人間には様々な病原体から体を守るための免疫のシステムが備わっていますが、生まれたばかりの赤ちゃんや、小さな子供では、例えば20代の人と比べるとその免疫の働きは弱いということがこれまでの研究で分かっています。
また、そういった赤ちゃんや小さな子供の場合には、まだ気管の構造などが未発達であるというのも、感染症による症状が悪化しやすい原因の1つとして挙げられています。つまり、大人と比べると、例えば気管の構造が短いことが、感染症による炎症部位の広がりに影響し、肺炎などの症状へとつながるリスクを高めてしまうのです。また、気管の管そのものが細いので、閉塞が起きやすかったりもします。
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そして、そういった赤ちゃんや小さい子供が発症しやすく、注意すべき症状として、クループ症候群という症状も挙げられます。ただ、このクループ症候群とは、その名前から何か特別な病気のように思っている方も多いかもしれませんが、実際はある症状のことをそう呼んでいるのであって、例えばある特定の病原体のみが原因となってこのクループ症候群が引き起こされてしまうというわけではありません。
では、具体的にこのクループ症候群とはいったいどのような病気なのでしょうか。今回の記事では、赤ちゃんや小さい子供に多いクループ症候群について詳しくまとめますとともに、その治療方法などについて詳しくまとめていきたいと思います。
目次
赤ちゃんや小さい子供に多いクループ症候群とは?

「クループ症候群」と聞くと、あまり聞きなれない病名から、何か特別な病気なんじゃないの?と思う方は結構多いと思います。しかしこの病気は、例えば結核菌によって引き起こされる「肺結核」や、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって引き起こされる「AIDS」のような、何か特別な病原体が原因となって引き起こされる感染症というわけではありません。
実際には、何らかの細菌やウイルスが喉に感染し、その喉の「喉頭」という部分で炎症が生じてしまった結果、まるで動物が鳴いているかのような犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう)と呼ばれる独特な咳の症状がその特徴として出てしまうようなものを、クループ症候群と呼びます。ちなみに、その喉頭という部分がどこなのかというのは、以下の図を参考にしてください。

また、その犬吠様咳嗽の症状以外には、声が枯れる嗄声(させい)の症状や、人によっては気管が細まることによって聞こえる喘鳴(ぜんめい)の症状がみられることもあるといいます。そのクループ症候群の原因となる炎症が生じている喉頭という部位は、声を出すために重要な声帯がある場所なので、その結果その周辺が炎症を起こすと声が枯れてしまうです。
ちなみに、大人の場合には、たとえ喉頭部分が炎症を起こしてしまったとしても、それによって犬吠様咳嗽の症状がみられることはほとんどないといいます。つまり、今回お話ししているクループ症候群という症状は、赤ちゃんや小さい子供にしかほとんど見られない症状なのです。
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どうして「クループ症候群」という名前なのか?

では、このクループ症候群とは具体的にどのような病気なのか、そもそもなぜクループ症候群と呼ぶのかということについてもう少し具体的にお話ししたいと思います。
まず、このクループ症候群という病気は、先ほど「何らかの細菌やウイルスが感染し、喉頭で炎症が起こることによって起こる症状」というふうに説明をいたしました。ただ、これを簡単な説明に言い換えると、つまりクループ症候群とは、風邪をひいてしまったときに引き起こされる症状のことなんです。
まず、風邪という感染症は私たちにとって1番身近な感染症といえるのではないかと思うのですが、そもそもこの風邪という病気はどんな病気なのかということについて、皆さんはご存知でしょうか?
もしかしたら、今までそんなことあんまり気にしたことがなかったという方もいるかもしれませんが、この風邪という病気は「何らかの細菌やウイルスの感染によって、上気道において急性の炎症がみられるものの総称」のことを言います。つまり、風邪という病気は、何がその症状を引き起こしている原因となっているのか、よほど詳しい検査を受けないことにはわからないのです。
そして、その上気道という部位は、先ほど載せました画像を見ていただくとわかると思いますが、さらに、「鼻腔」「咽頭」「喉頭」という3つの部位に分けることができます。ここまでいうとピンとくる方が多いと思うのですが、つまり風邪をひいてしまったときに、その炎症が喉頭にまで及んでしまった結果、引き起こされることがある症状が、今回お話ししているクループ症候群というものなのです。
では、じゃあなぜそれを「クループ症候群」と呼ぶのか、という話になりますが、実はこのクループ症候群という病名に含まれている「クループ」という言葉は、初期近代英語の「馬のように鳴く」という意味を持つ、「croup」という動詞に由来しているそうです。つまり、風邪などの感染症にかかってしまった結果、それによる炎症が喉頭の部分にまで及び、その結果動物が鳴いているかのような咳の症状が表れるようになってしまったものを、「クループ症候群」と呼ぶようになった、ということなんですね。
では、ちなみにそのクループ症候群における犬吠様咳嗽とはどのようなものなのか、というのは、以下の動画を参考にしてみてください。これを見ていただくとわかると思いますが、確かにこの動画の中で男の子がしている咳は、ゲホゲホ、ゴホゴホ、というような、私たちがよく耳にする咳とはちょっと違いますよね。本当に何かの動物が鳴いているかのように聞こえます。
クループ症候群の治療方法とは?

このクループ症候群という症状は、実はそれを治療する具体的な方法というものはありません。なぜなら、そもそもそのクループ症候群は、記事の中でちょっとお話ししましたように、なんの病原体がその原因となっているのかすぐにわかるものではないからです。
治療方法がないというと誤解が生じてしまうかもしれませんので補足説明させていただきますが、そもそも、風邪という病気自体に絶対にそれを治療する方法というものがないんです。風邪という病気は、先ほど何らかの細菌やウイルスの感染によって引き起こされる感染症であるというお話をしましたが、実際には、その8割はウイルス感染によるものであると考えられています。
しかし、実は今だに、どんなウイルスにも効くお薬というものはこの世界に存在していないんです。(インフルエンザウイルスに効果を示すタミフルなど、特定のウイルスにのみ効果を示すお薬はあります。)風邪をひいたときに医師から処方されるお薬というのは、風邪をひたことによって引き起こされる咳や痰、喉の痛みなどを和らげるためのお薬であって、その原因となっているであろうウイルスを退治するためのお薬ではないんです。
実際、風邪をひいて病院に行っても、それを引き起こしている病原体がなんなのか検査を受けたことがある方はおそらくいないと思います。(インフルエンザが疑われる場合には検査をしますが、それ以外ではほとんどないですよね。)そのため、基本的に風邪、およびクループ症候群という病気は、人の免疫力によって治療する病気なのです。
ちなみに、感染症の際には抗生物質というお薬が処方されることがありますが、こちらは細菌の繁殖を防いでくれるお薬になります。そのため、その症状の様子から細菌感染が疑われる場合や、ウイルス感染から、細菌の2次感染が懸念される場合には、抗生物質が処方されることがあります。結核菌の感染による「肺結核」などの不治の病とされていたものが治療できるようになったのも、この抗生物質が登場したおかげなのです。
ちなみに、ここまで細菌やウイルス、と区別して説明してきていますが、この2つは同じ病原体ではありますが、その性質には大きな違いがあります。もし、これをご存知ではないという方は、是非一度以下の記事をご覧になってみてください(^^)きっと参考になるのではないかと思います。
まとめますと、クループ症候群という病気には、それを治療するための特効薬の様なものはなく、基本的にはその症状の悪化に気を付けながら、人の免疫力によって治療していく病気になります。なので、対症療法がその基本となるのです。(細菌感染によって引き起こされている疑いがあれば、やはり抗生物質が処方されます。)
また、もしあまりにも症状がひどい場合には、ステロイドの内服や注射を行うことによって、その症状の改善を図ることもあります。ステロイドというとよく気管支喘息の治療に用いられるのですが、これには免疫の過剰な働きを抑えることによって抗炎症効果が発揮されることが期待されるので、クループ症候群の原因となっている喉頭の炎症にもその効果が期待されます。
また、このクループ症候群は基本的には自宅での対症療法が基本となるようですが、症状があまりにもひどかったり、特に赤ちゃんの場合には体力がまだあまりないこともあって、入院が必要になるケースもあるといいます。どの感染症にも言えることではありますが、このクループ症候群で今までに命を落としてしまった赤ちゃんもいらっしゃるそうなので、なんだか赤ちゃんの様子がおかしい、変な咳をしていると感じたら、早めに病院へ連れて行ってあげて、医師に相談をすることが大切です。
まとめ

今回の記事では、赤ちゃんや小さい子供に多いクループ症候群について、これがどんな病気なのかということについてまとめますとともに、その治療方法などについて詳しく説明しました。
クループ症候群の特徴は、なんといってもそのちょっと変わった咳の症状にあります。なので、もし皆さんのお子さんがちょっと変わった咳の症状をしていたら、早めに病院に連れて行ってあげてください。
また、ここまで読んでくださった方ならお分かりいただけていることと思いますが、このクループ症候群という病気は、人に絶対にうつる病気ではありません。
つまり、そのクループ症候群の症状を引き起こす原因になっているであろう病原体が周りの人にうつる可能性はもちろんあり得ますが、それによって犬吠様咳嗽などの咳の症状までもが人にうつるというわけではないのです。ただ、クループ症候群にはそれを引き起こしやすい病原体がいるのも事実で、もし複数の子供がいらっしゃり、そのうちの1人がクループ症候群になってしまった場合には、その周りの子供もクループ様の症状になってしまうこともあり得ますので、そういったことがないように十分に注意してください。
それでは今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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