ace阻害薬が空咳の原因に?その対処に有効なarbとは?アンジオテンシン変換酵素阻害薬がもたらす副作用とこれに代わる薬についてご紹介します。

ace阻害薬とは、正確にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬と呼ばれるものであり、血圧を下げる働きのある降圧剤の一種です。

また、このace阻害薬は高血圧の他に、心不全腎障害の治療にも有効であるとされ、現在も医療の様々な分野において広く用いられているのですが、ace阻害薬は、使用を続けるとその副作用として、空咳(乾いた咳)の症状が出ることがあるといわれています。

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ace阻害薬の副作用による空咳の症状は特に女性に多いといわれており、全体としては使用者の約20~30%ほどでこの症状がみられるといわれています。

それでは、なぜace阻害薬はその副作用として空咳を誘発する原因となってしまうのでしょうか。今回の記事では、ace阻害薬が血圧を下げる仕組みや、この薬の副作用によって空咳が誘発されてしまう理由について説明するとともに、その副作用が表れてしまった際に、その対処に有効なace阻害薬に代わる薬についてご紹介していきたいと思います。

目次

ace阻害薬とは?アンジオテンシン変換酵素阻害薬の降圧剤としてのメカニズムはこちら!

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ace阻害薬とは、主に血圧を下げるお薬として現在広く用いられているお薬です。血圧とは、血液が血管の壁を押し広げようとする力のことであり、高血圧という状態は、常に血管に内側から強い負荷がかかっているということを意味しています。これは非常に危険な状態であり、高血圧の状態が続くと、血管の柔軟性が失われて動脈硬化が起き、最終的には血管を破裂させてしまう原因にもなってしまう可能性があります。

この症状を改善させるために用いられるのが、今回ご紹介するace阻害薬や、arbなどの降圧剤なのですが、このace阻害薬や、arbは、どちらもアンジオテンシンという物質と密接な関係のある薬になります。それではまずは、ace阻害薬とはどのような薬なのかということについて詳しくご説明していきたいと思います。

ace阻害薬とは、日本語ではアンジオテンシン変換酵素阻害薬と呼ばれるものであり、aceは、angiotensin-converting enzyme(アンジオテンシン変換酵素)の頭文字をそれぞれとったものになります。その名前からもわかるように、このace阻害薬は、体内に存在するアンジオテンシン変換酵素、と呼ばれる酵素の働きを阻害する働きのある薬になります。

それではこのアンジオテンシン変換酵素とはいったい何なのかというと、これは、アンジオテンシンⅠという物質が、アンジオテンシンⅡという物質に変換される際に、この変換を助ける働きのある酵素になります。そして、この酵素の働きによってできたアンジオテンシンⅡという物質が、血圧の調節と密接な関係があります。

具体的にアンジオテンシンⅡにはどのような働きがあるのかというと、このアンジオテンシンⅡは、血管の収縮作用に加えて、アルドステロンと呼ばれるホルモンの分泌を促し、このホルモンがNaを体内にとどめる働きをするため、結果血液の量を増加させる働きがあります。血圧は血液が血管の内部から血管を押し広げようとする力のことですので、血管の収縮血液の量の増加、この2つが血圧の上昇につながるということは、それがなぜなのかわかっていただけるかと思います。

しかし、今の説明で、何故Naを体内にとどめることが血液の量を増加させる原因になるのかと言いますと、これは、体が血液中のNaの濃度を薄めようとするためです。ちなみに、塩分の取りすぎは高血圧の原因になるということは良く言われていますが、塩は化学式であらわすとNaClであり、塩分をとりすぎるということはつまりNaをとりすぎるということを意味します。その結果塩分をとりすぎると、それを薄めようとして血液の量が増加し、高血圧の状態が続く、ということになります。高血圧の方はもちろん、そうでない方も塩分の取りすぎには注意が必要です。

話は戻りますが、上記のような働きをするアンジオテンシンⅡは、先ほども書きましたようにアンジオテンシンⅠから作られる際にアンジオテンシン変換酵素、通称aceの働きを借ります。つまりこのaceの働きが阻害されると、血圧を上げるように働くアンジオテンシンⅡは作られなくなり、その結果血圧を下げることが出来るのです。この考えを利用し、ンジオテンシン変換酵素の働きを阻害するように働くのがace阻害薬です。

ace阻害薬が副作用として空咳を誘発してしまうのはなぜか?

降圧剤としては非常に優秀なace阻害薬ですが、このace阻害薬はその副作用として空咳の症状を誘発してしまうこともわかっています。それではなぜace阻害薬は空咳を誘発してしまうのか、その理由についてご説明したいと思います。

まず、このace阻害薬は、先ほど述べたようにアンジオテンシン変換酵素の働きを阻害するのですが、その際ブラジキニンと呼ばれる成分の分解も阻害されてしまうと考えられています。つまり、アンジオテンシン変換酵素にはブラジキニンの分解作用もあるのです。

このブラジキニンとはナノペプチドと呼ばれるものに分類され、質量がとても大きく、血圧降下作用を持つ成分の一種です。また、発痛物質としても知られているものであり、鎮痛剤の中にはこのブラジキニンの働きを抑えることによって痛みを抑えるものもあります。

ace阻害薬によってこのこのブラジキニンの分解が阻害されてしまうと、分解されなかったブラジキニンはどんどん体に蓄積されます。すると、この蓄積したブラジキニンが気道を刺激するようになり、その刺激によって空咳の症状が誘発されてしまうのです。

以上がace阻害薬の副作用によって空咳が引き起こされてしまうメカニズムになります。では、実際ace阻害薬を使用していて、空咳が出てしまってつらいという場合には、どのように対処したら良いのでしょうか?次に、このace阻害薬によって空咳が出てしまった際に、その対処に有効で、これに代わる薬であるarbについてご説明していきたいと思います。

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ace阻害薬の副作用によって空咳が出てしまう際の対処に有効なarbとは?

それでは、ace阻害薬の副作用によって、つらい空咳の症状が続く場合、どのように対処したら良いのでしょうか。

最も有効な対処の仕方は、薬を別のものに変えてもらうことです。ace阻害薬に代わるお薬として、最近ではace阻害薬と同じような効果を得られるarbと呼ばれる薬も処方されています。

このarbとはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬と呼ばれるお薬のことで、アンジオテンシンⅡが作られるのを防ぐace阻害薬に対して、作られたアンジオテンシンⅡが受容体に結合するのを防ぐお薬です。そのため、結果的にはaec阻害薬とarbは同じような効果を得られる薬となっています。

arbはアンジオテンシン変換酵素の働きを阻害するわけではなく、ブラジキニンの分解を阻害するわけでもないため、その副作用として空咳を誘発することはありません。その効果自体もace阻害薬とarbとで特に差はないようですので、空咳がでて苦しいという場合はこのarbなどの薬に変更してもらうのようにしましょう。

ならば最初からarbを使えば良いのではないかと多くの方が思うと思うのですが、このarbは、ace阻害薬よりも新しく登場したお薬であり、その分少し値段が高い傾向にあります。ace阻害薬も、使うとすべての方において空咳の症状が出てしまうわけではないため、もし一度ace阻害薬を処方された場合は、それを使ってみて、酷い空咳の症状が出てしまうようでしたらarbなどの別の降圧剤に変更してもらうのが良いでしょう。

ace阻害薬、arbの他降圧剤として使われている薬はこちら!

ここまでに、降圧剤としてace阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)とarb(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)についてご説明しましたが、降圧剤にはこのace阻害薬とarb以外にもいくつか種類があります。最後に、ace阻害薬とarb以外の降圧剤についてご紹介していきたいと思います。

Ca(カルシウム)拮抗薬

ace阻害薬やarb以外の降圧剤として、まず1つ目にご紹介するのがCa拮抗薬です。この薬は血管の収縮を促すCaイオンが細胞内に流入するのをを阻害することによって、血管を拡張させて、血圧を低下させる薬になります。

利尿剤

降圧剤として利尿剤が用いられることもあります。これは、その名前の通り尿の排出を促す薬です。利尿剤を使用すると、血液中の余分な水分やナトリウムが排出されるため、血液の量が少なくなり、血圧を低下させることが出来ます。

α遮断薬

α遮断薬とは、交感神経のアドレナリン受容体と呼ばれるもののうち、α受容体と呼ばれる受容体へのアドレナリンの結合を防ぐことによって血圧を下げる降圧剤です。これについて、少し捕捉して説明したいと思います。

まず、先ほどその名前を挙げた交感神経とは、私たちの体内の様々な器官の働きを制御している自律神経と呼ばれるものの1つであり、この自律神経は交感神経副交感神経というものに分けられます。私たちの体の様々なシステムは、この交感神経と副交感神経の働きのバランスによって保たれているのです。

そして、このうち交感神経は、私たちが日中動き回っているときに優位に働く神経であり、副交感神経はリラックスしたり、寝ているときに優位に働く神経であるといわれています。つまり、交感神経の働きによって疲れた体を休ませる働きがあるのが副交感神経ということです。

そして、先ほど交感神経は動き回るときに優位に働くと言いましたが、動き回るときというのはより速く血液を全身に送る必要があるということは何となくわかりますよね。そのため、交感神経が優位に働くと、血管は収縮して、血液をより全身に送ろうとするのです。

そして、この交感神経が働くためのスイッチとなるアドレナリンを受け取る受容体の働きを阻害して、結果血管の収縮を防ぎ、血圧を低下させるのがこのα遮断薬という降圧剤になります。

β遮断薬

α遮断薬に関連した物として、β遮断薬もあります。β遮断薬の主なメカニズムは、先ほど説明したα遮断薬と同じですが、その名前からもわかるようにβ遮断薬はα遮断薬とは阻害する受容体が異なります。

このα遮断薬、β遮断薬は、しばしば合剤のαβ遮断薬として合わせて使われることがあります。

まとめ

今回の記事ではace阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)の副作用として空咳が誘発されてしまうメカニズムや、その際の対処に有効なace阻害薬に代わるarb(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)に関する情報などについてまとめました。

降圧剤には、ace阻害薬やarb以外にもいくつか種類があります。もし、ace阻害薬を使用していて、空咳がつらい場合には、その対処としてarbやその他の薬に変えてもらうようにしましょう。

今回の記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。(^^)

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