アスピリンとは、アセチルサリチル酸と呼ばれる成分を主成分とする解熱鎮痛剤です。解熱鎮痛剤にはこのアスピリンの他にも、ロキソニンやボルタレンなど色々な種類のものがありますが、実はこれらの薬は、ほとんどが皆同じメカニズムによって熱や痛みの症状を鎮めてくれます。
解熱鎮痛剤は薬局で簡単に手に入る一般的な薬の1つなので、大人の方は一度は服用したことがあるかと思います。また、普段から偏頭痛の症状があったり、特に生理中の女性の方はこういった薬を持ち歩いているという方も多いのではないでしょうか。
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しかし実は、大人の喘息患者のなかには、こういった解熱鎮痛剤を服用すると重度の発作の症状が誘発されてしまうことがあり、こうした一部の喘息患者においては、アスピリンなどの解熱鎮痛剤は服用が禁忌であるとされています。解熱鎮痛剤によって喘息が悪化してしまうこの症状は、現在アスピリン喘息と呼ばれています。
では、なぜ一部の患者においては、解熱鎮痛剤が喘息を悪化させる原因となってしまうのか、今回の記事で詳しく書いていきますので、もし喘息の症状がある方は、是非今後のケアに役立ててください。(^^)
目次
解熱鎮痛剤とは?

解熱鎮痛剤は、その名の通り、熱を下げたり、痛みを鎮めたりしたいときに服用するお薬です。私は友人に片頭痛を患っている方がいたのですが、その方がよく服用していたのを覚えています。
解熱鎮痛剤は頭痛、発熱の他に、リウマチや歯痛などの治療にも用いられます。これらの症状には関係性があり、どれも、炎症がその原因となっています。頭痛と炎症の関連について知らない方も多いかもしれませんが、頭痛は、頭にある血管が膨張し、それが周りを刺激して炎症が起きることによって生じます。
また、抗炎症と聞くと、喘息患者の方はステロイドを思いつくのではないでしょうか。ステロイドは今や炎症の治療には欠かせない重要な薬の一つですが、頭痛や発熱における炎症を抑える際にステロイドは使用されません。発熱や、頭痛などにおいて使われる非ステロイド性の抗炎症薬はNSAIDsと呼ばれているもので、これは、Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの頭文字をとったもので、意味はそのまま非ステロイド性抗炎症薬です。
そしてこのNSAIDsに分類される解熱鎮痛剤の1つに、アスピリンと呼ばれるものがあります。これは、時に喘息を悪化させる原因になると言われており、そういった一部の喘息患者においては使用は禁忌とされていますが、実はこのアスピリン喘息の症状は、アスピリンだけでなく、NSAIDs全般が症状を引き起こす原因になることが分かっています。そのため、アスピリン喘息はNSAIDs過敏喘息とも言われることがあります。
解熱鎮痛剤の作用機構とは?

それでは次に、この解熱鎮痛剤はどのようにして熱や痛みの症状を抑えるのかについて詳しく説明したいと思います。
まず、頭痛や生理痛など、私たちの体内で痛みの症状が生じている時、先ほども書きましたように、その周囲では炎症が生じています。そして、この炎症は、主にプロスタグランジンと呼ばれる成分が血管を膨張させることが原因となって引き起こされているのですが、このプロスタグランジンには、炎症を引き起こす以外にも、視床下部にある体温調節枢に作用することによって、体温を挙げる働きなどがあります。
つまり、熱と痛み、この2つの症状にはどちらもプロスタグランジンと呼ばれる成分が大きく関係しており、この成分の産生を抑えることができれば、結果的に熱や痛みの症状は抑えられるということです。そして、そのような作用を示すものが、アスピリンに代表される解熱鎮痛剤ということになります。
では、具体的にアスピリンなどの解熱鎮痛剤はどのようにしてその産生を止めるのかと言いますと、このプロスタグランジンはアラキドン酸と呼ばれる成分から合成されるのですが、そのアラキドン酸→プロスタグランジンの流れにおいては、シクロオキシゲナーゼ(COX)と呼ばれる酵素の働きが必要不可欠であるということが分かっています。
そしてアスピリンに代表される解熱鎮痛剤は、まさにこの酵素の働きを阻害することによって、結果的にアラキドン酸→プロスタグランジンの流れを抑制することができるのです。ロキソニン、アスピリンなどに含まれる有効成分は皆構造が異なりますが、どれも、このシクロオキシゲナーゼ阻害作用を示します。
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アスピリン喘息とは?一部の喘息患者において解熱鎮痛剤の服用が禁忌である理由はこちら

アスピリン喘息とは、アスピリンに代表される解熱鎮痛剤を服用すると、それからほどなくして喘息の症状が悪化し、発作などが誘発されてしまうものを言います。この症状は重症化しやすいといわれているため、一回でもこのような症状が誘発されてしまった場合、その患者はその後アスピリン等の解熱鎮痛剤は服用が禁忌とされています
その症状だけをきくと、これは解熱鎮痛剤によって引き起こされるアレルギー反応のようにも聞こえますが、これはアスピリン等の解熱鎮痛剤によってプロスタグランジンの産生が抑えられることによって、代謝に影響が出ることが原因ではないかと考えられています。これはいったいどういうことなのか、詳しく説明します。
先ほど、解熱鎮痛剤の作用メカニズムを説明する際に、痛みや熱の原因物質であるプロスタグランジンは、アラキドン酸から作られると述べたのですが、実はこのアラキドン酸は、プロスタグランジンの他に、ロイコトリエンと呼ばれる物質の材料にもなっています
このロイコトリエンは、特にアレルギー反応が起きた際に肥満細胞からヒスタミンなどとともに大量に放出される化学物質であり、鼻炎の症状や、気管支の収縮などを招く原因物質として知られています。気管支喘息の患者においては、しばしばアレルギー反応が発作の原因として挙げられますが、これはこのロイコトリエンやヒスタミンが喘息患者における喉の炎症を悪化させ、気管支の収縮を促すことがその原因とされています。
まとめますと、体内ではアラキドン酸→プロスタグランジン、アラキドン酸→ロイコトリエンという2つの経路での合成が考えられるのですが、解熱鎮痛剤を服用すると、アラキドン酸→プロスタグランジンの経路は遮断されるということは先ほど説明しました。
普通の方だとこれ自体には問題はないのですが、一部の喘息患者においては、アラキドン酸→プロスタグランジンの経路が抑制されると、今度はなぜかアラキドン酸→ロイコトリエンの合成が急激に行われてしまうと考えられています。つまり、解熱鎮痛剤の服用によって、結果的に急速なアレルギーのような症状が引き起こされてしまうのです。そのため、もしアスピリン喘息の患者が解熱鎮痛剤を服用した場合には、薬の服用からまもなく、鼻水、鼻づまりなどの症状が現れることもその大きな特徴です。
アスピリン等の解熱鎮痛剤によって症状が誘発されてしまった場合、基本は普通の喘息発作などの症状の対応と同じなのですが、アスピリン喘息における発作の症状は特に悪化しやすいといわれているため、もし症状がなかなかおさまらない場合にはすぐに病院へ行き、医師に相談をした方が良いでしょう。
アスピリン喘息の割合とは?

では、実際どのくらいの喘息患者が解熱鎮痛剤によって症状が誘発されてしまうのかと言いますと、現在この症状があるのは、喘息大人の症状を患っている方のうちの10%程度と言われています。そして、逆にこの症状は子供においてはほとんどみられないことから、大人になってから後天的に発症する疾患であると考えられています。特に、大人になってから喘息を発症してしまった方に多いとされていますので、これにあてはまる方は要注意です。
また、このアスピリン喘息を患っている方は、その合併症として好酸球性の副鼻腔炎と呼ばれる病気を発症している割合が多いそうです。副鼻腔炎とは、鼻の奥の副鼻腔と呼ばれる場所で炎症が生じてしまうもので、鼻水、鼻づまりなどの書状が特徴的な病気です。つまり、喘息大人の患者で、慢性的に鼻づまりを感じるようになってしまった、という場合には、アスピリン喘息を発症している可能性がありますので、十分に注意してください。
アスピリン喘息と好酸球性副鼻腔炎の関連についてはこちらの記事で詳しくまとめています。
→【※アスピリン喘息と好酸球性副鼻腔炎の関連とは?】抗生剤で治療する好中球性副鼻腔炎との違いや、その治療に有効なステロイド、鼻茸の切除手術に関する情報などについてまとめます。
まとめ

今回は、アスピリン等の解熱鎮痛剤が引き起こすアスピリン喘息の症状について詳しくまとめました。
喘息の原因ときくと、ダニ、カビ、花粉などのアレルゲン物質をまず想像してしまいますが、まさか市販で売られている薬が症状を引き起こす原因になってしまうとは驚きですね。もし一回でも解熱鎮痛剤によって喘息の症状が悪化してしまった場合、その後の服用は禁忌ですので、注意してください。しかし、中にはアスピリン喘息の患者でも比較的安全に服用できる解熱鎮痛剤も存在していますので、これについて知りたい方はこちらの記事をご覧になってみてください。
喘息を治療していくにあたって、何が自分にとって症状を悪化させる原因となってしまうのか把握しておくことはとても重要です。ましてや、解熱鎮痛剤は非常に身近にある薬ですので、もし現在喘息の症状がある方は、解熱鎮痛剤が発作の原因になる可能性もあるということを是非覚えておいてください。
喘息大人の症状は重症化しやすく、酷い発作は命にも関わります。是非こういったことに注意して症状改善に取り組んでいきましょう(^^)
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