギー反応は、鎮痛剤によって発作が引き起こされるアスピリン喘息とそのメカニズムは異なるのですが、この2つには大きな共通点もあります。
まず、このアスピリン喘息とは、現在大人の喘息患者の約10%ほどが症状を患っていると言われる疾患であり、この疾患の患者はアスピリン、ロキソニンなどの鎮痛剤を服用すると、ほどなくして鼻水、鼻づまりの症状に加え、重度の発作が引き起こされてしまうといわれています。鎮痛剤はほとんどが同じメカニズムによってその作用を示すため、この疾患の患者は市販の鎮痛剤はほとんどのものが使用禁忌であるといわれています
ですが、この疾患の患者でも、中には使うことが出来る鎮痛剤があります。アスピリン喘息の患者でも使える鎮痛剤に関する情報はこちらの記事で詳しくまとめていますのでよろしかったらご覧になってみてください。
また、先ほど服用薬によって引き起こされるといわれましたが、湿布による経皮吸収によっても症状が誘発されてしまいます。また、座薬によっても症状が誘発されてしまうそうです。とにかくこの疾患の患者は鎮痛剤の成分を体内に取り入れてしまうと発作などの症状が引き起こされてしまうのです。
では、どうしてこのような症状がでてしまうのでしょうか?それは、鎮痛剤の作用メカニズムにあります。そこでそもそも、鎮痛剤はどのようにして痛みを抑えてくれるのか説明したいと思います。
まず、私たちの体に痛みが生じているとき、体の中ではプロスタグランジンとよばれる成分が合成されており、このプロスタグランジンには、炎症を誘発して痛みを発生させる作用があります。
そして、このプロスタグランジンは、アラキドン酸と呼ばれる成分から合成されるのですが、この際、シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素がアラキドン酸からプロスタグランジンへの合成を助けます。つまり、この酵素の働きが重要なのです。
そして、現在鎮痛剤と呼ばれているほとんどのものは、このシクロオキシゲナーゼの働きを阻害しすることによってアラキドン酸からプロスタグランジンへの合成を抑制し、その結果プロスタグランジンによる炎症や痛みの作用を緩和させる作用があるのです。
ほとんどの方は、このシクロオキシゲナーゼ阻害の際に目立った問題は起こりませんが、アスピリン喘息の方はこの際ある問題に直面します。
実は、アスピリン喘息の患者の体内で、このシクロオキシゲナーゼの働きを阻害され、アラキドン酸からプロスタグランジンへの流れが抑制されてしまうと、今度はアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる成分を大量に合成してしまうのです。
ここで、このロイコトリエンという言葉に聞き覚えはありませんか?
このロイコトリエンは先ほどige抗体によるアレルギー反応の際にも説明したアレルギー症状を引き起こす原因物質で、ige抗体にアレルゲン物質が結合したとき、肥満細胞から放出される化学物質です。
つまり、アスピリン喘息の方は、鎮痛剤を服用すると、強いアレルギーのような症状が誘発されてしまうので、気道の収縮が起こり、発作などの症状がでてしまうのです。
すなわち、アスピリン喘息と、igeによる反応とでは、どちらもロイコトリエンが放出されるという点が同じなんです。同じ原因物質をこういった違うメカニズムから生成してしまうというのは、とても不思議ですね。
まとめ
今回はアスピリン喘息とigeの関係について書いていきました。
この2つは、どちらもロイコトリエンと呼ばれる化学物質が原因となってアレルギー症状を引き起こしてしまうんですね。
残念ながら、こうしたアレルギー症状を根本から治す方法は現在まだありません。
早く治療法が確立されてほしいと願うばかりです。^^;
今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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