
扁桃病巣感染症とは、扁桃腺の慢性的な細菌感染が原因となり、それが扁桃腺から離れた位置にある臓器などに二次的に影響を及ぼす病気のことを言います。
これだけだとちょっとわかりづらいと思いますので補足しますと、扁桃病巣感染症の疑いがある患者というのは、慢性的に扁桃腺が細菌に感染されている(慢性扁桃炎)、という状態がまず前提にあります。
しかし、感染されているといっても、普段はほとんど無症状であるか、症状があっても若干の痛みや違和感がある程度であるため、すぐに扁桃腺に異常があるとは気が付きにくいそうです。
このように、扁桃腺自体は普段は無症状であっても、そこで慢性的に細菌感染が起きていると、体の免疫システムは常にその原因菌と闘うことになります。すると、これがいずれ免疫システムの異常などを引き起こす原因となり、扁桃腺から離れた部分にまで影響を及ぼすというのが、扁桃病巣感染症という病気の考え方です。
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この、扁桃病巣感染症によって二次的に発症する可能性がある病気としては、IgA腎症や、関節リウマチ、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)などが挙げられます。どれも治療が難しい病気として知られているのですが、過去に、扁桃腺を摘出した結果症状が回復した事例というものがいくつも報告されていることから、徐々にこの病巣感染という考え方が広まってきたそうです。
扁桃腺が病巣になっているという方は、普段は無症状であっても、年に何回かは扁桃腺の急激な炎症が起こる場合があります。この、急性扁桃炎を年に3回以上起こるような場合を慢性扁桃炎と呼び、この症状にあてはまる場合には、いつそれが二次的な疾患を引き起こす原因になってしまったとしてもおかしくありません。
そして最近では、この扁桃病巣感染症という病気には、慢性的な口呼吸の習慣が大きく関わっているのではないかという指摘がされています。実は慢性的に口呼吸をしている方というのは、口臭がきつかったり、顔立ちなどにその特徴が表れることが多く(上あごの突出、下あごの後退、唇の肥大など)、実際に扁桃病巣感染症によって二次的に起こる病気の患者を診てみると、その多くにおいて口呼吸の方に見られる様々な特徴が観察されるそうなんです。
もし、普段気が付くと口をぽかんとあけてしまっているという方は要注意!今回の記事では、口呼吸と扁桃病巣感染症との関連について詳しくまとめていきたいと思います。
目次
気が付くと口呼吸になっている方は要注意!扁桃病巣感染症の原因とは…

扁桃腺という組織が喉の奥にあるということ自体は皆さんご存知だと思いますし、これまでに扁桃腺が腫れてしまったことがあるという方もきっと多いのではないかと思います。私も経験がありますが、激痛を伴い、唾を飲み込むことさえまともにできなかったことをよく覚えています。
扁桃腺というのは、リンパ球や、白血球などの免役細胞が集まってできたリンパ組織のことであり、体の外から入ってくる細菌やウイルスなどから体を守る生体防御の役割を担っています。しかし、この扁桃腺自体が細菌などに感染されてしまうこともあり、この症状を扁桃炎と呼びます。
扁桃炎の原因となるのは主に細菌で、それも特に珍しいものではなく、溶連菌やブドウ球菌、肺炎球菌などの常在菌の感染によって起こることが多いそうです。常在菌とは、私たちの口の中に常に住み着いている細菌のことであり、具体的には、口の中には常に300種類以上もの細菌が住み着いているといわれています。
ただ、こうした常在菌はそこにいるからと言って、すぐに何らかの症状の原因になるわけではありません。しかし、疲労や、喉の乾燥などによって免疫力が低下してしまうと、細菌の活動も活発になり、これが扁桃炎などの感染症を引き起こす原因になってしまいます。
そして、ここに口呼吸との関連があるということは、察しが良い方なら気が付いたのではないかと思います。慢性的な口呼吸は口内の乾燥を招き、それが免疫力を低下させる原因になってしまうのです。
口呼吸と鼻呼吸、この2つは同じ「呼吸」ではありますが、実はこのうち口呼吸は非常に問題の多い間違った呼吸法であるとして、現在多くの医師の方がその改善を呼びかけています。例えば、今挙げた免疫力の低下以外には、集中力の低下や疲労の原因になったり、虫歯の原因になったり、歯並びや顔立ちにまで影響が及ぶこともわかってきているんです。そして、今回お話するIgA腎症やリウマチなどもまた、口呼吸がその根本的な原因にあるとされています。
まず、そもそも鼻と口ではその本来の役割が全く異なります。呼吸をするのは本来鼻の役割であって、口はものを食べるための器官であり、呼吸をするための器官ではないのです。実は、沢山いる哺乳類の中でも、口呼吸が一般化してしまっているのは私達人間だけであるといわれています。進化の過程で言葉や二足歩行を覚え、その結果食道と気道がつながってしまった私達人間だけが、この口呼吸という不自然な呼吸法を獲得してしまったのです。
鼻呼吸と口呼吸、実際に両方やってみるとその違いは大してないように感じるかもしれませんが、鼻には繊毛と呼ばれる細い毛や、粘液によって鼻から入ってくる細菌やほこりなどをキャッチするフィルターとしての機能があり、さらにその空気は鼻の奥で加湿、加温され、綺麗な状態となってから肺へと送られます。
以下の図を参考にしていただくと分かりやすいと思いますが、人は1日に2万回以上呼吸をするといわれているため、このわずかな違いというのは、長い期間で見ていくと非常に大きな違いなのです。

慢性的な口呼吸が口内の免疫力の低下を招き、細菌の活動を活発化させ、それが慢性扁桃炎を引き起こす原因になる、というのが扁桃病巣感染症へとつながる1つのプロセスになります。では、その扁桃病巣感染によっておこる病気にはどんなものがあるのか、ということについて次に詳しくまとめていきたいと思います。
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IgA腎症、リウマチ、掌蹠膿疱症、その他扁桃病巣感染症で起こる病気とは…

まず、扁桃病巣感染症によって引き起こされる病気として、特に有名なものは、IgA腎症と呼ばれる腎臓病です。
IgA腎症とは、腎臓において血液をろ過する役割を担っている糸球体(毛細血管が糸の玉のようになったもの)の、毛細血管を繋ぎ合わせているメサンギウムと呼ばれる細胞領域に、IgAと呼ばれる免疫グロブリンが沈着することによって、腎臓の機能が段々と低下してしまう病気です。症状が進行すると、人工的に血液をろ過する透析治療が必要になる場合になる場合もあります。
糸球体とは毛細血管がたまのようにぐるぐると丸まってできた器官であり、この血管に流れ込んだ血液は、それを通る間にろ過されます。

また、IgAに代表される免疫グロブリンとは、簡単に言うと抗体の一種であり、私たちの体内にはIgAを含め、IgG、IgM、IgD、IgEの計5種類の免疫グロブリンが存在しています。ちなみに、このうちIgEは花粉症などのアレルギー反応の原因になる抗体として知られています。
そして、今回お話しているIgA腎症の原因になるIgAは、主に人の腸管や気道の粘膜上に存在する抗体であり、体内に入ってきた細菌やウイルスなどの病原体が細胞に感染するのを防ぐ役割を担っています。細菌に結合し、免疫複合体を形成することによって、これを無力化するよう試みるのです。
本来であればこれは非常に重要な機能であるわけですが、扁桃病巣感染症の患者、つまり慢性扁桃炎の患者においては、このIgAの免疫複合体が慢性的に産生されるようになってしまうため(また、それをきっかけに全身のリンパ組織においても似たような抗体産生が始まる)、結果これの処理に腎臓が追い付かず、いずれ腎機能の低下を招いてしまうというのが、IgA腎症という病気の根本的な原因なのではないかと考えられています。
また、扁桃病巣感染症によって引き起こされる病気としては、関節リウマチなども挙げられます。リウマチとは、本来細菌やウイルスなどの外敵に対して働くはずの免疫細胞が、その免役細胞の持ち主本人の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種です。また、関節リウマチのように全身に症状が表れるような自己免疫疾患は、膠原病(こうげんびょう)とも呼ばれています。
関節リウマチにおいては、関節を覆っている滑膜と呼ばれる膜を免役細胞が攻撃してしまうことから、体の様々な関節部位において炎症が生じるようになります。そして、この炎症の影響から、リウマチを発症すると次第に関節痛がひどくなり、そのままにしておくといずれ軟骨の破壊が進んで、関節の変形が起こってしまうことが確認されています。
この関節リウマチの原因としては、ストレス説を唱えている医師の方が多いのですが、最近では、この病巣感染症による免疫異常もまたリウマチの原因なのではないかと指摘する医師の方もいます。特に、病巣感染症とリウマチの関係について注目しているのは、福岡にあるみらいクリニックという病院の院長を務める今井一彰さんという医師の方であり、この方は口呼吸の改善を呼びかけている第一人者とも呼べる方でもあります。
今井医師いわく、リウマチを含む様々な自己免疫疾患は、体のどこかにある病巣がその原因となっていることがあり、今回お話している扁桃以外には、歯の根っこや、副鼻腔が炎症を起こしている場合にもそこが病巣となってしまう場合があると言います。
また、扁桃病巣感染症によっておこる病気としては、掌蹠膿疱症もその1つとして挙げられます。この病気は、膿胞と呼ばれる膿がたまってできた水ぶくれが掌や足の裏に慢性的にできるようになる皮膚病の一種であり、良くなったり、悪くなったりを繰り返すそうです。これもまた、扁桃以外の部位が病巣になっている場合もあるそうで、その病巣の治療によって回復する事例が多いと言います。
また、その他には、原因のわからない関節や筋肉の痛み、長期の微熱、胸肋鎖骨過形成症、ベーチェット病、シェーグレン症候群、多発筋炎などもまた、病巣感染症によって引き起こされている場合があるそうです。原因のわからない慢性的な体の不調、その陰には病巣という原因があるかもしれないということは、皆さんも是非覚えておいてください。
扁桃腺は摘出しても大丈夫なの?

今回、扁桃病巣感染症によって二次的に起こる病気は、扁桃腺を摘出することで回復する場合があるというお話をしましたが、この扁桃腺という器官ははたして摘出してしまっても大丈夫なの?と少し疑問に思った方もいるのではないかと思います。
結論としては、扁桃腺は摘出してしまっても特に問題はないといわれています。扁桃腺は1歳位までは細菌やウイルスの侵入を阻む重要な役割を担っているそうなのですが、それを過ぎると全身的な免疫力が獲得されるため、扁桃腺を摘出したからと言ってそれが急激な免疫力の低下を招く、ということはないそうです。
慢性的な口呼吸、思い当たる方は早めに改善に取り組みましょう!

今回、扁桃病巣感染症によって二次的に起こる病気として、IgA腎症や、関節リウマチに関する情報についてまとめましたが、こういった病気の患者では、その多くにおいて慢性的な口呼吸によっておこる様々な特徴が見られるということが指摘されています。
例えばIgA腎症という病気においては、この病気の患者を2000人以上診てきたという堀田修さんという医師の方もその指摘をしており、また、先ほどもその名前を挙げた今井一彰医師も同様の指摘をしています。
記事の中でもお話しましたが、口呼吸はまるでメリットのない間違った呼吸法なので、もし気が付くと口呼吸になってしまっていることがあるという方は、是非早めにその改善に取り組むようにしましょう。
では、その口呼吸はいったいどうやって治したらいいのか、という話になりますが、現在、この口呼吸を改善する方法として、あいうべ体操と呼ばれる口の体操が徐々に広まりつつあるのをご存知でしょうか?
このあいうべ体操は、これまた先ほどもその名前を挙げた今井一彰医師が考案した口呼吸の改善方法であり、本も出版されている他、過去にはテレビで紹介されたこともあります。方法自体は非常に簡単で、あ~い~う~べ~と口を大きく動かし、さらに最後のべ~では舌を大きく出すことによって、口周りの筋肉と、舌の筋肉を鍛えることによって、口呼吸の改善効果が見込めるそうです。詳しい方法は以下のカードの内容を参考にしてください。

最期になぜべ~と舌を出す必要があるのかというと、実は慢性的に口呼吸をしてしまう方というのは、舌の機能が衰え、喉の奥に落ち込んでしまう低位舌と呼ばれる症状が起きている場合があり、この喉に落ち込んだ舌が気道をふさいでしまうことが、慢性的な口呼吸を誘発してしまう原因になってしまっていることがあるんだそうです。低位舌がどんなものか、というのは以下の写真を参考にしてください。これをみると、確かに舌が気道を圧迫してしまっているということが分かりますよね。

もう一度言いますが、口呼吸は非常にデメリットの多い間違った呼吸法です。慢性的な口呼吸は様々な問題を引き起こす原因になってしまいますので、早めにその改善に取り組むようにしましょう。
まとめ

今回の記事では、口呼吸と扁桃病巣感染症との関連に関する情報や、その扁桃病巣感染症によって二次的に引き起こされる、IgA腎症、関節リウマチなどの病気に関する情報について詳しくまとめました。
今回の記事の中では詳しくお伝えしませんでしたが、口呼吸が引き起こす様々な問題に関する情報や、あいうべ体操以外の口呼吸改善方法に関する情報は以下の記事で詳しくまとめています。口呼吸がなぜ歯並びに影響するのか、ということなどについても詳しくまとめていますので、気になる方は是非一度ご覧になってみてください。
今回の記事は以上になります。最期まで読んでいただきありがとうございました(^^)
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