何らかの原因によって気管支に慢性的な炎症が生じるようになってしまう病気のことを気管支喘息といいますが、まだ体の構造が未発達な小さい子供が発症してしまう気管支喘息のことを、一般的に小児喘息といいます。
小児喘息と大人の喘息は、気管支に慢性的な炎症が生じるようになるという主な症状自体が変わることはありませんが、その症状の悪化が引き起こされる原因に少し違いがあるといわれています。
具体的には、小児喘息の悪化が起きてしまう原因の大半はアレルギー反応であるといわれていますが、大人の喘息患者の中には、小児喘息の患者と同じようにアレルギー反応によって症状が悪化してしまう方もいれば、その他の原因(お酒、たばこ、運動、感染症、気温や気圧の変化、ストレス、解熱鎮痛剤など)によって症状が悪化してしまうような方も多いのです。
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また、小児喘息に比べて大人の喘息は完治させるのが難しいとも言われているため、小児喘息の時に治療をしっかりと行い、小児喘息を引きずったまま大人になってしまわないようにすることが重要であると述べている医師の方もいます。
さて、では今回の記事ではそんな小児喘息について詳しくまとめていきたいと思いますが、小児喘息の患者はアレルギー反応によって症状が悪化しやすいということは先ほど述べたとおりですが、中にはその悪化によって発作を起こしてしまったり、そのまま入院が必要になってしまうような方もいるそうです。
では、アレルギー反応によって発作が引き起こされてしまうのはどうしてなのか、そして、入院が必要になるのはどのような時なのかということについて、以下で詳しくまとめていきたいと思います。
目次
小児喘息の発作について!アレルギー反応によって発作が起きてしまうのはどうしてなのか…

小児喘息に限った話ではありませんが、気管支喘息の患者の中には、アレルギー反応によってその症状が悪化し、呼吸が困難になるいわゆる発作と呼ばれる症状を引き起こしてしまう方もいます。
ただ、その喘息患者の中でも、特に小児喘息の患者はアレルギー反応によって症状が悪化してしまうケースが多く、具体的には小児喘息の症状悪化の原因の8割~9割はアレルギー反応であるとも言われています。
では、なぜアレルギー反応が起きてしまうと喘息症状が悪化してしまうのか、そのメカニズムについて簡単に説明をしたいと思います。
まず、アレルギー反応というものは、もう少し具体的に説明すると、体内に存在するIgEと呼ばれる抗体と、その抗原となる物質との結合によって引き起こされる一連の反応のことを言います。
このIgEと呼ばれるものは免疫グロブリンと呼ばれるものの1つであり、体が外部から侵入してきた何かを異物と判断してしまうと、その時にその物質にだけ特異的に結合するようなIgE抗体が体内で産生されます。
つまり、IgE抗体とは後天的に作られるものであり、例えば、花粉に反応するIgE抗体と、ダニに反応するIgE抗体はそれぞれ別のものになります。また、人によって何がアレルギーの原因になってしまうかが異なるのは、体が何を異物と判断するのかが人それぞれ違うためです。
さて、ではそのIgE抗体が作られるとどうなるかというと、これは体内で生成されたのち、免疫細胞の一種である肥満細胞と呼ばれる細胞の表面にくっついて、次にそのIgE抗体と結合する抗原となる物質が体内に入ってくるのを待ち構えています。例えば、スギ花粉に特異的に結合するIgE抗体を持っているのであれば、その患者の体内では肥満細胞の表面にそのIgE抗体がくっついていて、鼻や口、目などからその花粉が入ってくるのを待ち構えているのです。
そして、実際にその花粉が体内に侵入してくると、肥満細胞表面のIgE抗体がそれをキャッチして、その信号を肥満細胞へと伝えます。すると、その信号を受け取った肥満細胞はその内部からヒスタミンやロイコトリエンといったシグナル物質を体内に放出し、これらの物質が粘液の分泌や、気道収縮などの、いわゆるアレルギー反応を引き起こしてしまいます。

そして、最初に気管支喘息とは気管支に慢性的な炎症が生じるようになってしまう病気であるといいましたが、その影響から、喘息患者の気管支は非常に敏感な状態となっており、炎症の影響から非常に収縮しやすい状態となっています。
そして、そのような気管支が今説明したようなアレルギー反応の影響を受けてしまうと、炎症の悪化や、気道の急激な収縮が起き、呼吸が非常にしづらい状態となってしまい、このような状態を気管支喘息における発作と呼ぶのです。
また、喘息の症状としては発作が非常によく知られていますが、その発作を引き起こす寸前、または発作が起きているときには、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれる症状がみられることもあります。喘鳴とは、炎症が起きている気管支が非常に細くなっていることにより聞こえる音のことで、具体的にはゼーゼー、ヒューヒューというような音が聞こえるようになります。
そして今申し上げましたように、その喘鳴の症状がみられる時には非常に危険な状態なので、もしこのような症状がみられる場合には、発作治療薬などを使って症状を鎮めてあげることが重要になります。
気管支喘息の患者は誰でも発作を引き起こしてしまう可能性がありますが、特に小さい子供はそもそも気管自体がまだ細いので、発作が起きてしまわないように十分な注意が必要です。もし、発作が起きてしまった場合には、その症状の程度によっては入院が必要になるケースもあります。
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小児喘息で入院が必要になるのはどんな時?

では、小児喘息で入院が必要になるのはどんな時なのかというと、これはその主治医の判断によるところが大きく、明らかに診察時にその状態が悪いような場合や、サチュレーションの値などを判断材料にして、入院が必要であると判断されるケースがあるようです。
そのサチュレーションとは言い換えると血中の酸素飽和度の値のことで、酸素とヘモグロビンがどのくらいの割合で結合しているかというのを示す値になります。
正常な方だとその酸素とヘモグロビンはだいたい96%~99%の割合で結合しているといわれていますが、発作によって酸素をうまく取り込めていないとその値が90%を切ってしまうこともあり、そのような場合は適切な処置が必要で、入院が必要になるようなケースもあります。
また、そのため喘息症状が悪化しやすいような患者の方は、普段からパルスオキシメーターと呼ばれる装置を使ってそのサチュレーションの値を測っておくというのも体調をうまく管理するためには重要です。今では、ご自宅で使えるようなパルスオキシメーターも販売されています。
また、サチュレーションの値が低いような場合は指先が紫になってしまうような場合もあり、このような症状はチアノーゼと呼ばれているのですが、これもまた喘息症状の悪化の程度を見分けるうえでは重要なポイントなので、是非覚えておいてください。(ヘモグロビンは酸素と結合すると綺麗な赤色になりますが、酸素と結合しないと赤黒い色であるため、サチュレーションが低下すると、赤黒いヘモグロビンの色が増えて、チアノーゼの症状がみられてしまいます。)
まとめますと、特に小児喘息の患者はその大半がアレルギー反応によって症状が悪化してしまいますが、その時に明らかに呼吸が困難になっていたり、サチュレーションの値が低いような場合には、適切な処置が必要になり、症状が安定するまでの数日間は入院が必要になるようなケースがあるようです。
入院が必要になるのは当たり前のことではありません!

当たり前ですが、小児喘息でも、大人の喘息でも、最も大切なことは、入院などが必要にならないように、日々の治療、すなわち喘息症状が悪化しないようにその症状をコントロールしておくことです。
ただ、そういった喘息患者の中には、頻繁に入院が必要になるほど症状が悪化しやすいような方もいるそううで、そういう方の中にはもちろんそもそも喘息が非常に悪化しやすいような方も含まれてはいるものの、普段の症状のコントロールが不十分であるというような方もいるそうです。
例えば、喘息の症状をコントロールし、その症状を徐々に治療していくためには吸入ステロイドと呼ばれるお薬を使うのが一般的ですが、そのステロイドの量が不十分であるために症状が悪化してしまうような方もいるといいます。
例えばもっと具体的に説明をすると、最近では気管支の炎症を抑えるための「ステロイド」と、気管支を拡げ、呼吸を楽にするための「気管支拡張剤」を一緒に吸入することができる合剤のお薬を使用するというのが喘息治療の主流になってきているのですが、その合剤の中の1つである「シムビコート」というお薬は、その症状の程度によって、朝夕1吸入ずつと指示される方もいれば、朝夕2吸入ずつと指示されるような方もいるそうです。そのため、現在1吸入と指示されている方でも、中にはもう少し吸入が必要であるというような方もいないとは言い切れませんよね。
また、喘息のお薬を変えてみたところ症状が非常に楽になったと証言している方も決して少なくないので、もし喘息症状が悪化しやすく、入院と退院を繰り返しているというような場合には、一概にその人自身に問題があるとは言い切れず、医師にお薬の相談をしてみたり、いつもお世話になっているような医師だけではなく、別の医師にも相談してみるというような場合も必要になるのではないかと思います。
特に、最初にも申し上げましたように、小児喘息は大人まで引きずることのないようになるべく早くしっかりとした治療を施していく必要があります。そのため、もし小児喘息の患者で何度も入院をしたことがあるというお子さんがいるご両親の方は、その子供の喘息が悪化しないような環境を作ってあげることも大切ですが、治療について医師と相談しながら、今一度よく見なおしてみることも重要だと思われます。
まとめ

今回の記事では小児喘息に関する情報についてまとめますとともに、その発作が起きてしまう原因や、入院に関する情報について詳しくまとめました。
気管支喘息という病気は、小児喘息に限らず、大人であっても入院が必要になるほど重症化してしまったり、中にはそういった発作が原因で命を落としてしまうような場合もあります。これは決して非常に珍しいことではなく、今でも、年間2000人近い方が喘息によって命を落としているというデータもあるのです。
喘息は何より日々の症状のコントロールが大切ですが、感染症などを患ったときにも、それに伴って喘息症状が非常に悪化してしまうようなケースもあります。また、最初に少しだけ触れましたが、特に大人の喘息患者の中にはロキソニンなどの痛み止めの薬(解熱鎮痛剤)などによって喘息症状が急激に悪化してしまうようなちょっと驚くようなケースもあるので、特に喘息が悪化しやすい体質の方は、その悪化を招く原因が何なのかをしっかりと把握しておくことが非常に重要です。
ちなみに、その解熱鎮痛剤によって喘息が悪化してしまうケースはアスピリン喘息と呼ばれているのですが、これについては以下の記事で詳しくまとめていますので、気になる方は一度ご覧になってみてください。
それでは今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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