
何らかの原因によって気管支に慢性的な炎症が生じるようになり、それによって呼吸機能に障害が表れるようになってしまう病気のことを気管支喘息と言いますが、この病気の治療薬には、その悪化の原因や用途の違いに合わせて様々な種類のものが存在しています。
まず、気管支喘息の治療においては、その症状が悪化しないように症状をコントロールしながら、その改善を目指すための長期管理薬(コントローラー)と呼ばれるタイプのお薬を使った治療が基本となるのですが、今回お話するシムビコートとアドエアは、その長期管理薬の中でもしばしば用いられる代表的なお薬として知られています。
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気管支喘息は気管支の炎症がその根本的な原因となっているので、その炎症を鎮めるための吸入ステロイドを使った治療が以前から主流となっていましたが、最近では、その吸入ステロイドに、呼吸を楽にするための気管支拡張剤を一緒に配合した合剤を使用するのが一般的になってきています。そして、今回お話するシムビコートとアドエアもその合剤の一種で、いざ喘息を治療するとなった場合には、このどちらかが処方されるということは十分にあり得ます。
しかし、同じ合剤であっても、そこにはもちろんいくつかの違いがあります。そこで今回の記事では、シムビコートとアドエアについて、その値段や、特徴の違いを詳しくまとめていきたいと思います。
目次
気管支喘息ってどんな病気なの?その治療法とは?

シムビコートとアドエアの違いについて説明する前に、そもそも気管支喘息とはいったいどんな病気なのかということや、この病気の治療方法について詳しくまとめてみたいと思います。
まず、はじめにも申し上げましたが、この気管支喘息とは、何らかの原因によって気管支に慢性的な炎症が生じるようになってしまう呼吸器疾患のことを言います。アレルギー体質の方に多いという特徴がありますが、中にはアレルギー体質ではないという方もおり、その実態は未だに完全には解明されていない病気です。
感染症や妊娠、出産などの体調の変化に伴って発症することがある病気としても知られていますが、この気管支喘息を発症すると、その患者は慢性的に息苦しさを感じるようになってしまいます。これは、気管支の炎症によってその気管支の壁がむくみを起こす他、少しの刺激に対しても敏感に反応して収縮を起こすようになってしまうためです。
そのため、気管支喘息を発症すると咳が出やすくなってしまうという特徴があり、中にはこの咳だけが続く咳喘息と呼ばれている症状もありますが、気管支喘息の怖いところは、その患者の中には、時に急激な気管支の収縮が起こり、呼吸が困難になってしまう発作の症状が起きてしまう方もいるということです。
その発作が起きてしまう原因は人それぞれであり、喘息の症状の悪化を招く原因としては、アレルギー反応、タバコ、お酒、運動、ストレスなどが挙げられ、中にはロキソニンやバファリンなどの解熱鎮痛剤の服用によって喘息症状の急激な悪化が起きてしまう方がいるということもわかっています。
この症状はアスピリン喘息と呼ばれており、ちょっと聞いただけだとアレルギー反応の一種のようにも聞こえますが、そのメカニズムはアレルギー反応とは異なります。もし、この記事をご覧になってくださっている中に喘息患者の方がいましたら、このアスピリン喘息について知っておくことはとても大切なので、一度、以下の記事の方をご覧になってみてください。
→【※気管支喘息とアスピリン喘息の違いとは?】その症状や原因、薬による気管支喘息の治療に関する情報はこちら…
さて、ここまでを簡単にまとめますと、気管支喘息とは、気管支の炎症を特徴とする呼吸器疾患であり、時に重症化して呼吸困難を招くことがある病気ということになりますが、このような特徴から、気管支喘息の治療薬は大きく2つのタイプに大別することができます。その2つとは、喘息の症状が悪化しないように、その症状をコントロールしながら改善を目指すための長期管理薬(通称コントローラー)と、万が一発作が起きてしまったときに、その症状を抑えるための発作治療薬(通称リリーバー)です。
そして、この長期管理薬と、発作治療薬のなかにもまたいくつかタイプがあり、それぞれのタイプの中でまたいくつか種類があったりするのですが、とりあえず、長期管理薬と発作治療薬の中にはどのようなタイプのお薬があるのか、というのは以下の記事の中で詳しくまとめていますので、気になる方は是非一度ご覧になってみてください。
→【※喘息大人の治療に使われる薬の種類一覧はこちら】吸入ステロイドの効果とは?…
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シムビコートとアドエアの違いとは?値段はどのくらい違うの?

さて、ではここからは今回の記事の本題である、シムビコートとアドエアの違いについて説明していきたいと思いますが、このシムビコートとアドエアは、どちらも長期管理薬に分類される吸入ステロイドと、長時間作用型の気管支拡張剤(β2刺激薬)を合わせた合剤となっています。
ただ、同じ合剤であっても、それに含まれている成分や、値段、使用回数などに違いがありますので、それぞれの特徴について詳しくまとめていきたいと思います。
アドエアとは?
今回この記事をご覧になってくださっている方の中にも、喘息の治療薬としてアドエアが処方されたという方もいるかも知れませんが、このアドエアには、正確にはアドエアエアゾールというものと、アドエアディスカスという2つのタイプのものがあります。

この2つのタイプのお薬は、配合されている成分自体には違いがありません。どちらのタイプにも、その有効成分として、「フルチカゾン」というステロイドと、「サルメテロール」という気管支拡張剤が配合されています。
ではいったいこの2つは何が違うのかというと、その大きな違いは、アドエアディスカスがドライパウダー式なのに対して、アドエアエアゾールはミストを噴射するスプレータイプのものであるということです。
どちらも吸入薬であることには違いはありませんが、アドエアディスカスはセットされたパウダーをスーッと自分のタイミングに合わせて吸入するのに対し、アドエアディスカスの方はスプレータイプなので、プッシュするタイミングに合わせて息を吸い込み、スプレーから噴射される成分を気管支や肺の隅々にいきわたらせることができるという仕組みになっています。
一般的にはアドエアディスカスの方が処方されやすい傾向にあるようですが、エアゾールの方がスプレータイプで吸入しやすい点なども考慮し、その方に合ったタイプのお薬が処方されるというような形になります。
これらのお薬の詳しい使い方、または特徴の違いについては、以下の動画をご覧になっていただくと分かりやすいのではないかと思います。はじめの動画がアドエアディスカスの使い方に関する動画で、次がアドエアエアゾールの使い方に関する動画になります。※2つ目の動画はアドエアに限らず、エアゾールタイプ全般のお薬の使い方になります。
さて、ではこの動画の中でご覧になっていただいた情報にプラスして、アドエアというお薬の詳細についてもう少し詳しく説明していきたいと思いますが、このアドエアディスカスとアドエアエアゾールの中にも、それぞれまた3つのタイプのお薬があります。
すなわち、アドエアエアゾールの場合、
- アドエア50エアゾール
- アドエア125エアゾール
- アドエア250エアゾール
という3つのお薬があって、この名前に含まれている数字は、それぞれお薬に含まれている1吸入あたりに摂取できるステロイドの量を示しています。(単位はμg)ちなみに、それぞれステロイドの量は違いますが、どれも1吸入あたりに摂取できる気管支拡張剤の量は一律で、25μgになります。
これに対して、アドエアディスカスの方には、
- アドエア100ディスカス
- アドエア250ディスカス
- アドエア500ディスカス
という3つのタイプのものがあって、先ほどと同じように、この名前に含まれている数字は1吸入あたりに摂取できるステロイドの量を示しています。ちなみに、こちらは1吸入あたりどれも50μgの気管支拡張剤が摂取できるようになっています。
この説明を見ていただいた方の中にはすでにお気づきの方も多いかもしれませんが、アドエアエアゾールの3つのタイプのものと、アドエアディスカスの3つのタイプのものは、その3つ同士がそれぞれ対応するように作られています。アドエアエアゾールの方を2倍にした数字が、アドエアディスカスの数字に対応していますよね。
実は、アドエアディスカスの方は、朝に1回、夕方に1回の1日計2吸入するのが基本となっているお薬なのですが、アドエアエアゾールの方は、朝と夕にそれぞれ2回ずつ吸入する必要があるお薬となっています。つまり、これによって摂取できる薬品の量は、ディスカスもエアゾールも原理的にはどちらも同じということになりますね。
なので、ディスカスの方が処方されても、エアゾールの方が処方されても、それに期待される効果という意味では、結論としてその違いはほとんどありません。
ただ、その値段を見てみると、薬の量は同じなのに、値段にはちょっとした違いがあります。具体的には、それぞれのお薬の薬価は以下のようになっています。【※()内の数字の単位は「円」であり、ディスカスの方は計60吸入タイプのもの、エアゾールの方は計120吸入タイプのものの値段で比較しています。すなわち、どちらも30日で使いきるタイプのお薬です。】
- アドエア100ディスカス(6267.30)
- アドエア250ディスカス(7208.40)
- アドエア500ディスカス(8213.20)
- アドエア50エアゾール(6614.90)
- アドエア125エアゾール(7713.50)
- アドエア250エアゾール(8743.90)
※ディスカスの方には、60吸入タイプの他に、半月分の28吸入タイプのものもあります。
こうして比較して見てみると、ディスカスタイプのものより、若干エアゾールタイプのお薬の方が値段が高いということが分かりますね。ただ、実際には患者側は上記の値段を支払うのではなく、保健が適用されるため、この値段の3割を負担するという形になります。例えば、薬価が6000円だとしたら、実際に払わなければならない値段は600×3の1800円ということになります。
そうなると、その値段の差もさらに小さくなって、そんなに大きな差があるというわけではなさそうです。もしアドエアのお薬を使うとなった場合には、処方された方をとりあえず使ってみて、不満があったら違うタイプのものに変えてもらえるかどうか相談してみると良いでしょう(^^)
シムビコートとは?

それでは次に、アドエアと同じ合剤であるシムビコートに関する情報について詳しくまとめていきたいと思います。アドエアとシムビコートは同じ吸入タイプの合剤ですが、実はその使い方には明確な違いがありますので、それについても後程詳しくまとめていきたいと思います。
シムビコートは、正式には「シムビコートタービュヘイラー」という名前になっていて、このタービュヘイラーとはその容器の名称を表しています。まず、シムビコートがどんな使い方をするお薬なのか、というのは、以下の動画を参考にしてください。
では、このシムビコートがいったいどんなお薬なのかということについて更に詳しく説明していきたいと思います。
シムビコートは、ステロイド成分である「ブデソニド」と、気管支拡張剤としての作用を示す「ホルモテロール」という成分を含んだ、吸入タイプのお薬です。30吸入タイプのものと、60吸入タイプのものの2つのタイプのお薬があります。
基本的には1回1吸入を、朝夕の2回行って症状の改善を目指していくお薬になります。ですので、60吸入タイプのものが、1か月分(30日分)のお薬ということになりますね。
では、このシムビコートの値段はどのくらいなのかというと、その60吸入タイプのもので、現在のところ薬価は5877.70円となっています。
先ほどのアドエアとの違いを比較してみると、こちらのシムビコートの方が若干値段は安いということになっていますね。ただ、薬価は2年周期で変わり、基本的には安くなる傾向にあるため、将来的にはまたどちらも同じくらいで落ち着いてくるのかもしれません。
また、シムビコートは人によっては1回2吸入というように指示されることもあるため、一概にはシムビコートの方が安いとも言い切れないのが実際のところです。1回2吸入だと、1日に4吸入なので、結局60吸入タイプのものでも15日で使い切ってしまうということになります。こうなると、シムビコートの方が割高ということになってしまいますね。
なので結局のところ、アドエアとシムビコートではどちらの方が値段が高いのか、というのは、その患者の症状の程度によるところが大きいと言えます。医師がどう判断するかで、その費用には違いが生じてくるということですね。
ただこのシムビコートには、実はこのお薬ならではの非常に大きなメリットと言えるものがあります。それはいったい何なのかというと、このシムビコート、基本的には長期管理薬として使うお薬なのですが、実は様々な合剤の中でも、唯一発作時にも効果を示すことが認められているお薬であり、発作を改善するためのリリーバーとして使うことができるんです。
シムビコートをこのように発作時に用いる使い方は、SMART療法(Symbicort Maintenance And Rliever Therapy)と呼ばれ、日本では平成24年の4月からこの使用法が認められるようになりました。
では、なぜこのシムビコートにはこのような使い方が認められているのかというと、実はこのシムビコートに含まれている「ホルモテロール」という気管支拡張成分には、長時間作用型であることに加え、その効果には即効性があるという特徴があるからなんです。
よく知らない方のために補足いたしますと、基本的に気管支拡張剤(β2刺激薬)には、即効性で作用時間が短いタイプのものと、遅効性で作用時間が長いタイプのものがあり、前者のものはリリーバーとして用いられ、後者の遅効性で作用時間の長いタイプのものがコントローラーとして用いられます。
しかし、今回お話ししているシムビコートに含まれるホルモテロールには、もう一度言いますが、長時間作用型なのに、即効性があるという効果が認められ、その結果リリーバーとしての使用が認められるようになったのです。
これのどこが大きなメリットなのか、ということについていまいちピンときていない方もいるかも知れませんが、実は、喘息患者の中には、発作が起きてしまったときにも、いつも使っている長期管理薬のみで対処しようとする方が結構多いそうなんです。
でも、確かにいざ発作が起きてしまったときに、いつも使っていない方のお薬を使用するとなると、慌ててしまうことや、すぐに見つからないといったこともありそうですよね。もちろん、そうならないように、きちんとどのお薬をいつ使うのかを把握し、すぐに使えるところにおいておくことが大切なのですが、そういう問題が起こりえないとは限りません。
なので、1つで長期管理薬としても発作治療薬としても使えるシムビコートは、非常に使い勝手がよく優秀なお薬であるといえるのです。
では、このシムビコートをリリーバーとしても使うという場合の詳しい使い方について説明しますが、先ほど、このシムビコートは基本的に朝夕に1吸入ずつ、1日計2吸入するという説明をしましたが、このSMART療法の考え方でいくと、このシムビコートは、コントローラーとして使用する回数も含めて、1日最大6回までの使用が可能となっています。つまり、コントローラーとしての使用回数が朝夕に1回ずつであった場合、それ以外に4回までリリーバーとして使用しても大丈夫ということです。(ちなみに、最大8吸入と伝えられているときもあるのですが、8吸入以上の臨床試験データが少ないため、もし8回以上吸入してしまったときには医療機関への相談が必要になるそうです。)
ただ、もちろん大切なことはこのようにたくさんの回数使用することが無いように症状をコントロールすることなので、必ず朝夕のコントローラーとしての使用を忘れないように気を付けましょう(^^)
まとめ

今回の記事では、気管支喘息の概要や、その治療方法についてまとめますとともに、その代表的な治療薬である、アドエアとシムビコートの違いに関する情報などについて詳しくまとめました。
シムビコートとアドエアは、同じ1か月分のお薬の値段を見てみると、一見シムビコートの方が安いように感じますが、記事の中でもお伝えしましたように、実際は患者の症状の程度によってそこはまた少し変わってくるようです。
ただ、どちらも非常に優秀なお薬であるということは間違いありませんので、どちらが処方されとしても、とりあえずは医師の指示通りに正しく使って、症状の改善に取り組むようにしましょう。
今回の記事は以上になります。最期まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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