喘息の治療薬であるステロイドが喘息を重症化させることがあるのはなぜ?コハク酸エステル型ステロイドの投与が禁忌であるアスピリン喘息と、これに代わる治療薬であるアドレナリンとは?

気管支喘息の治療において、医師は吸入タイプのステロイドを第一に処方します。ステロイドには優れた抗炎症作用が確認されており、気管支喘息はその根本的な原因が気管支の炎症であるため、吸入ステロイドによる治療を継続的に使用することによってこの炎症を徐々に鎮めていくのです。

しかし、もし気管支喘息の症状がアレルギー反応などによって急激に悪化し、発作が起きてしまった場合、吸入ステロイドではその発作を抑えることは難しいため、即効性のある気管支拡張薬や、吸入ステロイドよりもさらに高い抗炎症作用を得ることが出来る経口ステロイド(服用薬)などを使用してその症状の改善をはかります。

しかし、もし手元に経口ステロイドなどの発作治療薬がない場合は病院で治療を受けることになりますが、この際発作が起きている患者には静脈注射によってステロイドを投与することがあり、この静脈注射用のステロイドは主にコハク酸エステル型ステロイドと呼ばれるものを使用します。

これ自体はガイドラインに沿った適切な処置なのですが、実は、気管支喘息の患者の中には、この静脈注射用のステロイドによってさらに発作が悪化し、重篤な状態になってしまうことがあるのです。

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この症状はアスピリン喘息と呼ばれているもので、アスピリン喘息とは基本的にはアスピリン、ロキソニン、バファリン、ボルタレンなどの解熱鎮痛剤によって重度の発作が引き起こされてしまう病気です。アスピリン喘息は大人の気管支喘息の10%ほどにみられる病気であり、そのメカニズムは分かってきてはいますが、なぜ発症してしまうのかということは未だにわかっていません。

アスピリン喘息の患者はこのようにコハク酸エステル型ステロイドを投与されるとさらに重篤な状態となっているため、コハク酸エステル型ステロイドではなく、筋肉を弛緩させるアドレナリンの投与をするべきであるとされているのですが(発作時は気管支の筋肉が収縮してしまっているためアドレナリンによってこの収縮した筋肉を緩めることで症状の改善をはかる)、アスピリン喘息は先天的な病気ではなく後天的に発症する病気であることから、本人自身もアスピリン喘息と気付いていない場合はコハク酸エステル型ステロイドが投与されてしまう可能性があります。

このような事態を避けるためにも、気管支喘息の患者、特にアスピリン喘息を発症しやすいといわれる大人になってから気管支喘息を発症した患者は、アスピリン喘息に関する正しい知識を身に着けておくことが大切です。

今回の記事では、アスピリン喘息を重症化させる危険のあるコハク酸エステル型ステロイドに関する情報や、この病気の患者の治療に有効なアドレナリンに関する情報などについてまとめていきたいと思います。

ステロイドとは?何故気管支喘息の治療にはステロイドが有効なのか解説します。

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それではまず、気管支喘息の治療のにおいて重要な役割のあるステロイドとはいったい何なのかというところからまとめていきたいと思います。

ステロイドとは私たちの体内で作られるホルモンの一種です。体内の副腎と呼ばれる場所で作られるため、副腎皮質ホルモンとも呼ばれます。一口にステロイドと言っても様々なものがあるのですが、ステロイドは皆同じ基本骨格を持っています。

ステロイドは、物によっては筋肉の疲労を早く治したり、筋肉を増強される効果があるものもあるため、ドーピングなどに使用されたりもします。ニュースでドーピングの話題が取り上げられた際、ステロイドという言葉が使われているのを聞いたことはないでしょうか?

このような、悪いニュースでステロイドという言葉を耳にしたことがある方は、ステロイドに対してあまり良い印象を持っていないかもしれませんが、ステロイドは喘息の治療薬としては非常に高い効果を発揮します。

ステロイドが喘息の治療に導入されたのは1950年代のことなのですが、それから半世紀以上もたっているのに、いまだに治療薬として使われているのを考えると、それがいかに優れた効果を期待できるものかということが良くわかりますね。

そして、そもそもなぜ気管支喘息の患者にはステロイドを用いるのかと言いますと、最初にも申し上げましたが、気管支喘息の根本的な原因は気管支の炎症であり、ステロイドには優れた抗炎症作用があるからです。

気管支喘息は発作が起きてしまう病気、というイメージが先行してしまっている方も中にはいるかもしれませんが、気管支喘息は何らかの原因によって気管支が慢性的に炎症を起こしてしまう病気です。普通、炎症というのはウイルスが感染してしまったときなどに起こる免疫反応ですが、気管支喘息の患者は特にウイルスの感染などが起きていなくても常に気管支が炎症を起こしている状態になってしまいます。

そして、気管支が炎症を起こすと、その影響によって気管支がむくんで呼吸がしづらくなることに加え、気管支が非常に敏感な状態となるため、収縮が起こりやすくなります。そして、この敏感になった気管支が、アレルギー反応、香水の香り、タバコの煙、運動など、様々なものによって刺激を受けると、急激に収縮が起こって呼吸が困難になることがあり、これがいわゆる発作と呼ばれる症状になります。

この発作が起きないように抗炎症作用のある吸入ステロイドを継続的に使用して、時間をかけて炎症を鎮めていくことが気管支喘息の治療の基本なのです。

しかし、治療において吸入ステロイドを継続的に使用すると、副作用もあるのではないかという悩みを抱える方も少なくありません。

ですが、この吸入ステロイドは炎症が起きている気管支に直接吹きかけるため、1回の使用量はごく少量で済み、副作用を心配するほどではありません。しかし、症状が悪化してしまった場合は、全身に作用させる経口ステロイドなど、より強いステロイドの使用が必要になる場合もありますので、気管支喘息の患者は吸入ステロイドのによる治療を自己判断でやめないこと、そして、発作の原因となるものをなるべく生活の中から排除することが大切です。

しかし、吸入ステロイドを使用するに当たっては1つ注意点があり、それは吸入ステロイドを使用した後は必ずうがいをして、口内に残った余分な成分を洗い流すということです。もし口内に必要以上の成分が残ってしまうと、声枯れや、カビの一種であるカンジダ菌が口の中で繁殖する口腔カンジダ症と呼ばれる症状を発症してしまう可能性があるからです。治療の際には医師からも必ず指示されると思いますが、うがいを忘れないように気を付けましょう。

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アスピリン喘息とはどんな病気なのか?大人の気管支喘息患者は要注意!

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皆さんはアスピリン喘息と呼ばれる病気をご存知でしょうか?これは、ロキソニンやバファリンなどの解熱鎮痛剤の使用によって、鼻水、鼻づまりの症状や、重度の発作が引き起こされてしまう病気です。大人の気管支喘息の約10%ほどに見られる症状で、子供の患者はほとんどいないことから、後天的に発症する病気であると考えられています。

頭痛や生理痛などの症状を抑えるために普段からこうした痛みどめを持ち歩いている方も多いと思いますが、ある日突然これらの解熱鎮痛剤によって発作が起きてしまうかもしれないと考えると怖いですよね。

何故、この病気の患者は解熱鎮痛剤を服用すると発作が起きてしまうのか。症状だけを聞くとアレルギー反応のようですが、これは抗体が過敏に反応するアレルギー反応とはそのメカニズムが全く異なります。それでは、このアスピリン喘息のメカニズムについてわかりやすくまとめていきたいと思います。

まず、頭痛などの症状があるとき、私たちの体内ではその原因となるプロスタグランジンと呼ばれる成分が合成されています。このプロスタグランジンには、体温調節枢に作用して体の温度を挙げたり、痛みの原因となる炎症を生じさせる作用があり、ロキソニンなどの解熱鎮痛剤はこのプロスタグランジンの生成を抑えることによって、解熱作用や鎮痛作用を発揮するのです。

更に具体的に説明しますと、このプロスタグランジンはアラキドン酸と呼ばれる成分を材料として作られるのですが、この際、シクロオキシゲナーゼと呼ばれる酵素の働きがこの合成に不可欠であることが分かっています。そこで、この酵素の働きを阻害し、アラキドン酸→プロスタグランジンへの流れを抑制するように働くのがロキソニンなどの解熱鎮痛剤なのです。ここまでが、解熱鎮痛剤に期待される通常の作用になります。

しかし、アスピリン喘息の患者は、解熱鎮痛剤を服用し、このアラキドン酸→プロスタグランジンへの流れが抑制されてしまうと、今度はアラキドン酸からロイコトリエンと呼ばれる成分を大量に作り出してしまうと考えられています。

このロイコトリエンには気管支の収縮作用があることが分かっており、アスピリン喘息の患者はこのロイコトリエンによって発作が引き起こされてしまうと考えられています。

以上がアスピリン喘息のメカニズムになりますが、このアスピリン喘息の患者は、発作が起きた際に、気管支喘息の治療薬であるコハク酸エステル型ステロイドと呼ばれるステロイドを投与されると、さらに症状が悪化してしまうということが報告されています。それでは、このコハク酸エステル型ステロイドとはいったい何なのか、説明していきたいと思います。

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コハク酸エステル型ステロイドとは?

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それでは次に、コハク酸エステル型ステロイドに関する情報について説明していきたいと思います。

コハク酸エステル型ステロイドとは、気管支喘息の治療にも用いられるステロイド薬の一種です。気管支喘息の患者で発作が起きてしまった場合、病院で治療を受ける場合はこのコハク酸エステル型ステロイドを投与することによって気管支の炎症を鎮め、症状の改善をはかることがあります。

気管支喘息の患者の治療には有効なコハク酸エステル型ステロイドですが、実はアスピリン喘息の患者にこのコハク酸エステル型ステロイドを投与すると、症状が更に重篤になってしまうことがあるといわれています。

何故このようなことが起きてしまうのかというと、アスピリン喘息の患者は、コハク酸エステル型ステロイドに見られるコハク酸エステルと呼ばれる構造に過敏に反応してしまうと考えられています。

このコハク酸エステルと呼ばれる構造は、静脈注射の際より早く溶けるようにこのような構造に変化させられているのですが、アスピリン喘息の患者はなぜかその構造に過敏に反応してしまうのです。コハク酸エステル型ステロイドのように、コハク酸エステル構造を持つ薬はステロイド以外にも存在し、このように水溶性などを考慮して構造変化されている薬はプロドラッグと呼ばれています。そのため、コハク酸エステル型ステロイド自体はなんら悪いものではなく、むしろ体への作用を考えて合成された優れた治療薬なのです。

コハク酸エステル型ステロイドには、メチルプレドニゾロンハイドロコルチゾンなどの成分があり、アスピリン喘息の患者は、発作が起きた際には必ずこれらのコハク酸エステル型ステロイドが投与されないように気を付けなければありません。治療の前に、必ず医師に自分がアスピリン喘息の疑いがあること、そしてコハク酸エステル型ステロイドの投与は禁忌であるということを伝えたほうが良いでしょう。

また、気管支喘息の治療に用いられる静脈注射用のステロイドには、コハク酸エステル型ステロイドの他にリン酸エステル型ステロイドと呼ばれるものもあり、こちらはコハク酸エステル型ステロイドに比べると、経口摂取したり、ゆっくりと点滴によって投与すればアスピリン喘息を誘発する可能性は低いとされていますが、やはり急速静注するとアスピリン喘息を誘発してしまう可能性があるそうなので、こちらも合わせて覚えておきましょう。リン酸エステル型ステロイドには、デキサメタゾンベタメタゾン等があります。

では、アスピリン喘息の患者は発作が起きてしまったときどうしたら良いのかというと、ガイドラインではアドレナリンの筋肉内注射が有効であるとされています。それでは最後に、このアドレナリンに関する情報についてまとめていきたいと思います。

アドレナリンとは?

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アスピリン喘息の患者は通常のガイドラインに沿ってコハク酸エステル型ステロイドが投与されてしまうとさらに症状が悪化してしまうのですが、この病気の患者にはアドレナリンの筋肉内、皮下注射をすることが治療に有効であるということが分かってきています。アドレナリンとは英名であり、米名ではエピネフリンと言います。

また、このアドレナリンとは副腎髄質から分泌されるホルモンのことを言います。先ほどまで説明していたステロイドも同じく体内で作られるホルモンなのですが、アドレナリンが副腎髄質で作られるホルモンであるのに対し、ステロイドは副腎皮質で作られるホルモンになります。

よく、アドレナリンがでた、などと言いますが、これは、自律神経の1つである交感神経が優位になったとき、つまり体が緊張しているときに、体内でアドレナリンが多く産生されることを指して言っているのです。極度のプレシャーなどを感じた時に多く出やすいといわれているので、命の危機に面した人や、一流のスポーツ選手の体内ではアドレナリンが多く出ていると考えられます。

また、アドレナリンと対照的に、ノルアドレナリンと呼ばれるものも聞いたことはないでしょうか。こういった化学物質は、普段私たちの体の恒常性の維持に役立っています。

普段私たちの生活に密接に関係しているアドレナリンですが、現在ではこのアドレナリンがアスピリン喘息の治療に非常に有効であることが分かってきています。具体的には、アドレナリンを注射すると自律神経に作用して、発作によって収縮した気管支平滑筋を弛緩させ、症状を落ち着かせることが出来るのです。

少し難しい話になってしまいましたが、患者自身こういったことを知っておくことは治療において非常に大切です。医師から説明を受けた時に、アドレナリンの注射であることが分かれば安心して治療を受けられますからね。(^^)

まとめ

今回の記事では、アスピリン喘息の治療において、コハク酸エステル型ステロイドがもたらす危険性と、治療に有効なアドレナリンに関する情報などについてまとめました。

ステロイドは基本的には喘息の治療には有効ですが、アスピリン喘息の患者に対してコハク酸エステル型ステロイドの投与は危険であり、アスピリン喘息の患者にはアドレナリンの投与が有効であるということを是非気管支喘息の患者は覚えておくようにしましょう。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。(^^)

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